コラム KAZU'S VIEW
2009年10月
女性だけの音楽番組「美のメロデイー」に見る音楽芸術の感動
「美のメロディー・音楽の女神たち」という番組を見た。ものまね芸人の清水ミチコさんが司会し、川井郁子(ヴァイオリニスト)、村治佳織(ギター奏者)、小林香織(サックス奏者)、上原ひとみ(ジャズピアニスト)、LOVE(シンガーソングライター)、上松美香(アルバ奏者)、 平原綾香などといったミュージシャンが楽曲演奏や歌唱を行うものであった。
川井郁子さんは大阪芸大教授職にあって、1998年には根岸吉太郎監督の映画「絆;きずな」でヴァイオリニストの馬渕薫役として出演し、女優業もこなすマルチタレントである。村治佳織さんは父親に3才からギターを学び、16歳でデビュー以来、世界の第一線で活躍しているギタリスト。小林香織さんは0才からピアノを始め、キーボード、フルート、クラシックサックス、ジャズサックスと演奏楽器の幅を広げて来ている。上原ひとみさんは6才でピアノを学び、アメリカ留学後、2004年の日本ゴールドディスク大賞でジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞といった経歴を持つ。LOVEさんはYOKO ONO、Joni Mitchell、間寛平、手塚治虫を敬愛するユニークなジャズシンガーで、今年8月にオーロラ中継システムの構築に成功した古賀祐三氏と「もしも僕たちの街にオーロラが現れたら・・」で幻想的なオーロラをバックに楽曲をインターネット中継している。上松美香さんは12歳の頃、母親の影響でアルパ(別名ラテンハープ、インディアンハープ)に興味を持ち、習い始め、1998年にパラグアイの音楽祭「フェスティバル・デ・タクアレ」で日本人初のアルパ奏者に選ばれ特別賞を受賞した。平原綾香さんは今年の2月のコラムでも取り上げたがシンガーソングライター、サックス奏者である。以上のようにこのメンバーは今、世界を舞台に音楽芸術を通じて新たな価値づくりの活動を実践している先端女性達である。
芸術家はその個性の違いが創造性への原動力となるので、他の人と如何に異なるかの方向性を持つ力が必要ではないか。その個性と個性のぶつかり合いが音楽を通じて一体化する感じを受け手が覚えたとき、音楽の送り手と受け手が共に感動する、音楽による共感性が生じるのではないか。その意味で、文学、絵画、彫刻、映画などの芸術活動の結果としての作品鑑賞と違い、演奏(歌唱も含む)という芸術活動はその創造プロセスを鑑賞者と共有する点で送り手と受け手が一体化する点に特徴があるのではないか。この9月にビートルズのリ・メイク版が出たが、多分、彼らがスタジアムロックといわれる球場などを使って大観衆の中で演奏する形式の走りであったろう。スタジアムロックといわれる音楽は1980年代に入ってレコードの売り上げよりも、野球場やサッカー場などの巨大なスタジアムを会場とするライブ形式のロック音楽の形式でイギリスのクイーンやアメリカのブルース・スプリングスティーンやポリスといったバンドが成功例として上げられている。昨年の11月のコラムでサザンオールスターズをとりあげた際にも触れたが、多くの人間の集まる場で個人が人間の本性に基づく自由を求める場を同時に持ち合わせる場が、この一体感なのかもしれない。日頃、カラオケを通じて学生や海外の友人とコミュニケーションを楽しんでいるが、その経験を通じ、音楽が最も強力なコミュニケーション手段であると思っている根拠はその当たりにある。