所長挨拶
宮里 心一 教授
KIT×KAJIMA 3D Printing Labは、セメント系3Dプリンティングおよびカーボンニュートラルに向けた建設材料に関する技術開発を、金沢工業大学と鹿島建設株式会社が協同で行うと共に、行政とも連携し社会実装に向けた実証試験を実施すべく、令和4年度に開設されました。
近年の産業プロセスのデジタル化の潮流の例にもれず、建設業においても設計・施工へデジタル化の波が押し寄せてきてます。これにより、従来のプロセス自体が変わり、建設業の高度化が期待できます。その一翼を担う技術として3Dプリンタが考えられます。この3Dプリンタは既に各産業にて導入・実装されていますが、建設業への適用に関しては未だ開発途上の域を出ていません。
また、地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択されました。これにより「2050年カーボンニュートラル」に向け、世界で187の国と地域が革新的技術を用いた社会実装を進めています。ここで、水の次に使用量の多いコンクリートは、二酸化炭素を吸収し固定する性質があり、従来は内部鉄筋の腐食を誘発する劣化現象として捉えられていました。しかしながら、この化学反応を有効活用すれば、セメント系材料は大気中の炭素量の減少に寄与するグリーンな材料としての活用が期待できます。
これらより、多様な3Dプリントを開発してきた金沢工業大学と、コンクリートに二酸化炭素を吸収・固定する技術を開発してきた鹿島建設株式会社は、高い意匠性やCO2吸収性を満足する設計、および少人数で部材を造形する施工の開発に、協同で取り組むことになりました。また、それが安全・安心・快適な市民生活に寄与し、また北陸の魅力を補強する観光資源として利用されることを期待し、地元の自治体と連携しながら、ユニークな形状・機能を特長とする、カーボンネガティブ3Dプリント部材の創出を目指しています。
これらの活動を行う共創拠点であるKIT×KAJIMA 3D Printing Labには、ロボットアーム式3Dプリンタを設置し、複数の学科や課程に属する教員が、鹿島建設株式会社の本社ならびに技術研究所の土木・建築・機電の技術者と共にプロジェクトを推進してます。また各研究室に所属する学生は、学部・学科・専攻の垣根を越えて協同しながら社会実装研究に携わり、まさに「自ら考え行動する技術者」として活動しています。このように、若い学生から経験豊富な技術者・教員までの異なる世代による、土木・建築・機械・ロボット・電気・化学・心理・数理などの異分野共創の下で、産学協同による技術革新に取り組んでいます。産学官が一体となって推進するLabとして、乞うご期待を頂ければ幸いです。