感動デザイン工学研究所のコンセプト
感動プロダクトのための創作技術とクリエイティブ人材養成システムの開発
産業界と地域社会に開かれた研究拠点
金沢工業大学感動デザイン工学研究所は、21世紀の”ものづくり”において重要視されている、人に感動をもたらす優れた製品開発を行うため、平成19年3月に開設されました。「人が感動したとき、どのような生体反応を示すのか」。この疑問に答えるため、脳波形や光トポロジー、脳磁場計測システム(MEG)、筋電計などを用いて数値を測定し、感動の評価システムを確立させていきます。この成果を基盤に感動共有技術開発による新たな”ものづくり”の提案をし、この技術の応用と支援手法の研究を推し進めていきます。また、感動を生み出すことのできるクリエイティブな人材を養成します。研究には学外から幅広い人材の参加を募り、その成果は産業界や地域社会へ還元、普及し、人が感動するものづくり技術の確立早期に実現します。学外に開かれたリサーチセンターとして、当研究所は産業界や地域社会の進展に貢献していきます。
プロジェクト
< Project1 > 感動の測定・評価システムの開発
- 感動の特質を解明
- コミュニケーションメカニズムの解明
- 感動創出システムの構築
人が感動する状況での生体反応を、生理・脳機能・行動などの角度から測定し、数値化します。生体反応を分析・評価する際には、生理学・心理学・脳科学の手法を用いて多角的に検証していきます。これらの検証データをシステム化することにより、不明瞭だった「感動」が科学的な裏付けを得ることになります。
< Project2 > 感動共有技術開発による新たな”ものづくり”の提案
- 五感情報の統合化技術
- 感動共有技術開発
- 感動の特質について確認・検証
従来、映像などのコンテンツは、視覚・聴覚情報しか存在しませんでした。そこで、嗅覚・触覚・味覚・体性感覚の各情報を加えるにはどうすればよいかを人間工学的・感性工学的に研究し、エンハンスト・ヒューマン・インターフェイスを目指します。五感の統合を図ることによりあらゆる人々が同じ感動を得ることができる技術(感動共有技術)の開発を行います。また、この技術の有効性を、プロジェクト1の成果をもとに検証・評価します。
< Project3 > 感動共有技術の応用と支援手法の開発
- 感動体験を与えるコンテンツの開発
- コンテンツ開発人材の育成
- 実社会への成果の還元
プロジェクト2で開発した五感の統合化技術を使いこなし、新たなコンテンツを創出できるクリエイティブな人材の養成システムを開発します。システムには、実験心理学や認知科学から工学、工学教育、さらに工業デザインにいたる広範囲な学問分野の手法を総合的に組み合わせ、マニュアル化します。ゲーム関連企業と連携し、このシステムで養成されたクリエーターが生み出したデジタルコンテンツが感動をもたらすことができるのか、プロジェクト1の成果をもとに検証・評価を行います。
研究設備・機器
本研究所の様々な機器、設備についてご紹介します。
感動デザイン工学スタジオ
本スタジオは、視・聴・触・嗅・体性感覚情報を統合的に提示して感動を生む新たなデジタルコンテンツを創造するために、高品位映像・音響提示システムと3次元映像提示システムと五感情報提示システムから構成されている。 2次元と3次元のコンテンツに、五感の統合化技術を応用して触覚や嗅覚や体性感覚の情報を付加して、高品質な音響を保障するTHX基準の下での音響システムを通してこれを提示し、観客の感動・エモーションを測定・評価するとともに、このようなコンテンツ・クリエーターの養成・訓練システムの効果を検証する。
高臨場感ディスプレイシステム
半球型スクリーンにビデオ映像やCGを呈示することで視聴者に通常のスクリーンよりも強い臨場感を与える。 この装置によって、現実場面では収集困難な生理データや脳機能データを、高い臨場感の中で収集することが可能となる。
光トポグラフィ
近赤外分光法により大脳皮質の血流量の変化を計測ことができる。 他の脳活動計測装置に比べて計測時の制約が小さいため、よりリアルな状況での脳活動変化を調べることが可能となる。
リアルタイム3次元動作計測システム
感動共有を可能にするためのコミュニケーションに必要な人間の行動をリアルタイムで3次元映像として計測し、定量化することが可能である。 この行動を解析することにより、感動の共有を体験するために必要な情報を取得することができる。
感動創出訓練室
感覚刺激の微妙な差異を弁別したり、刺激が感情的効果に敏感に反応したり、といったプロのクリエーターが持つ優れた五感の感性情報処理能力を、短期間で効率的に修得するための訓練プログラムを開発、実践を行う。
温湿度可変実験ブース
人間が感動したときに生起する行動面、生理面における様々な変化を適切に計測・評価するシステムを開発するため、温度・湿度を精密にコントロールした状況で実験を行い、生理指標を計測、基礎データの収集を行う。
力覚通信システム
力覚提示装置を用いて衝撃や反発の触覚情報だけを被験者に体験させることが可能な、遠距離での触覚シミュレーション通信システム。 視覚情報を取り除き、触覚情報に限定したデータの収集を行なう。