医工融合技術研究所

Integrated Technology Research Center of Medical Science and Engineering

平成30年度医工融合技術研究所の活動報告

平成30年度の主な活動

  1. 「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」の開催(第16回/第17回/第18回)
  2. 医工連携研究フォーラムの開催
  3. 医工連携オナーズプログラム参加学生による成果のポスター発表会
  4. 2019年度の予定

1. 「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」 3回の開催


第16回「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」


■日時: 平成30年6月8日(金) 14:00~17:00

■場所:  金沢工業大学 扇が丘キャンパス 21号館503号室 (石川県野々市市扇が丘7-1)

■プログラム:
開会挨拶 金沢工業大学 医工融合技術研究所 所長 新谷 一博

講演1
「新たな精神神経疾患の治療法創生に向けた挑戦 アカデミアからビジネスシーンへ ;基礎研究の可能性は無限大」
(株)RESVO CTO,
(国)島根大学医学部 特任教授 大西 新 博士(医学)

講演2
「母‐胎児間シグナル伝達を担う組織構築の解明」
金沢医科大学・医学部 解剖学Ⅰ 八田 稔久 教授

■参加者数: 62名(メンバーシップ企業、研究所員、学生他)

■内容:

 1件目は「新たな精神神経疾患の治療法創生に向けた挑戦 ,アカデミアからビジネスシーンへ;基礎研究の可能性は無限大」と題して,(株)RESVO CTOの大西 新 氏より講演を頂いた.精神神経疾患の一つである統合失調症は,人口の約1%が発症するが根本的な治療法が確立しておらず,生涯に渡って患者を苦しめる病である.それに伴う社会的損失は日本だけでも年間3兆円に及び,(株)RESVOにおいては,アカデミアにおける基礎研究結果に基づき,新たに開発された統合失調症モデル動物及び病態関連分子を用いて統合失調症治療薬の開発とコンパニオン診断薬の開発を行っている.(株)RESVOの設立,資金調達,製薬企業や医学部とのコラボレーションなどを含めた研究開発の経緯について説明が行われた.
 2件目は,金沢医科大学・医学部・解剖学Ⅰ 八田 稔久 教授より「母‐胎児間シグナル伝達を担う組織構築の解明」と題して講演いただいた.内容は,白血病抑制因子(LIF)―副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が,母―胎児間シグナルリレーにより胎児の発育調節機構について紹介された後,その破綻が胎児脳に及ぼす影響について,マウスモデルを用いた自験例と最新の知見に基づき解説が行われた.さらに,胎盤の組織構造をハイスループット3次元解析するための画像解析システムについても紹介頂いた.
 以上の講演より,医療製造を目指した企業や今後参入を考えている企業から活発な質問が噴出し,興味の深さを感じ取ることができた.


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図1 第16回研究会での講師各氏


第17回「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」


■日時: 平成30年8月3日(金) 14:00~17:00

■場所:  金沢工業大学 扇が丘キャンパス 21号館503号室 (石川県野々市市扇が丘7-1)

■プログラム:
開会挨拶 金沢工業大学 医工融合技術研究所 所長 新谷 一博

講演1
ワーキングメンバからの事例報告 「窒化ケイ素系セラミックスの抗菌性について」
金沢工業大学 医工融合技術研究所 吉田 杏 氏

講演2
「アフェレーシス関連商品とテクノロジー」
テルモBCT株式会社 マーケティング部 黒田慎一郎 氏

講演3
「白血病をバーチャル骨髄で解析する ~白血病幹細胞モデルを用いた再発の機序~」
金沢医科大学・医学部 小児科・医学博士 犀川 太 教授

■参加者数: 72名(メンバーシップ企業、研究所員、学生他)

■内容:

 1件目は,金沢工業大学・医工融合技術研究所 吉田 杏 氏より,「窒化ケイ素系セラミックスの抗菌性について」と題して医工連携事例報告をいただいた.内容は,体力が低下している闘病者や高齢者は,健常者に比し感染症を発症するリスクが高く,特に加齢により体内埋植器具を設置しなければならなくなった場合,この傾向がさらに強くなる.本講演においては,体型の整復を目的としたセラミックスの応用として,窒化ケイ素系材料に微細なパターニングを施すことにより抗菌性を付与しようとするものであり,抗菌性を確認するために,ビトロ試験により生菌数をカウントし抗菌効果を評価した結果について発表された.この結果から,細菌の培養液との濡れ性試験結果から細菌の付着性を抑制することにより,抗菌性が向上することが発表された.
 2件目は,「アフェレーシス関連商品とテクノロジー」と題し,テルモBCT株式会社・マーケティング部,黒田慎一郎 氏から講演いただいた.内容は,体外循環によって血液中から細胞成分や血漿成分を分離するアフェレーシスには,末梢血幹細胞等の細胞採取や病原因子の除去を目的とした治療用アフェレーシスと,血小板等の血液成分の採取を目的としたドナー用アフェレーシスがあり,病院や血液センターで用いられているアフェレーシス関連商品とそれを支えるテクノロジーの説明と,国内外の最新動向が紹介された.
 3件目は,「白血病をバーチャル骨髄で解析する ~白血病幹細胞モデルを用いた再発の機序~」と題して,金沢医科大学・医学部 小児科 医学博士 犀川 太 教授から講演いただいた.内容は,小児リンパ性白血病は臨床試験の蓄積によりその治療成績は著しく向上し,現在は「治る病気」になりつつある.一方,小児骨髄性白血病は再発しやすく,治療法の開発が重要な課題となっている.この再発の機序を解明する目的で,演者らは骨髄系造血の3次元モデル(正常骨髄系モデル)を構築された.さらに,このモデルに白血病幹細胞システムを導入することで白血病化モデル(骨髄性白血病モデル)も構築されている.治療シミュレーション(白血病治療モデル)により得られた治癒例と再発例の細胞動態を比較し,早期再発は残存する白血病幹細胞数に依存することは容易に理解でき,晩期再発は残存する細胞数では説明が困難であることや,このことは白血病幹細胞を取り巻く微小環境が重要である可能性を示された.このように,この講演ではシステム生物学的アプローチによる白血病研究の一端が紹介された.


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図2 第17回研究会での講師各氏講演の様子


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図3 犀川 太 教授による講演と質疑応答の様子



第18回「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」


■日時: 平成30年11月16日(金) 14:00~17:10

■場所:  金沢工業大学 扇が丘キャンパス 21号館503号室 (石川県野々市市扇が丘7-1)

■プログラム:
開会挨拶 金沢工業大学 医工融合技術研究所 所長 新谷 一博

講演1
「在宅患者のバイタルや状態を常時・リアルタイムに医師が確認できる遠隔診療支援プラットフォームについて」
セコム医療システム株式会社 企画本部 野口 邦晴 氏

講演2
「安全・安心な分娩管理に向けた電子パルトグラムの開発」
金沢医科大学 看護学部・母性看護学・助産学 山崎 智里 講師

■参加者数: 50名(メンバーシップ企業、研究所員、学生他)

■内容:

 講演1では,「在宅患者のバイタルや状態を常時・リアルタイムに医師が確認できる遠隔診療支援プラットフォームについて」と題し,セコム医療システム株式会社・企画本部 野口 邦晴 氏からご講演いただいた.セコム医療グループでは高齢者むけ老人ホームや訪問介護ケアセンター,保険調剤,ユビキタス電子カルテ,遠隔画像診断支援サービスなど地域連携システムを構築していることや,開発器具の一つで,手の不自由な方に対する支援として開発されたジョイスティック操作型食事援用ロボット「マイスプーン」についても紹介された.
 講演2では,「安全・安心な分娩管理に向けた電子パルトグラムの開発」と題して,金沢医科大学・看護学部 山崎 智里講師より講演を頂いた.内容は,近年のハイリスク化している分娩期において助産師等は,異常出現時はもちろん,時に複数の同時進行の分娩に携わりながら,分娩経過及び分娩時間を正確に予測し,その予測に基づいたケアの実践や物品,環境を整える段取りを組まれている.そのため,いかに分娩進行の状況をオンタイムで的確に把握できるかが安全・安心な分娩管理には重要となってくる.その役割の一つを担うのが分娩の経過について記録するパルトグラム(分娩経過図)であるが,実際は数多くの課題が指摘されている状況にある.
 本講演では,これらの課題解決・改善に向けた電子パルトグラムの開発について報告された.


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図4 第18回研究会におけるセコム医療システム株式会社からの講演の様子


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図5 第18回研究会における山崎講師 講演の様子

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図6 第18回研究会での講演の様子


2. 第10回医工連携研究フォーラムの開催


■日時: 平成31年2月23日

■開催場所:  金沢工業大学 BOK・アントレプレナーズラボ

■参加者数: 113名

■基調講演: 「脂肪由来幹細胞を用いた運動器の再生」
金沢大学・医学部 整形外科学 医学博士 土屋 弘行 教授

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図7 土屋教授ご講演の様子


■ポスターセッション
「医工連携に基づいた医療機械の創製」オナーズプログラム参加学生 14テーマの発表

■研究プロジェクトの成果報告会

【研究成果報告】

「医工連携による生分解性高分子を用いた再生医療向け足場材料の作製とその評価」
谷田育宏,大澤 敏(金沢工大),石垣靖人,中村有香,小屋照継,下平滋隆(金沢医科大)


【研究成果報告】

「医工連携・産学連携で育む脂肪組織由来幹細胞プロジェクト「さんまるAP」
石垣靖人,中村有香,小屋照継,下平滋隆(金沢医科大学),谷田育宏,大澤 敏(金沢工大)


【研究成果報告】

「フッ素添加DLC被膜の抗菌効果」
佐々本丈嗣,川口真史,川原範夫(金沢医科大),大嶋俊一,新谷一博(金沢工大)


【研究成果報告】

「DLCを被膜した3Dハニカム材料における骨伝導の遺伝子学的考察」
瀨川 歩,新谷一博(金沢工大),石垣靖人,中村有香,川口真史,兼氏 歩,川原範夫(金沢医科大学)


【研究成果報告】

「BN添加Si3N4系セラミックスの抗菌性」
小松宏行,小田 忍,新谷一博(金沢工大),川口真史,川原範夫(金沢医科大)


【新シーズ提案】

「界面バイオプロセスによる医薬品原料の高生産システム」
小田 忍(金沢工大)


【研究計画紹介】

「がんゲノム医療の基盤となる樹状細胞ワクチン製造技術の開発」
小屋照継,下平滋隆(金沢医科大学)


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図8 金沢医科大学 神田学長のあいさつ

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図9 金沢工業大学 大澤学長のあいさつ


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図10 各講演者の様子Ⅰ


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図11 各講演者の様子Ⅱ


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図12 会場の様子

3. 医工連携オナーズプログラム参加学生による成果のポスター発表会


以下のワーキンググループのテーマについてポスター発表を行った.

◆看護学科関連テーマ

  1. 高齢者にやさしい爪カッタの開発
    加藤秀教授
    4ER1塚本淳基,3EM1今野太郎,3EM1小坂康貴,3EM1坂井克彦
  2. 血圧の新規測定法の提案と機器の開発
    森本教授,紺家金沢医科大教授
    3EM4水野竜也,3EM4秋保裕矢
  3. 糖尿病患者における定期注射管理ボックスの開発
    高野教授,紺家金沢医科大教授
    2EM1花川貴紀,2ER2青塚達也,1EM1酒井悠平
  4. 耳たぶを利用した血糖値の自己測定装置の開発
    高野教授,紺家金沢医科大教授
    4EM4曽我部翔大,2EM3樋口達哉,2EM3 林 礼真,2M1小林拓也
  5. 生体機能に即した静脈注射シミュレータの開発
    高野教授,紺家金沢医科大教授
    3EM1西川穂波,3EM1籔崎有美恵,3EM3石輪光一郎

◆消化器内科関連テーマ

  1. カプセル内視鏡の開発(非常脱出機構の提案)
    高野教授,中村医科大講師
    2EM4本田良希,2EM4若林幸司,1EM3寺澤大稀

◆整形外科関連テーマ

  1. フッ素添加DLC膜のフッ素溶出量の検討
    大嶋准教授,新谷教授,川原金沢医科大教授,川口金沢医科大講師
    1M1吉田 杏,1EM1松宇星果,3EM4丹保明日斗
  2. セラミックス系材料における表面状態と抗菌性に関する研究
    新谷教授,兼氏金沢医科大教授
    2M1小松宏行,1EM1上野龍馬
  3. 生分解性高分子を用いた組織再生用足場材料の開発
    谷田講師,大澤教授,石垣金沢医科大教授
    1B1滝口涼太,1B1遠山 拓,1B1古西朗夫,1BC1下野賢太,4BC1納 祐一,4BC1南條利貴
  4. 人工足場材料の形状やDLC被膜が遺伝子変動に及ぼす影響
    新谷教授,兼氏金沢医科大教授,石垣金沢医科大教授
    4EM1中井 遥,2EM1北村鈴香,3EM1青野茉優,2M1瀨川 歩

◆その他の領域テーマ

  1. ミトン装着を廃止するための新型医療機器の開発
    瀬川教授,伊藤金沢医科大
    3EM4夏目大地,3EM4山本浩司,3EM4小々高翔太,2EM4麻生大稀
  2. 手術用シミュレータの開発(動脈瘤モデルの開発)
    新谷教授,小畑氷見市民病院講師
    4EM4浅井健児,4EM3三納功巳,3EM3大石拓矢,3EM3 出倉巧輝,3EM4魚津隆介,1EM1市村翔太
  3. ステロイド医薬原料を生産し得るカビの探索
    小田教授
    3BB1青木里瑚,3BB2岡田敏一,3BB2白松李菜,2BB1佐藤紅空,2BB1澁谷駿太,2BB2坂田大将,1BB1上野拓夢,1BB1柄澤苑美,1BB1吉田和紗
  4. 糖尿病防止のための医療器具の開発
    長沼教授,村角金沢医科大准教授
    2EM4橋本一輝,2EM2松野克哉,1EM1木津光雅,1EM2櫻井翔太
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図13 ナーズプログラム学生によるポスター展示の様子

4. 2019年度の予定


■研究会の開催

第19回 6月21日(金)

望月 隆(モチヅキ タカシ) 金沢医科大学・教授 医学部 皮膚科学

「真菌に関わる病態と集団感染実体把握のための分子疫学的検討」(仮題)

 “皮膚は内臓の鏡”ともいわれ,皮膚病変は内臓疾患に関連していることが知られています.本講義では特に皮膚病の中でも真菌が関わる病態について,この原因菌種の同定法や感染経路の解明,さらに集団感染の実体を把握するための分子疫学的検討について紹介する.


株式会社ジョンソン&ジョンソン エチコン事業部

「創閉鎖・創傷管理や低侵襲手術を目的とした器具の現状と問題点」(仮題)

 創閉鎖・創傷管理としての外科手術全般に使用される体内吸収型抗菌縫合糸,合成皮膚用接着剤,吸引排液システム,吸収性癒着防止材や低侵襲手術関連製品としての自動縫合器,開腹・開胸手術用や鏡視下手術用の自動縫合器,自動吻合器,そしてバイポーラ電気メスの技術を応用し7mmまでの血管等の組織をシール可能な製品についての現状を紹介し,今後の展望についても講演する.



第20回 8月2日(金)

正木 康史(マサキ ヤスフミ) 金沢医科大学・教授 医学部 血液免疫内科学

「難治性悪性リンパ腫の診断と治療の進歩、および今後の課題」

 悪性リンパ腫の中で診断困難でかつ難治性の一群として「血管内大細胞型B細胞リンパ腫」「中枢神経原発大細胞型B細胞リンパ腫」があり,これらは,診断ツールや治療効果判定のデバイスなど,まだまだ開発の余地があるように思われる.本講演ではこれらの問題点について説明する.


関 正広 氏 富士フイルムメディカル(株) 内視鏡・超音波事業本部 技術部 営業技術グループマネージャー

「軟性内視鏡 画像強調観察技術 BLI・LCIのご紹介」

 BLI(Blue LASER Imaging)画像とは,短波長狭帯域光観察BLIを,表層血管観察に適した短波長レーザー光を照射して得られる信号に,画像処理を行うことで,血管や表面構造の観察に適した画像を表示するものであり,LCI(Linked Color Imaging)画像とは,赤みを帯びた色はより赤く,白色はより白くなるように色の拡張・縮小を行い,粘膜の微妙な色の違いを強調して,炎症診断をサポートする技術です.本講演ではこれらの内容や新技術の紹介を行う.



第21回 11月15日(金)

中田 ゆかり(ナカダ ユカリ) 金沢医科大学・講師 看護学部 公衆衛生看護学

「睡眠に着眼した労働者のメンタルヘルス一次予防に関する研究」

 公衆衛生看護領域では,“地域・集団”の健康状態の明確化,健康状態に関連する要因の抽出を行う研究,地域で生活する高齢者の健康を守る対策に関する研究,認知症高齢者の生活リズムの明確化に関する研究などを中心に取り組んでいるが,本講演では,我が国におけるシフト労働者の労働時間,睡眠時間,そしてこれらの障害によってもたらされる抑うつ症状について説明する.



■研究フォーラムの開催

開催場所:金沢工業大学
日時:2020年2月22日 土曜日


■医工連携プロジェクトの推進

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