医工融合技術研究所

Integrated Technology Research Center of Medical Science and Engineering

平成28年度医工融合技術研究所の活動報告

平成28年度の主な活動

  1. 「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」の開催(第10回/第11回/第12回)
  2. 医工連携研究フォーラムの開催
  3. 医工連携オナーズプログラム参加学生による成果のポスター発表会
  4. 見学会の開催(生体に使用する機械器具製造メーカ)
  5. 次年度への展開

1. 「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」の開催 (3回開催)


第10回「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」


■日時: 平成28年6月17日(金) 14:00~17:05

■場所:  金沢工業大学 扇が丘キャンパス 21号館503号室 (石川県野々市市扇が丘7-1)

■参加者数: 55名(メンバーシップ企業、研究所員、学生他)

■プログラム:
開会挨拶 金沢工業大学 医工融合技術研究所 所長 新谷 一博

講演1
「人工膝関節(TKA)の良好な長期臨床成績のために」

Zimmer Biomet合同会社 リコン&サージカル事業部 マーケティングKnee グループマネージャー 堀 政弘 氏

 「人工膝関節(TKA)の良好な長期臨床成績のために」と題して,人工骨の世界最大メーカであるZimmer Biomet合同会社 リコン&サージカル事業部 マーケティングKneeグループマネージャーの堀 政弘 氏から講演いただいた.内容についてはTKHは変形膝関節症や関節リウマチ等で変形した部位を取り除き人工物へ置換する,現在国内では8万例行われているものであり,アライメントの矯正やポリエチレン摩耗に対しての問題点が報告された.また,この問題点を解決するためにビタミンE添加やメルティング処理の必要性が示された.そのほか大腿骨骨切りや手術器具の説明,ポータブルナビゲーションシステムの利用による術中エラーの減少なども報告された.


講演2
「人工膝関節置換術におけるインプラント材料および周辺機器について~現状および今後の展望~」

金沢医科大学 医学部 整形外科学 杉森 端三 准教授

 「金沢医科大学 医学部 整形外科学 杉森端三 准教授より「人工膝関節置換術におけるインプラント材料および周辺機器について ~現状および今後の展望~」について講演いただいた.変形性膝関節症は加齢により発症し,患者数は700万人にのぼり,毎年90万人が発症しているとの解説があった.そのうち人工膝関節に置換例は年間8万件であるが,問題点としてはルーズニング,ポリエチレンインサートの摩耗,感染,ストレスシールディング,金属アレルギーなどが起こることであることを実例にもとづいて説明された.この問題点を解決するための方策としては,更なる密な医工連携が必要であるとのまとめが行われた.


講演3
「SQUID脊磁計の開発」

金沢工業大学 先端電子応用技術研究所 足立 善昭 教授

 「金沢工業大学 先端電子応用技術研究所,足立善昭教授より講演いただいた.内容は脊磁計の開発経緯,生体磁場計測の原理,そして実用化に向けた最近の研究開発事例として,脊髄誘発磁場計測により非侵襲な機能診断ができることや障害部位診断が可能となることが示された.以上の講演より医療製造関連企業やこれからその方向を目指す企業から活発な質問が投げかけられ,興味の深さを感じ取ることができた.


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図1 第10回研究会での講師各氏


第11回「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」


■日時: 平成28年9月2日(金) 14:00~16:45

■場所:  金沢工業大学 扇が丘キャンパス 21号館503号室 (石川県野々市市扇が丘7-1)

■参加者数: 52名(メンバーシップ企業、研究所員、学生他)

■プログラム/内容:
開会挨拶 金沢工業大学 医工融合技術研究所 所長 新谷 一博

ワーキングメンバーからの事例報告
「ものづくりから見た医工連携 ―これからの特定医療従事者に役立つものづくり―」

石川可鍛製鉄 株式会社 営業課・技術・品質担当 取締役 桝井 伸栄 氏

 ワーキンググループからの事例報告として,石川可鍛製鉄 株式会社 営業課・技術・品質担当取締役,桝井伸栄氏から,「ものづくりから見た医工連携 ―これからの特定医療従事者に役立つものづくり―」と題して講演が行われた.はじめに,医療従事者教育用シミュレータ開発ワーキンググループの説明に始まり,このシミュレータがなぜ必要なのか.開発にあたってのプロセス説明があった.また,成果物として作成した褥瘡モデルの展示が行われ,日本創傷オストミー失禁管理学会でこのモデルを使用してハンズオン教育を行ったことも報告された.


講演1
「ものづくり中小企業が挑戦する医療機器開発」

株式会社 クロスエフェクト 代表取締役 竹田 正俊 氏

 株式会社 クロスエフェクト代表取締役,竹田正俊氏から講演いただいた.内容は臓器シミュレータの開発に関するものであり,心臓疾患患者を対象に,術前シミュレーションとして使う超軟質素材を使ったシミュレータ開発の現状について話され,これにより若手医師の手技能力向上を図り,患者に負担の少ない手術を達成していることを実例を交えて講演いただいた.


講演2
「鎖肛根治術における問題点と手術前シミュレーションの提案」

金沢医科大学 医学部 小児外科学 河野 美 教授

 金沢医科大学医学部,小児外科学,河野美幸教授から講演いただいた.最初に解剖生理学的観点から人体構造の説明があったのち,鎖肛の異常診断,鎖肛の分類が示され,低位型治療,高位型治療の各手法が示された後,鎖肛根治術の問題点として術前シミュレーシヨンが必要であることが示された.また,各講演後には時間を延長して活発な討論が行われた.



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図2 第11回研究会での講師各氏


第12回「医工融合技術を生かした医療機器の創製に関する研究会」


■日時: 平成28年11月18日(金) 14:00~17:10

■場所:  金沢工業大学 扇が丘キャンパス 21号館503号室 (石川県野々市市扇が丘7-1)

■参加者数: 48名(メンバーシップ企業、研究所員、学生他)

■プログラム/内容:
開会挨拶 金沢工業大学 医工融合技術研究所 所長 新谷 一博

講演1
「3D技術が切り拓く医用生体工学の未来」

マテリアライズジャパン株式会社 メディカル・グループ アカウントマネージャー 渡邊 亜実 氏

 マテリアライズジャパン株式会社 メディカル・グループ,アカウントマネージャー,渡邊亜実氏から講演いただいた.マテリアライズ社では有限要素解析や流体解析をするために必要なモデル化ソフトを扱っており,高品位なシミュレーションモデルが作成できることや,CTやMRIなどの画像を3Dモデル化し,材料特性を付加することでFEA/CFDアプリケーションで使用可能なファイルとして出力できることなどが説明された.また,近年では多孔質体の構造解析も可能となり,バイオメディカル部門へ応用されていることも可能となっていることが紹介された.


講演2
「車いす開発における課題と将来性」

三貴ホールディングス株式会社 製造本部 国内生産支援部 課長
株式会社ミキ 取締役 兼 製造部課長 八谷 昌起 氏
三貴ホールディングス株式会社 技術部 主任 紙屋 潤一郎 氏

 車いす製造開発メーカである,三貴ホールディングス株式会社 製造本部 国内生産支援部 課長,八谷昌起氏と三貴ホールディングス株式会社 技術部 主任    紙屋 潤一郎 氏より「車いす開発における課題と将来性」についての講演をいただいた.
 まず,介護用やスポーツ向けの市場から見た車いすの分類に始まり,補装具や低半径回転機能など種々の機能を付加したものが開発されていることが報告された.また,車いすの安全性との観点から,人体の部位に合った支えや除圧が必要なこと,障碍者の安定的サポートができること,環境サイズに合った形状が必要なことなどが示された.最後に車いすに対しても,家具調的コラボが必要であることなど,車いす開発に対する課題と将来性についても紹介された.


講演3
「高齢者の転倒予防―足部機能と転倒の関係および足部機能評価の課題―」

金沢医科大学 看護学部 老年看護学 平松 知子 教授

 金沢医科大学,看護学部・老年看護学,平松 知子教授より講演いただいた.
高齢者の転倒による死因や,要介護となるリスクは高く,転倒予防による高齢者のQOL向上や健康寿命延長の重要性が叫ばれている.高齢者の立位姿勢の測定や足底圧分布の測定から,高齢者は立位姿勢における足底分布の特徴が転倒との関係を説明頂いた.また,課題としては転倒に関連する足部機能及び評価指標の明確化が必要であることが示された.

以上講演は,高齢者増加が見込まれる昨今において,セルフケア能力向上に関する問題点提起であるが,機械系産業とのコラボレーションによりこれら問題点の改善が望まれている.


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図3 第12回研究会での講師各氏

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図4 第12回研究会の様子



2. 第8回医工連携研究フォーラムの開催


■日時: 平成29年2月25日
■開催場所:  金沢工業大学 7201室
■参加者数: 98名

■基調講演: 「糖尿病という病気はなぜ怖い?どうしたら怖くなくなる?」
金沢大学 同附属病院担当理事 副学長 山本 博 氏

 上記演題で金沢大学 山本 博 副学長より基調講演をいただいた.現在の日本において男性6人に1人,女性では11人に1人と多くの方が糖尿病と診断されています.この病気は大変怖く,罹患すると十数年も寿命を縮めることが明らかとなっています.この講演では3大合併症として知られる網膜症,腎症,神経症なども血管障害から発症し,失明,腎不全,足壊疽などに進展することや,ブドウ糖が影響して血管細胞に糖化産物が生ずるために血管障害が生ずることが説明された.また,これの予防としては運動療法や糖の吸収抑制薬の投与,インスリンの分泌の促進などがあることが示された.このテーマについては会場聴衆からの興味が高く,質問時間を超過しての質疑応答が行われた.


■成果報告会

【研究成果報告】

「高齢者にやさしい爪カッタの開発」
加藤秀治,平野徳之,新谷一博(金沢工大),小泉由美(金沢医科大)


【研究成果報告】

「フッ素添加型DLC被膜の形成が抗菌効果に及ぼす影響」
川原範夫,川口真史,米澤克隆(金沢医科大),小田 忍,新谷一博(金沢工大)


【研究成果報告】

「 a-C:H DLC被膜を施した人工足場材の高骨伝導化についての一考察」
小林卓也,新谷一博(金沢工大),川原範夫,兼氏 歩,石垣靖人,中村有香(金沢医科大)


【製品化事例紹介】

「ストーマ(人工肛門・膀胱)保有者のスキンケア支援システムの開発」
紺家千津子(金沢医科大)


【新規シーズ提案】

「細胞培養加工施設から産まれるシーズ、ニーズ」
石垣靖人(金沢医科大)


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図5 金沢工業大学 大澤学長のあいさつ

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図6 金沢医科大学 神田学長のあいさつ


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図7 山本金沢大学副学長による基調講演の様子


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図8 研究フォーラムにおける各成果報告の様子


3. 医工連携オナーズプログラム参加学生による成果のポスター発表会


以下のワーキンググループのテーマについてポスター発表を行った.

  1. 高齢者にやさしい爪カッタの開発
    加藤秀教授,小泉金沢医科大准教授
    3ER1塚本淳基,2EM1今野太郎,2EM1小坂康貴,2EM1坂井克彦
  2. 血圧の新規測定法の提案と機器の開発
    森本教授,紺家金沢医科大教授
    4EM2中川研介,4EM2石橋拓人,2EM4水野竜也,2EM4秋保裕矢
  3. 糖尿病患者における定期注射管理ボックスの開発
    高野教授,紺家金沢医科大教授
  4. 耳たぶを利用した血糖値の自己測定装置の開発
    高野教授,紺家金沢医科大教授
  5. カプセル内視鏡の開発(非常脱出機構の提案)
    高野教授,中村医科大講師
    2EM3杉崎祐人,2EM4一木巧太郎,2EM4丹保明日斗
  6. 生体機能に即した静脈注射シミュレータの開発
    新谷教授,紺家金沢医科大教授
    2EM1西川穂波,2EM籔崎有美恵
  7. 生体にやさしいバイポーラ型内視鏡鉗子の開発
    新谷教授,中村金沢医科大講師
    4EM2上木優人,1M1唐澤勇気
  8. 手術用シミュレータの開発(動脈瘤モデルの開発)
    新谷教授,小畑金沢医科大講師
    4EM1庄司悠真,3EM4浅井健児,3EM3三納功巳,2EM3大石拓矢,2EM3 出倉巧輝,2EM4魚津隆介
  9. 菌体表面の疎水性とバイオフィルム形成量に関する研究
    小田教授,川口金沢医科大講師
    4EM1吉田 杏
  10. 骨の早期固定を対象とした骨伝導能特性に関する研究
    新谷教授,兼氏金沢医科大教授,石垣金沢医科大教授
    3EM1中井 遥,1M1瀬川 歩
  11. 骨欠損部へのセラミックス系足場材の適用に関する研究
    新谷教授,川原金沢医科大教授,米澤金沢医科大医師
    1M1小松宏行
  12. 転落時けが防止用器具の開発(転倒・転落しても怪我しない床の開発)
    宮下准教授,赤井富山大講師
    4EM1瀧本桃子,3EM1山田のどか
  13. 患者移動用補助具の開発
    田中教授,金沢医科大
    3EM4坂井謙太,3EM4矢田真也
  14. 非侵襲型頭蓋内圧モニタリングシステムの開発
    田中教授,赤井富山大講師
    3EM4丸茂宏貴,3EM1松井仁,3EM1土濃塚紳,3EM4藤森敦志
  15. ミトン装着を廃止するための新型医療機器の開発
    瀬川准教授,伊藤金沢医科大
    2EM4夏目大地,2EM4山本浩司
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図9 オナーズプログラム学生によるポスタ展示の様子

4. 見学会の開催(生体に使用する機械器具製造メーカ)


 医工連携オナーズプログラム参加学生,担当教員を対象に,8月5日にシャルマン(株)を訪れ,眼鏡と手術用器具の製造現場の見学を行った.参加者にとっては通常シークレットとなっている加工精度やその加工工程などがオープンにされ,今後身に付けるであろう高等工学技術の知識付与に有意義であったと思われる.

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図10 見学会での様子

5. 次年度への展開


 次年度本研究会活動は,一般的に公表されることの少ない臨床現場での問題点を,金沢医科大学教授陣から提起していただき,これをメンバーシップ参加企業と金沢工業大学教授陣そして金沢医科大学教授間のワーキンググループにより,解決策の提起や新規製品の開発を行うことや,このワーキンググループのさらなる活性化に向けた取り組みを行ってゆくことを目標としている.

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