コラム KAZU'S VIEW

2009年09月

鳩山政権の可能性

8月末に行われた総選挙で民主党の圧勝により国民の自主的選択により政権交代が行われた。選べる自由の権利を行使した以上、その結果の責任は国民1人1人が持たなければならなくなった。これを受け、9月に鳩山政権がスタートした。多分、4年後にその結果の一部は検証されることになろう。鳩山首相のマネジメントを見守りたい。
第93代内閣総理大臣鳩山由紀夫氏は日本の総理大臣の中で2番目の理系出身者だそうだ。最初の理系出身総理は田中角栄氏であり、その出身は土木工学になる。鳩山首相は東京大学工学部応用物理計数工学科を卒業後、スタンフォード大学の博士課程でオペレーションズ・リサーチを専攻し、帰国して大学教員となった。つまり、経営工学が出身となる。大学教員から政治家へ転身する際のテーマは「政治を科学する」であったという。衆議院選当選後、田中派に属した。経営工学は多くの工学系が扱う固有技術(機械工学、電子工学、情報工学といったモノづくりの技術)とは異なる管理技術(組織、業務プロセス、制度、プロジェクトなどを扱う技術)を扱う。田中角栄氏の専門の土木工学も工事管理、施工管理といった分野では労務管理、原価管理、日程管理といったプロジェクト管理技術が含まれる点で2人の共通点が見いだせる。
日本最初とされる理系出身総理の田中角栄氏はその雄弁さで高名であるが、子供時代はどもりだったらしい。どもりを心配したおやごさんが浪曲を学ばせたという。その総理時代の業績は中華人民共和国を訪問し、日中国交正常化を実現させた。野党と世論の猛反発を浴びて撤回したが、 小選挙区導入(小選挙区比例代表並立制)を初めて提案した。ソビエト連邦を訪問し、北方領土問題に対し「両国間にある未解決問題の中に北方四島の問題が含まれる」という事を確認する日ソ共同声明を発表した。中東戦争勃発に際し、日本のエネルギー確保策を講じると同時に需要抑制・省エネルギー政策へ転換し、電源開発促進税法等電源三法を成立させ原子力発電への補助金策などを実施した。今日、エコカー、エコポイントなどが話題になっているが、いわゆる省資源化の課題について40年前にその打開策を講じている。
二人目の理系出身首相である鳩山由紀夫氏に多くの期待が寄せられている。そのスローガンは「コンクリートから人へ」である。「コンクリート」は公共事業を意味し、物的価値基準の国づくりを意味しているものと考えられる。これは日本列島改造論を掲げた田中角栄氏を象徴している。一方、「人」は友愛に繋がり、「ありたい姿」としての心的価値基準に基づく国創りを意味しているように思われる。今年のNHK大河ドラマは直江兼続(なおえ かねつぐ)が主人公であり、彼が掲げる「愛」に基づく国づくりにも重なる。しかし、その具体的ビジョンとしての4年後の「なりたい姿」は必ずしも明示されていないのではないか。

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