コラム KAZU'S VIEW
2010年04月
パンツオムツの登場は今の日本人のオムツ卒業年齢を二十歳過ぎと考える機会にならないか?
今日、オムツは紙おむつの時代であり、パンツオムツというモノも現れ、オムツとパンツの境目がなくなりつつある。 オムツ離れは人間の成長段階として象徴的なモノである。「まだまだオムツがとれない。」という言葉には「1人前で 無い」。「自立した人間になっていない。」というような意味で使われることがある。このコラムのタイトルの「オム ツ卒業」にもその意味合いがある。
以下の文章はある日本の紙オムツメーカがパンツオムツ製品の紹介として使っているものの1部である(http://www.k ao.co.jp/merries/gda/index.html)。「特にこだわったのは、『のびのび動きやすいこと』と、『気持ち良いはきご こち』です。好奇心いっぱいで、思うままに動きまわりたい時期に穿(ハ)くものだからその気持ちに応えられるよう な設計を追及しようと思ったんです。おむつを『衣服』としてとらえ、赤ちゃんの体型や骨格にあわせて、お腹まわり のしめつけを従来の半分にし、お腹が膨れても、おむつのしめつけが気にならずに過ごせるようにしました。一方で、 気持ちよく動きまわれるように足まわりをしめつけない、どんな姿勢でも動きやすい、足が動かしやすいという「しめ つけない」と「ズリ落ちない」を両立させた。これによって、お子さん自身の発達の可能性を最大限に引き伸ばすこと ができる。そう信じて・・・。この記述を見る限り、製品開発におけるユーザ(赤ちゃん)ニーズ?の分析から物理的 排反事象である、締め付けと自由(締め付けない)の両立を技術的に解決した成果がうかがえる。しかし、この工夫や 努力によってもたらされた快適さは排尿や排便という行為の自立化を遅らせ、結果的にオムツ離れを遅らせることにな らないのだろうか。赤ちゃんは1人の人間になる前(母親から生理的に独立する)の期間であり、「三つ子の魂、百ま でも」のことわざと通り、その人間の人生の大部分を左右する重要な時であるとも言われる。まさにこのパンツオムツ の製品開発は人材育成にかかわる放任と躾(シツケ)の2つの問題を連想させる。
今年は国勢調査があるが、前回の調査は2000年(平成12年)だった。その時の日本の総人口は約1億2693万人、65才以 上の人口が約2204万人で日本の総人口に占める高齢者(65才以上)人口の割合は17.4%。その際に推定された2010年(平成 22年)の推計人口は総人口1億2747万人(54万人増)、高齢者人口は2874万人(670万人増)で総人口に占める割合は22. 5%(5%増)になっている。5人に1人以上が高齢者になる。世界的にみると2003年(平成15年)に19%で日本はイタリア を抜いている。なお、総人口のピークは5年間隔で2005年(平成17年)の1億2771万人となっている。これを背景に日 本人の平均余命(寿命)は1955年に65.7才だったものが、2000年に81.2才(男77.7才、女84.6才)、2009年で83.0才( 男79.6才、女86.4才)と、日本では男女共に人生80年の時代を迎えている。これを受け、高齢者向けパンツオムツの 製品化もされている。
オムツとパンツの境目がますます分かりにくくなって来た時代に、人生80年の人生設計を考えると第2のパンツオム ツ問題、つまり、精神的な意味のパンツオムツを真剣に考える時期に来ているのではないか。民主党政権がことも手当 政策を打ち出した。対象は中学生までの子供を持つ家庭が対象である。この予算規模は2兆3000億円とされている 。これは第1次パンツオムツ問題に該当しよう。これに対し第2次のパンツオムツ問題は国際的日本人の育成として国 家が成人式年代世代を対象に1人100万円と1年間という時間を提供し、これを使って海外に旅をしてもらい、ほん とに日本に住みたい人が日本に戻って来る、というような中国の海外人材呼び戻し政策である「海亀政策」と「ツール ドフランス(2008年6月コラム)」に類した政策はどうであろうか。2010年に成人式を迎えた人は約127万人、1人1 00万円で総額1兆3000億円程度の投資は新しい日本の人材投資とてしては安いのではないか。2009年3月のコラ ム「日本人に大人になって欲しい-エマニュエル・トッド氏の提言-」で言及した「大人」の意味は、彼の家族構造に立 脚した文化・経済形成の認識論から導出された日本人観、すなわち、直系家族を基本とし、識字率が高いという国際優 位性を活かし、真の国際化視点での大人化を提言するものであった。家庭レベルのオムツパンツに対し、国家レベルの オムツパンツのはきかえ問題は二十歳頃の年齢であり、大学進学率が2009年で短大を除き50.2%を超えた日本では、こ れが大学の社会的使命になっているのではないか。社会人基礎力や学士力といった人間形成目標の議論はこのような社 会的背景の認識をしたうえでなされる必要は無いか。2009年11月のコラムで福沢諭吉の学問のススメの一節にある「一 身独立して一国独立する。」の必要性を取り上げたが、改めて150年ほど前に遡り、我々の諸先輩が「パンツオムツ 」を見たとしたらどのような感想を持つか、聞いてみたい衝動に駆られた。