建築アーカイヴス研究所

Research Institute for Architectural Archives

地域の建築文化を残そう ―手描き図面アーカイヴス―

建築家の2つの役割

全国各地のJIA会員は、建築設計の専門家として各地域の戦後復興から高度成長や都市化を経て今に至るまで数多くの建築に携わってきており、地域の建築文化創出の担い手であると自負、自覚されておられることと思います。

一方で会員は、さまざまなジャンルの人々とコラボレーションしながら、まちなみや歴史的建築、近代建築などの保存、修復、再利用の行動を展開されていることと思います。

この2つの活動は建築家として建築文化の「開発」と「保存」という両面での地域貢献と言えます。


建築家自身の保存

建築界において、緊迫の課題として浮上してきたのが、現代建築の創造媒体であった「手描き図面」の廃棄や滅失に対する保存活動です。これは、図面ツールが1990年頃からCADに移行した結果、古い「手描き図面」は倉庫に入り、やがて棄却を待つという、私たち建築家自身が体験している現況への対策なのです。換言すれば、建築文化の「開発」に携わってきた建築家自身の記録「保存」です。

JIAでは、そうした「手描き図面」の滅失対策を目的とした建築アーカイヴス委員会を設け、実行に着手しました。そして「手描き図面」を保管し、整理し、デジタル化して公開する実施の受け皿として金沢工業大学(KIT)と協定を結び「JIA-KIT建築アーカイヴス」を2007年に立ち上げました。現時点で約25名の会員の「手描き図面」を受け入れ、保管、整理し、デジタル化を始めています。


地域の現代建築文化の記録保存

アーカイヴス委員会の席上で、全国各地の建築文化を担ってきた地域のベテラン建築家たちの「手描き図面」が消滅しつつあるという状況報告があり、議論した結果、全国各支部で自らの地域の建築文化を築いてきた先輩建築家達の「手描き図面」を収集し、永久の記録保存をするという提案に至りました。

先行事例として北陸支部所属のJIA名誉会員3名に、委員会提案を御説明したところ、同感され、「手描き図面」の提供を快諾して頂きました。そして収集したものは、

   釣谷利夫   16作品
   藤田順吉郎   3作品
   新村利夫   15作品

であり、北陸地域の現代建築文化の草創期、興隆期を担ってきた建築家の図書記録を永久保存することができました。


各地域の建築アーカイヴス推進を願う

建築アーカイヴス委員会は、2009年JIA京都大会でも全国各支部の代表を加えて、地域の建築アーカイヴスについて討論をしました。それを受けて北陸支部名誉会員コレクションが実施されたのですが、このことによりベテラン会員の地域建築文化貢献度の再認識や「手描き図面」の生き生きとした迫力と美しさへの感動を体験することができました。各支部、地域会においても地域の現代建築文化を支えた「手描き図面」の収集へ是非立ち向かっていただきたく、とっかかりの緊急の行動として『地域のベテラン会員の「手描き図面」の収集』を提案致します。

収集された図面はJIA建築アーカイヴス委員会に連絡いただければJIA-KIT建築アーカイヴスにて永久保存し、整理、デジタル化、公開へと進行させてゆきます。収集に際してのさまざまな御相談にも対応しますので、御連絡をお待ちしております。

JIA-KIT建築アーカイヴス委員会
仙田 満 委員長
大宇根 弘司 前委員長
(建築家Architects 2010年7月号 No.266に掲載)

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