Kanazawa Institute of Technology Applied Ethics Center for Engineering and Science / 金沢工業大学科学技術応用倫理研究所

技術倫理ゼミ('07-'08)

複数教員+学生で、科学技術に関係する倫理的問題について考えるゼミをやってます。

日時:学期期間中の第2、第4、月曜日、8限:16:50-
場所:1号館 1.107号室

※事前登録の必要はありません。(ただし、連絡をいただけると確実です。)

平成20年度の予定

日時担当1担当2テーマ
14/14夏目西村CDのデジタル著作権管理に関するケース討論
24/28西村札野ペットボトルとレジ袋から環境倫理を考える
35/12岡部金光プリンスホテルと日教組
45/26札野岡部カンニングは何故いけないのか―The Honor Systemの可能性―
56/9金光知ることと倫理─遺伝子診断を考える─
66/23栃内韓国のサイバー倫理と青少年の政治参与について
79/8栃内夏目科学技術の専門家としてリスクをどの程度公表すべきか─地質学者・地震学者の防災や地震予知への関与の様子の検討を通して─
89/22夏目西村Googleストリートビューとプライバシー
都合により中止となりました。この内容は2/9におこないます。
910/16西村札野地球が温暖化して、何か問題でも?
1010/27札野岡部なぜ、ウソをついてはいけないのか―『うその倫理学』と捏造・改ざん・剽窃―
1111/10岡部金光ケースメソッドで考えよう。食品問題
1212/8金光ユニバーサルデザインの考え
1312/22栃内韓国の大規模事故から見る倫理的な責任
141/15栃内夏目科学技術コミュニケーションって何だろう?その倫理との関係など
都合により中止となりました。この内容は2/23におこないます。
152/9夏目西村Googleストリートビューの日本展開
162/23栃内札野科学技術コミュニケーションって何だろう?その倫理との関係など

過去の内容報告

第16回

日時平成21年2月23日(月) 16:50~18:00
場所1号館107室
テーマ 科学技術コミュニケーションって何だろう?その倫理との関係など
内容 まずは、科学技術コミュニケーションをめぐる最近の動きについて紹介がおこなわれた。科学技術コミュニケーションの人材育成のための制度化が進んでいるということは、それが社会の課題であるという認識があるからであろう。そうすると、科学技術コミュニケーションに必要な要素とは何か、それは以前はあったものが欠けてしまっているのか、それとも新しい要求が生じてきているにもかかわらず現状では十分ではないと考えられるのかといった堤題がなされた。そして、とくに科学技術をめぐるリスクコミュニケーションおよび信頼の問題について考察を進める中で、今後の一般市民の役割についての討論がおこなわれた。

第15回

日時平成21年2月9日(月) 17:10~18:00
場所1号館107室
テーマ Googleストリートビューの日本展開
内容 最近のグーグル日本の対応を踏まえながら、ストリートビューの問題について議論をおこなった。
この問題は、全世界で共有されているインターネットが舞台になるだけに、ステークホルダーの設定の仕方はとても多様である。例えば、住宅地を撮影することの是非を考えた場合、住居者はもちろんだが、不動産業やあたらしく引越しを検討している人など、ステークホルダーによって用いられる意味が大きく変わるだろう。
最終的には、なんらかの線引きが必要になるが、それをどうすべきか、場合分けをしながら検討していくことの重要性が指摘された。例えば、自治体(町内会)などに判断をゆだねることも検討された。

第13回

日時平成20年12月22日(月) 16:50~19:30
場所1号館107室
テーマ 韓国の大規模事故から見る倫理的な責任
内容 韓国で最近10年間におこった大規模な事故をとりあげて、その技術者倫理との関係について議論をおこなった。具体的には下記の事例。
  • 三豊百貨店崩壊事件(1995年6月29日)
  • 聖水大橋崩落事故(1994年10月21日)
  • 大邱地下鉄放火事件(2003年2月18日)
ここで、とくに韓国の技術に対する倫理観と日本のそれとの違いについて議論がおこなわれ、それが文化の違いであるとするとそれをどのように技術者倫理教育に反映させるべきか情報交換がおこなわれた。

第12回

日時平成20年12月8日(月) 16:50~18:10
場所1号館107室
テーマ ユニバーサルデザインの考え
内容 まず、UDデザインの歴史、日本とアメリカでの意識の違いなどについて解説をおこなった。その上で、企業や自治体のさまざまな取り組みの事例を紹介し、理解を深めた。さらに思考実験を題材にして、身体障害について自分たちが無意識に前提としているバイアスを確認した。通常、使いやすいデザインを考える場合には相手の立場から考えることが重要である。しかし、頭で考えるだけでは感情や感覚を理解することは難しい。さらにユニバーサルデザインは「ユニバーサル」であるがゆえに、多様な人にとって使いやすいものでなければならないという本質的な難しさがある。具体的な(しかし特定の)他者を想定して思いつきで改良を進めると弊害が大きくなる可能性もあるからである。だからこそ、科学的知見に基づく統計的調査が必要にもなるだろう。このようなユニバーサルデザインに内在するさまざまな問題について討論をおこなった。

第11回

日時平成20年11月10日(月) 16:50~18:00
場所1号館107室
テーマ ケースメソッドで考えよう。食品問題
内容 コンニャクゼリーの窒息問題をテーマとした仮想事例を用意し、製造会社としてはどのように対応すべきかを「ケース・メソッド」として協議した。
最終的には、販売を継続するかしないかで争われたが、継続するとしてもどのような条件でおこなうか、という点についてはなかなか意見の収束がなかった。改善策としては、まず形状や大きさ、柔らかさなどを変えることが考えられたが、サイズや食感を変えてしまうと、そもそもダイエット食品としての価値を満たさなくなる可能性が考えられた。また、死亡者数をどう評価するかという問題については、絶対数で評価するか、あるいは確率(リスク)で評価するか、とくに消費者重視の立場としてはなかなか結論がまとまらなかった。
最終的には、実際の事例の現時点での経過が報告され、社長として製品の販売を中止するという判断の是非が考えられた。

第10回

日時平成20年10月27日(月) 16:50~18:00
場所1号館107室
テーマ なぜ、ウソをついてはいけないのか―『うその倫理学』と捏造・改ざん・剽窃―
内容 亀山純生『うその倫理学』をもとに、ウソの持つ問題について議論し、科学技術の研究活動や企業における不正問題について広く考察をおこなった。
そもそも、世界のあらゆることはあらゆる人間にとって個人的な理解(フィクション)をともなって認識される。さらに、人間は私的生活と公的生活、そして自分と他者という二重×二重の存在として多重化されているため、すべてを満足させる行動が本質的に難しいことが多い。その結果、ウソというものが生じる可能性を本質的に持ち合わせていることになる。
そこで社会的に問題となるのは、その行為が意図的であるかどうか、ということである。意図的な虚偽は「ウソ」であると定義できる。しかし、このような明らかなウソがあれば、それは排除できるにせよ、現実はつねに不確実性をともなうものである。そのために、それが虚偽であるかどうか、そしてそれが虚偽であると認識したうえでの意図的なものであるかどうか、そこでの明確な線引きはきわめて困難にならざるをえない。
科学技術の研究活動でも、それが未知であるがゆえに不確実な対象を扱うものであるから、そうしたグレーゾーンは広く存在する。また企業活動でも、例えばCMにおけるイメージ戦略や情報開示の線引きにおいても、人によってとらえかたが異なるがゆえに、その行為が許されるかどうかの判断も分かれることになる。そうした判断基準はつねに社会的に動的に形成されていくものなのである。そのため、とくに企業経営においては、その判断をどのように考えていくかということが社会的責任の観点からもきわめて重要であることが再認識された。

第9回

日時平成20年10月16日(木) 16:50~18:00
場所1号館107室
テーマ 地球が温暖化して、何か問題でも?
内容 社会問題化している地球温暖化の議論について、批判的観点から検討をおこなった。
一般的に、このまま地球温暖化の傾向が続けば、21世紀末には人類にとって危機的状況が生じるというイメージが共有されつつある。テレビ局なども「エコ」の名のもとに、長時間番組を編成しているが、そこでは批判的観点が影をひそめるという傾向がある。しかし、そうした報道で用いられるデータを再検討してみると、解釈の仕方に起因するさまざまな問題が存在することがわかる。
今回のゼミでは、そうした問題点を指摘しつつ、私たちがどのように環境問題を考える傾向があり、そうした意見がどのように社会的に構成されているのか議論をおこなって検討した。なお議論においては、なかなか意見や質問を出しにくい状況が生じていたが、その理由として、スケールが大きく個人的にはデータを検証することが難しいからこそ、批判的な意見が起きにくい状態が生じていることが確認された。また、経済的な観点となど、環境問題が語られる際には避けられがちな現実的なテーマとのバランスで考えることの重要性などが確認された。

第7回

日時平成20年9月8日(月) 16:50~18:20
場所1号館107室
テーマ 科学技術の専門家としてリスクをどの程度公表すべきか─地質学者・地震学者の防災や地震予知への関与の様子の検討を通して─
内容 地質学者の社会的責任についての意識調査の結果を踏まえて、災害についてのリスク・コミュニケーションのあり方について討論をおこなった。
地質学者は、伝統的に研究の社会への還元に対する意識が高く、研究においても大きな価値を置いているという。例えば、プレートテクトニクス理論においても、たんに日本が地質学的に特殊である(プレートが重なり合うために、複雑な現象を引き起こす)ために理論の検証が難しいというだけでなく、その理論を採用した場合の社会的有用性も議論され、そのために理論の受容が遅れたという。これは日本を代表する地質学者である今井功氏や八木健三氏へのインタビューからも見られる傾向であるという。
このように、研究結果の社会への還元、少なくとも社会への影響を考慮することは重要なことであろう。しかし、社会への還元・影響を考えた場合に、どのように市民社会にそのリスクを伝えていくべきか。悲観的なものから楽観的なものまで諸説ある場合、それらの説の伝え方によって、市民社会の日常生活にも影響は及ぶであろう。
今回の討論では、何か統一的な答えが見いだせたわけではないにせよ、様々な国の事情などを国際的に考慮しながら、起きうる問題について多角的に検討した。

第6回

日時平成20年6月23日(月) 16:50~18:30
場所1号館107室
テーマ 韓国のサイバー倫理と青少年の政治参与について
内容 韓国で実際にインターネットを介して起こっている諸問題や、そうした諸問題への対処として展開されている情報倫理教育の事例を紹介し、これからの情報倫理をどのようにおこなっていくべきか討論した。
韓国では情報化の技術流入が急速であった。そして、韓国では日本に比べて、インターネットの普及率が高く、匿名性が低い。こうした特徴はインターネットの問題をより顕在化しているとも考えられる。その一方で、そうした問題は文化的傾向とも結びついていると考えられる。
また、インターネット上の行動については、世代に応じて意識が大きく異なる可能性が大きい。現在の子供がどのような認識を抱いているのか大人が判断することは難しいところがある。また、世間のあり方もインターネットを通じて大きく変わってきていると言えるだろう。こうした観点から討論が進められた。その一方で、インターネットは情報の共有を促進する役割を果たしているだけで、「リアル」な社会の傾向を増幅・可視化しているだけであり、情報倫理を特別視することはナンセンスであるといった意見もあった。
結局、何らかの方針を導き出すことは難しかったが、問題点についてはいろいろと発見・共有ができた。

第5回

日時平成20年6月9日(月) 16:50~19:00
場所1号館107室
テーマ 知ることと倫理─遺伝子診断を考える─
内容 遺伝子診断について、社会としてどのように「制限」していくべきか議論をおこなった。
遺伝要因が大きな病気が存在する一方で、一般の病気では、それ以外の環境要因が大きく左右する。その中で、特に遺伝病と呼ばれる病気を遺伝子診断で知ることの是非がまず問われた。
議論が進むにつれて、その他の遺伝子が要因とされる現象に話題が進み、体質改善などのいわゆる優生学の思想に結びつく場合の診断の是非も論じられた。
基本的に優生学思想には良いものを選別して伸ばすという「積極的」なものと、問題のあるものを避ける「消極的」なものがあり、後者の場合は本人の立場からすると一概に否定することはできない。そのため、自由意思に委ねる以外の有効な方向性を見出すことは難しかった。
いずれにせよ、そうした遺伝子診断の結果を受け入れることのできる社会が前提として、是認できるのではないかと考えられた。
また、遺伝的要因によって決定される遺伝子病の議論から、その他のより一般的な病気、さらには人間の相性などまで話題が広がっていくという遺伝子を論じる際の言説の傾向そのものが、遺伝子を優生学的な視点でとらえる傾向を如実に反映していることが指摘された。とくに、遺伝子をめぐる言説は、そのまま血統や人種といった言葉に置き換えて、歴史的に語られてきた言説とまったく同じ言説を繰り返している恐れもある。そうした点は注意する必要があることが議論された。
また、社会の中で、そうした情報を「知る権利」だけでなく「知らない権利」も重要であることが確認された。
参考:23andMe

第4回

日時平成20年5月26日(月) 16:50~18:10
場所1号館107室
テーマ カンニングは何故いけないのか―The Honor Systemの可能性―
内容 大学などの試験において常に問題となる「カンニング(Cheating)」はなぜいけないのか。学術活動で尊重されるべき価値・原則(正直さ、正確さ、効率、客観性)に沿って検証し、また企業における倫理的価値判断の実例も紹介しながら、その非倫理性について確認をした。その後、講師より、「大学などの機関運営を信頼、名誉、正直などの価値を共同体の構成員が共有することにより、自主的自律的に行う「The Honor System」の紹介がなされ、参加者によって、当該システムの本学における運用の可否について討論がなされた。参加者19名中3名を除き、その運用はできないとの意見であった。
可とする意見の要点
  • まずは、行ってみることが肝心
  • ゴールをどこに置くかによるが可能
  • 一人一人が誇れる名誉とは何かを考えられるなら可能
不可とする意見
  • 現実にカンニングが行われている現状を見れば無理
  • 処罰が違っていた場合の当該学生の名誉挽回ができない
  • ひとり一人価値観が異なる
など

第3回

日時平成20年5月12日(月) 16:50~18:20
場所1号館107室
テーマ プリンスホテルと日教組
内容 グランドプリンスホテル新高輪が、日本教職員組合の全体集会の予約を一度は受け付けながら最終的に拒否した事例について、支配人の立場であればどのように対処すべきであるかグループ討論をおこなった。重視すべきステークホルダーとしては、日教組関係者、他の宿泊客、地域住民、周辺学校の受験生などがあげられ、そこに憲法、法律なども関係している。そこでは、どのような判断をおこなっても、イメージの低下を避けることが難しい状況のように考えられた。そのような状況下で、ホテル側はどれほどどのような責任を負うのかが主な争点となった。また、それぞれの組織の政治的状況にも言及しながら、問題の難しさを浮き彫りにしていった。

第2回

日時平成20年4月28日(月) 16:50~18:30
場所1号館303室
テーマ ペットボトルとレジ袋から環境倫理を考える
内容 映画「不都合な真実」を手がかりにして、環境問題を考えた。ゴア氏の活動は、地球温暖化について世界の注目を集めることに大きく貢献した。しかし、そのわかりやすい講演の内容にはいろいろな問題が潜んでいることもまた指摘される。日本でも環境問題はますます注目を集め、マスコミなどで取り上げられる機会が多くなっている。しかし、そこで取り上げられる「環境対策」とはどれほど実効的であるのだろうか。新しいマーケットの開拓ではないのか。たとえば、ハイブリッド車や生活家電を省エネ対策で買い換えましょうといった主張である。環境問題が経済やそのグローバリゼーションと大きくリンクしながら展開していることもあり、こうした事例の判読は微妙である。そして、そこで「倫理」や「モラル」を持ち出して環境問題を語ることは、むしろ消費者の反論の機会を封じ、判断を鈍らせることにもつながりかねない。環境問題は複合的(科学技術だけでなく社会的にも)であり、それを生み出す社会のシステムを評価することも容易ではないが、批判的に読み解く視点が必要であることを確認した。

第1回

日時平成20年4月14日(月) 16:50~18:10
場所1号館303室
テーマ CDのデジタル著作権管理に関するケース討論
内容 近年の著作権管理についての議論の動向を紹介したあと、2005年におこったDRMのrootkit問題を題材としたケース討論をおこなった。レコード会社からの要求は一見妥当なものでありながら、その要求をソフトウェア開発会社で実際に製品化していく過程ではさまざまなジレンマが生じることを確認し、それが技術だけではなかなか解決しない問題であることを知った。そして、そうした問題に対処していくためには、社会の動向を知り、それに社会的な手続きとしていく必要があることを学んだ。最終的には近年の日本の「社会の判断」の在り方そのものを判断していくことの重要性が確認された。

第3回

日時平成19年12月10日(月) 16:45~18:15
場所1号館303室
テーマ 船場吉兆の食品偽装問題
内容 船場吉兆が起こした不適正表示などの食品偽装問題を、具体的にパート従業員の視点からはじめて問題解決の糸口をさぐった。また、収束の気配も見せずに社会問題化する食品偽装問題全体についても、なぜこれほど拡大しているのか、そして何が本質的に問題であるのか、法律や経営、社会学などの視点を交えながら議論をおこなった。

第2回

日時平成19年11月14日(水) 16:45~18:15
場所1号館303室
テーマ 「臓器移植法」について
内容 1997年に3年を目処に見直すとして施行されながら、何の変更もなく法施行後10年が過ぎた臓器移植法をについて、その問題の難しさを倫理的な観点などから考察した。

第1回

日時平成19年10月24日(水) 16:45~18:15
場所1号館303室
テーマ JTの意見書「がん対策推進基本計画」に喫煙者率引き下げの数値目標を盛り込むことに対する日本たばこ産業株式会社の考えについて」をめぐって
内容 今年4月25日にJTから出された「がん対策推進基本計画」に喫煙者率引き下げの数値目標を盛り込むことに対する日本たばこ産業株式会社の考えについて」という意見書について議論をおこなった。
数値目標設定というのは、対策に実効性を持たせるためにとても大切なことだが、さまざまな思惑が絡んでいて、なかなか難しい問題になる。これは、地球温暖化の温室効果ガスの排出削減の議論と同じような構造を持っており、他の問題とも比較して多角的な考察ができる。
なお、2007年の「全国たばこ喫煙者率調査」結果では、全体として喫煙率は減少しているが、女性の喫煙率は12.4%から12.7%に増加している。
こうした背景も踏まえて、JTに勤める技術者の視点から、あるいはさらに包括的な視点から問題の考察をおこなった。
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