令和4年度医工融合技術研究所の活動報告
令和4年度の主な活動
1. 「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」のオンライン開催
第28回「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」
■開催日時:
令和 4 年 6 月17 日(金)15:05~17:10 スムーススペース+オンライン(zoom)
■概要:
当日の様子
本学LC1階と金沢医科大学会議室をスムーススペースシステムで結び,さらにZoomを用いて会場外からオンラインで参加できる体制で研究会を実施した.本学会場での参加者は9 名,金沢医科大会場での参加者は3名,オンラインによる参加者9名,合計21名であった.
最初の講演は金沢医科大学医学部神経内科学教授朝比奈正人先生による神経疾患における発汗異常とその評価法であり,神経の仕組みから発汗現象まで分かりやすく解説いただいた.特に,発汗の生理、発汗の評価法とその歴史および神経疾患(末梢神経疾患、パーキンソン病など)における発汗異常について詳しく解説いただいた.また,発汗学会により8月28日を汗の日として登録されたとのお話をいただいた.
引き続いて,元長野工業高等専門学校で教鞭を執られ,現在はスキノス東御研究所で発汗計測の研究をされている坂口正雄先生に発汗計の進化について解説いただいた.坂口先生は小型で定量的に計測できる発汗計を開発されて多くの病院や機関で利用されている.現在の機器に至るまでどのように課題を解決してきたかについての話もあり,工学設計という点からも得るものは多くあった.
最後に医工連携プロジェクトからの報告ということで本学大学院機械工学専攻前期博士課程2年の上原悠輝彦君より現在修士研究として取り組んでいる骨セメントの劣化を抑制する取り組みについて報告があった.
講演終了後に談話会としてフリーディスカッションを行った.朝比奈先生から網膜の血流や瞳孔の動きをモニタリングできるウェラブルな計測機器があると神経系疾患の診断に有効であるとの意見をいただいた.
最初の講演は金沢医科大学医学部神経内科学教授朝比奈正人先生による神経疾患における発汗異常とその評価法であり,神経の仕組みから発汗現象まで分かりやすく解説いただいた.特に,発汗の生理、発汗の評価法とその歴史および神経疾患(末梢神経疾患、パーキンソン病など)における発汗異常について詳しく解説いただいた.また,発汗学会により8月28日を汗の日として登録されたとのお話をいただいた.
引き続いて,元長野工業高等専門学校で教鞭を執られ,現在はスキノス東御研究所で発汗計測の研究をされている坂口正雄先生に発汗計の進化について解説いただいた.坂口先生は小型で定量的に計測できる発汗計を開発されて多くの病院や機関で利用されている.現在の機器に至るまでどのように課題を解決してきたかについての話もあり,工学設計という点からも得るものは多くあった.
最後に医工連携プロジェクトからの報告ということで本学大学院機械工学専攻前期博士課程2年の上原悠輝彦君より現在修士研究として取り組んでいる骨セメントの劣化を抑制する取り組みについて報告があった.
講演終了後に談話会としてフリーディスカッションを行った.朝比奈先生から網膜の血流や瞳孔の動きをモニタリングできるウェラブルな計測機器があると神経系疾患の診断に有効であるとの意見をいただいた.
第29回「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」
■開催日時:
令和 4 年 8 月26 日(金) 15:05~17:30 オンライン(zoom)
■概要:
COVID-19の感染第7波のためZoomによるオンライン開催とした.参加者は27名であった.
最初の講演は金沢医科大学医学部消化器内視鏡学教授北方秀一先生による早期胃癌の内視鏡診断・治療の進歩と今後の展望であり,胃癌の疫学から胃癌の診断基準について優しく解説された.
その上で,拡大内視鏡やNBI/BLI など特殊光観察による内視鏡診断方法とESD 適応外の早期胃癌に対する新たな低侵襲手術として開発が行われている腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)に詳しく解説された.胃壁に穴を開ける必要があるが,腹腔鏡を用いて虚脱しないように切除部にシリコーンシートを貼り,その上からガーゼをフィブリン糊で貼り付けた上で内視鏡により切除を行う.切除時の課題として,脂肪分が内視鏡のレンズに付着し視界が悪化する,切除片が離脱することで視野が狭くなることなどを指摘された.
次に本学機械工学科教授森本喜隆先生より,内視鏡用縫合装置の開発と題して,金沢医科大の伊藤先生,北方先生と共同で進めている内視鏡により患部切除後に,胃壁を縫合するための器具の開発の進捗状況に報告があった.内視鏡の吸引口・鉗子口を通して胃壁の内部から縫合できる機構の設計と5 倍のモデルによるシミュレーョンが紹介された.本装置のために開発した一体化した縫合用の針と糸についても説明された.しかし,内視鏡に組み込むためには小型化必要であるが,加工上問題があり完成には至っていない.また,コイル状の金属管を用いた縫合針の開発についても紹介された.縫合の深さがコイル径によって制限されることが問題視された.
最後に医工連携プロジェクトから2件の報告があった.1件目はバイオ化学科4年生の桑野彩音君より変形性股関節症の治療効果向上を目指した脂肪由来幹細胞(ADSC)の新しい培養方法の開発(関節液がADSCに与える影響)について,2件目は機械工学科1年生の安念一花君より塗り薬をより効果的に塗る方法について発表があった.
講演終了後に談話会としてフリーディスカッションを行った.内視鏡レンズに付着した脂肪分を除去する方法について議論があった.北方先生によると水を吹きかけたくらいでは除去できないということである.
最初の講演は金沢医科大学医学部消化器内視鏡学教授北方秀一先生による早期胃癌の内視鏡診断・治療の進歩と今後の展望であり,胃癌の疫学から胃癌の診断基準について優しく解説された.
その上で,拡大内視鏡やNBI/BLI など特殊光観察による内視鏡診断方法とESD 適応外の早期胃癌に対する新たな低侵襲手術として開発が行われている腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)に詳しく解説された.胃壁に穴を開ける必要があるが,腹腔鏡を用いて虚脱しないように切除部にシリコーンシートを貼り,その上からガーゼをフィブリン糊で貼り付けた上で内視鏡により切除を行う.切除時の課題として,脂肪分が内視鏡のレンズに付着し視界が悪化する,切除片が離脱することで視野が狭くなることなどを指摘された.
次に本学機械工学科教授森本喜隆先生より,内視鏡用縫合装置の開発と題して,金沢医科大の伊藤先生,北方先生と共同で進めている内視鏡により患部切除後に,胃壁を縫合するための器具の開発の進捗状況に報告があった.内視鏡の吸引口・鉗子口を通して胃壁の内部から縫合できる機構の設計と5 倍のモデルによるシミュレーョンが紹介された.本装置のために開発した一体化した縫合用の針と糸についても説明された.しかし,内視鏡に組み込むためには小型化必要であるが,加工上問題があり完成には至っていない.また,コイル状の金属管を用いた縫合針の開発についても紹介された.縫合の深さがコイル径によって制限されることが問題視された.
最後に医工連携プロジェクトから2件の報告があった.1件目はバイオ化学科4年生の桑野彩音君より変形性股関節症の治療効果向上を目指した脂肪由来幹細胞(ADSC)の新しい培養方法の開発(関節液がADSCに与える影響)について,2件目は機械工学科1年生の安念一花君より塗り薬をより効果的に塗る方法について発表があった.
講演終了後に談話会としてフリーディスカッションを行った.内視鏡レンズに付着した脂肪分を除去する方法について議論があった.北方先生によると水を吹きかけたくらいでは除去できないということである.
第30回「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」
■開催日時:
令和 4 年11 月11 日(金) 15:05~16:30 オンライン(zoom)
■概要:
COVID-19の感染第8波のためZoomによるオンライン開催とした.参加者は25名であった.
最初は「頭頸部癌に対する診断・治療と今後の展望」について金沢医科大学医学部頭頚部外科学教授北村守正先生が講演された.頭頸部癌の種類,発生率,治癒率ならびに原因についてわかりやすい説明があった.頭頸部は呼吸や嚥下,発声など日常生活を送る上で重要な機能が集中しており,根治性とQOL(生活の質)のバランスや整容面に配慮した治療が必要となることが他の部位の癌と異なる点であることを強調されていた.そのため,「命と機能を守る」を目的に癌の進行度に応じて手術療法,放射線療法,化学療法,免疫療法から単独,あるいは組み合わせを選択して治療にあたっており,近年はロボット手術,粒子線治療,ホウ素中性子捕捉治療,超選択的動注化学放射線療法,光免疫療法も施されているとのことであった.また,咽喉はほぼ直角に曲がっており,手術器具もその形状に合わせた特別なものが開発・製作されている.
癌の他に,本学のメディア情報工学科と共同で行っている「超音波検査実技学習のための遠隔授業支援システム」の開発についても説明があった.超音波検査法を会得するためには実技が必要であり,インストラクターと学習者が離れた場所にいても教育ができるシステムを構築する研究で,マネキンに模擬的な超音波装置を当ててそれを遠隔地に置かれたマネキン上に3D で投影するシステムを開発している.模擬的な超音波装置にはジャイロセンサーを内蔵し,それによって位置や方向を検知する仕組みであるが,この部分を開発してもらえる企業を探しているとのことであった.残念ながら当日そのような企業の出席がなかった.
次に本学先端電子技術応用研究所准教授小山大介先生より,先端電子技術応用研究所で行われてきた脳磁計の開発と医療への応用について簡単な説明をいただいた後,「医工連携の取り組みと低磁場/超低磁場MRIと題して,脳磁計及びMRIについて」講演いただいた.磁気共鳴画像(MRI)は広く知られている医用画像の一つであり,現代医療には欠かせない診断装置である.医療機関では主に1.5 T または3 Tの超伝導磁石によるMRI装置が使用されているが,装置の小型化や低コスト化を目的として,近年ではより低い磁場0.2〜0.4 T を利用したMRI の需要が高まっている.先端電子技術応用研究所では電気電子工学科の平間先生と共同で低磁場0.15 T,さらに超低磁場 0.001 TのMRI を開発しており,その紹介と応用について説明があった.また,画素毎の緩和時間でマッピングするMRIイメージングについても研究しているとのことであった.
講演終了後に談話会としてフリーディスカッションを行った.本学谷田先生が臭いセンサーの研究を行っており,頭頸部癌の早期発見に利用できないかという議論になり,共同研究へ向けて詳細を詰めることとなった.また,同じく谷田先生が研究されている人工皮膚への化粧品の浸透について低磁場MRIで浸透深さを計測する試みをすることとなった.
最初は「頭頸部癌に対する診断・治療と今後の展望」について金沢医科大学医学部頭頚部外科学教授北村守正先生が講演された.頭頸部癌の種類,発生率,治癒率ならびに原因についてわかりやすい説明があった.頭頸部は呼吸や嚥下,発声など日常生活を送る上で重要な機能が集中しており,根治性とQOL(生活の質)のバランスや整容面に配慮した治療が必要となることが他の部位の癌と異なる点であることを強調されていた.そのため,「命と機能を守る」を目的に癌の進行度に応じて手術療法,放射線療法,化学療法,免疫療法から単独,あるいは組み合わせを選択して治療にあたっており,近年はロボット手術,粒子線治療,ホウ素中性子捕捉治療,超選択的動注化学放射線療法,光免疫療法も施されているとのことであった.また,咽喉はほぼ直角に曲がっており,手術器具もその形状に合わせた特別なものが開発・製作されている.
癌の他に,本学のメディア情報工学科と共同で行っている「超音波検査実技学習のための遠隔授業支援システム」の開発についても説明があった.超音波検査法を会得するためには実技が必要であり,インストラクターと学習者が離れた場所にいても教育ができるシステムを構築する研究で,マネキンに模擬的な超音波装置を当ててそれを遠隔地に置かれたマネキン上に3D で投影するシステムを開発している.模擬的な超音波装置にはジャイロセンサーを内蔵し,それによって位置や方向を検知する仕組みであるが,この部分を開発してもらえる企業を探しているとのことであった.残念ながら当日そのような企業の出席がなかった.
次に本学先端電子技術応用研究所准教授小山大介先生より,先端電子技術応用研究所で行われてきた脳磁計の開発と医療への応用について簡単な説明をいただいた後,「医工連携の取り組みと低磁場/超低磁場MRIと題して,脳磁計及びMRIについて」講演いただいた.磁気共鳴画像(MRI)は広く知られている医用画像の一つであり,現代医療には欠かせない診断装置である.医療機関では主に1.5 T または3 Tの超伝導磁石によるMRI装置が使用されているが,装置の小型化や低コスト化を目的として,近年ではより低い磁場0.2〜0.4 T を利用したMRI の需要が高まっている.先端電子技術応用研究所では電気電子工学科の平間先生と共同で低磁場0.15 T,さらに超低磁場 0.001 TのMRI を開発しており,その紹介と応用について説明があった.また,画素毎の緩和時間でマッピングするMRIイメージングについても研究しているとのことであった.
講演終了後に談話会としてフリーディスカッションを行った.本学谷田先生が臭いセンサーの研究を行っており,頭頸部癌の早期発見に利用できないかという議論になり,共同研究へ向けて詳細を詰めることとなった.また,同じく谷田先生が研究されている人工皮膚への化粧品の浸透について低磁場MRIで浸透深さを計測する試みをすることとなった.
2. 医工連携研究フォーラムの開催
第13回医工連携フォーラム
■開催日時:
令和 5年 2月 18日 10:00〜12:40 オンライン(zoom)
■基調講演/特別講演:
第23 回KMU 研究推進セミナー との共同開催であり,金沢医科大学がホストであった.
参加者は102名であった.
はじめに,金沢医科大学宮澤克人学長と金沢工業大学大澤敏学長より開会の挨拶をいただいた.続いて,金沢医科大学 総合医学研究所 教授島崎猛夫先生より「新電子カルテシステム移行によるデータ利活用に向けたストラテジー -規格の持つ効果とお宝データの作り方- 」とうい題目で基調講演をいただいた.金沢医科大学が2023年1月より電子カルテシステムを一新した経緯とその効果について説明された.このシステムにより他の医療機関とも匿名での情報の共有が可能となり,統計的な臨床研究の推進に役立つとのことであった.解析手法について工学との連携を図りたいとことである.
次に,九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター 教授中島直樹先生 より「電子カルテなどのリアルワールトドデータを活用した臨床観察研究の展開」 とうい題目で特別講演をいただいた.電子カルテシステムにさらに日常の患者の情報を取り込んだリアルワールドデータ(RWD)の活用方法とその可能性について発表された.
参加者は102名であった.
はじめに,金沢医科大学宮澤克人学長と金沢工業大学大澤敏学長より開会の挨拶をいただいた.続いて,金沢医科大学 総合医学研究所 教授島崎猛夫先生より「新電子カルテシステム移行によるデータ利活用に向けたストラテジー -規格の持つ効果とお宝データの作り方- 」とうい題目で基調講演をいただいた.金沢医科大学が2023年1月より電子カルテシステムを一新した経緯とその効果について説明された.このシステムにより他の医療機関とも匿名での情報の共有が可能となり,統計的な臨床研究の推進に役立つとのことであった.解析手法について工学との連携を図りたいとことである.
次に,九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター 教授中島直樹先生 より「電子カルテなどのリアルワールトドデータを活用した臨床観察研究の展開」 とうい題目で特別講演をいただいた.電子カルテシステムにさらに日常の患者の情報を取り込んだリアルワールドデータ(RWD)の活用方法とその可能性について発表された.
■研究成果報告:
高野の座長の下で,医工連携の研究成果報告が行われた.
「病理画像のがんらしさと正常らしさを情報量で評価する’情報密度法’」
金沢医科大学 臨床病理学 教授 山田壮亮先生
「頸部超音波検査プローブ手技教育のための遠隔授業支援システム」
金沢工業大学 情報フロンティア学部メディア情報学科 教授 出原立子先生
「病理画像のがんらしさと正常らしさを情報量で評価する’情報密度法’」
金沢医科大学 臨床病理学 教授 山田壮亮先生
「頸部超音波検査プローブ手技教育のための遠隔授業支援システム」
金沢工業大学 情報フロンティア学部メディア情報学科 教授 出原立子先生
オナーズプログラム「医工連携に基づいた人間にやさしい医療機器の創製」への支援
■研究成果報告:
最後に医工連携オナーズプログラムからの2件の報告があった.
「変形性関節症の治療効果向上を目指した脂肪由来幹細胞 (ADSC) の新しい培養方法の開発
-関節液がADSCに与える影響について-」
バイオ・化学部応用化学科 学部4年(大澤・谷田研究室)桑野彩音
「バイオ・化学を基幹とする新型コロナウイルスRNA polymerase阻害物質の創製」
応用バイオ学科3年(天然物創薬プロジェクトメンバー)熊崎 風夏
「変形性関節症の治療効果向上を目指した脂肪由来幹細胞 (ADSC) の新しい培養方法の開発
-関節液がADSCに与える影響について-」
バイオ・化学部応用化学科 学部4年(大澤・谷田研究室)桑野彩音
「バイオ・化学を基幹とする新型コロナウイルスRNA polymerase阻害物質の創製」
応用バイオ学科3年(天然物創薬プロジェクトメンバー)熊崎 風夏