コラム KAZU'S VIEW
2009年07月
塚本康京都府大教授は第二のムツゴロウ先生か?
今年初めにメキシコで豚インフルエンザ(新型インフルエンザ)の流行のニュースを見聞きして、間もなくしてそのパンデミックのWHOによるレベル6宣言と共に身近な問題になってしまった。英国のNottingham大学(University of Nottingham)がアジアにサテライトキャンパスを開いているが、その責任者をしている友人から、5月に博士論文審査委員にと依頼があり、興味あるテーマだったので気軽に承諾した。以前にタイにあるアジア工科大学(Asian Institute of Technology: AIT)という日本政府が田中角栄首相の時代に出資してできた国際大学院大学の教員をしている友人から依頼されてExternal Reviewerを2回ほどした経験もあったので、送って来られる論文を査読し、レポートするだけで済ものと高をくくっていた。しかし、イギリス流の学位審査では外部審査委員が論文申請者に直接面談で審査をしなければならないと言うことで、急遽、中国に行かざるを得なくなった。しかし、5月のゴールデンウイーク頃に所属する大学から新型インフルエンザ流行に際し、一切の海外出張は認めないという内示があり、中国行きを断念せざるを得ない状況となった。そのことを友人にメールで連絡するとリモートコンファレンスシステムがあるだろう。インターネットを使ってテレビ会議システムの要領でフェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションができるシステムで日本の企業が世界中に売り出しているものだという。そのシステムを使ってフィンランドの友人が無事審査を終了しているので、君の国で出来ないことは無いだろうということであった。早速、調べて見ると、日本ではそれを「テレビ会議システム」といい、かなり前に売り出されたが、余り好評を博さなかったようであったことを知った。学内でそのシステムの有無を調べて見たが、数台のシステムはあるものの、すべてイントラネットで使用しているため、インターネットで使用する場合にはかなり多くの手間をかける必要があると言うことであった。インフルエンザウイルスが蔓延る海外に出なくても、相手の顔をテレビモニターで見ながら、コミュニケーションができるのなら安全で、安く済むITをなぜ使えないのか疑問に思いつつ、中国行きを断念した。6月にオーストリアのウイーンに行く予定をしていた。例年、6月にヨーロッパで開催されるイノベーションマネジメントの学会参加であった。大学からはやっと海外出張禁止が解け、スローライフの楽しめるヨーロッパで息抜きできるのを楽しみに、オーストリアワインを片手にオペラやオーケストラを楽しもうと「取らぬ狸の皮算用」を決め込んでいたら、これも中止せざるを得なくなった。
大分、話が逸れてしまったが、大塚先生という人はダチョウを使って新型インフルエンザのワクチンを大量に製造する方法を開発し、これをマスクに仕込んで「抗体マスク」を開発、生産した方である。獣医学科の先生らしい。元々毒性の強い、鳥インフルエンザ用マスクを想定していたが、新たなる豚を介した新型インフルエンザ(1H1型)の大流行で再度対抗性の検証が必要なった。しかし、その検証には本物のウイルスが必要だが、その株入手が非常に難しかったらしい。医学ではなく獣医学という専門が大変興味深い。獣医というとかつての北海道での牧場が何回かテレビで紹介された、ムツゴロウ先生を連想する。とてもユニークなキャラクターの持ち主であった。この先生は本名を畑正憲(はた まさのり)といい雀士、小説家、エッセイスト、ナチュラリストと様々な顔を持つ。動物好きでも有名。その後、どのようにお暮らしか。動物を通じて人間を見ることに2人の共通点を見出すことができる。日本のIT技術はiモードを中心とした携帯電話によるネットワーク(2003年10月コラム)と電子機器技術の先端性がある。猫の額(世界の陸地面積の0.3%以下)の国で何故携帯が必要か?「物づくり立国」を標榜しながら、その一面で物づくりに苦心する人々の努力の結晶である世界最高水準の機能品質を持つ携帯端末が何故、おまけ(サービス)程度の値段で売り買いされるのか。誠に不思議な国、日本。多分、その国の人々自体がその矛盾に気づかず、その世界的価値を認識していないのかもしれない。ITを使い、非接触のコミュニケーションの技術と抗体マスクを使って、この難局を切り抜けられないか。新型インフルエンザはこの秋から再び流行の兆しが予想されている中で、一部の議論を根拠に足りないワクチン接種のための差別的施策がまかり通っている。「抗体マスク」を使わずに済むことを祈りつつ、アナログとデイジタルの微妙なバランス感を持つ国に生まれた幸せと不幸せを楽しみながら。