コラム KAZU'S VIEW
2011年07月
なでしこジャパンは日本を変えるか
6月28日から7月18日までドイツで第6回FIFA女子ワールドカップドイツ2011が開催されたが、日本代表の「なでしこジャパン」がワールドチャンピオンに輝いた。3月の東日本大震災で打ちひしがれた日本人の心に大きな励ましと、勇気そして感動を与えてくれた。最終日の決勝は世界ランキング1位のアメリカ戦であった。Alexandra Morgan(アレックス・モーガン)の先取点に対し、宮間あや選手が同点とし、延長戦にもつれ込んだ。延長戦開始早々、Abby Wambach(アビー・ワンバック)が2得点目を入れ、再び劣勢になった。しまし、延長戦終了3分前に宮間選手のコーナーキックに澤穂希選手が合わせたゴールで同点に追いついた。そのプレーは奇跡的かつ、芸術的で神がかり的絶妙のセットプレーであった。澤選手の蹴ったボールはゴールに向かって左から右方向に進んだが、アメリカ選手に1度当たって方向が左側に変わったため、ゴールキーパーHope Solo(ホープ・ソロ)の移動方向とは逆方向に進み、ゴールデングローブ賞受賞キーパーの手から遠のいてゴールに吸い込まれた。結局、試合は2対2のままでPK戦に入った。そして、ゴールキーパーの海堀あゆみ選手の好守もあり、3対1で日本は優勝した。世界ランキング1位のアメリカを世界ランキング4位の日本が破った試合であった。参加16カ国が4つのグループに分かれ、各グループの上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進む。グループ分けの際のシード国は世界ランキング1位のアメリカ、前回優勝国のドイツ、ブラジルそして日本であった。日本はBグループとなり、グループ戦は2勝1敗(対イングラド戦で1敗)でイングランドに次いで2位で決勝トーナメント戦に進んだ。準々決勝では前回優勝国のドイツを破り、準決勝ではスウェーデンに勝って、決勝へと進んだ。アメリカ戦の内容を見ると、シュート数が日本14に対しアメリカは27、コーナーキック数4対8,ボールキープ率53対47であった。ボールキープ率はわずかに勝っているものの、シュート数およびコーナーキック数は米国が圧倒的に多い。その結果が同点であったということは、少ないチャンスを有効に得点に結びつけた、粘りと忍耐のゲーム運びであったと思われる。その結果、大会最優秀選手ゴールデンボール、得点王のゴールデンブーツを澤キャプテンが受賞、また、日本チームはフェアプレー賞を、オールスターチームにはGPの海堀選手、MFに宮間、大野、澤の3選手が選ばれた。 そもそも「なでしこ」とは花の名前であることは多くの人が知っている。しかも、か弱き女性を象徴する言葉である。しかし、サッカーという競技は元々男のスポーツで、ボールの代わりに人骨を使った時代もあったというスポーツである。男子サッカーがワールドカップでベスト8に入る夢が潰えた後に、女子サッカーチームがワールドカップで優勝したという事実は、想定外であったと多くの日本の男は思っていたではないか。決勝トーナメント以前の試合には殆ど関心が無く、スポーツニュースを見過ごしていたが、決勝戦出場の可能性が出てきた時期から注目し出した自分が少々恥ずかしい。澤選手の名前と顔は以前から知っていたが、その他のメンバーは失礼ながら初めて聞く名前が殆どであった。しかし、彼女らはサッカー留学をし、アメリカチームにも多くの友人がいたことを聞くに連れ、改めてその努力の積み重ねの凄さを知らされた。PK戦で日本が優勝を決めたそのすぐ後で、日本チームが喜びに沸き返る中で、かつてのチームメートの検討を祝福する行動に出た日本チームメンバーがいたと言うことを聞いた。好敵手に賞賛を送る、正に武士道の心と行動を日本女性が行った事に、共感と敬意を払わざるを得ない今の日本に、「女無しでは、日の明けぬ国、天照大神(アマテラスオオミカミ)の作りし国を改めて見知らされた気がした。 「なでしこ」という言葉は「大和撫子(ヤマトナデシコ)」を連想させる。「大和(ヤマト)」とは日本の異名だが、大倭・大日本(オオヤマト)という名称を指す。大和朝廷時代にその政権が五畿(山城国・大和国・河内国・和泉国・摂津国)の一つ大和(現在の奈良県)に在ったことに由来するらしい。「撫子(ナデシコ)」とは撫(ナ)でるように可愛がっている子、愛しい子、愛児という意味をもつ(wikipedia)。また、植物の「なでしこ」は秋の七草の1つでもある。秋の次は冬が来る。秋に続いて冬が再び我が国に来襲しない事を心から願うばかりである。なでしこジャパンの活躍が小春日和(コハルビヨリ)ち止まらずに、日の当たる国となるようにと願うばかりである。