コラム KAZU'S VIEW
2009年02月
岩崎宏美と平原綾香の長崎でのコラボに見る家庭が未来を創る
先日テレビを見ていたら歌手の岩崎宏美さんと平川綾香さんが長崎でコラボしている番組を見て、つい引き込まれた。2人が長崎の町を並んで歩く。教会、中華街、最近出来た美術館などなど。その間に2人の歌が入る。「マドンナたちのララバイ」をコラボしていた。岩崎さんの透き通った声はかつてのものより若干落ちものの、深みのある声に対し、平原さんの独特な声と若干揺らぎ(ユラギ)を感じさせる歌い方が何とも奇妙な感動を呼び起こした。その後、2人がそれぞれソロで歌った曲で、平原さんの「朱音(アカネ)」の詩の一節に「あこがれ・・」とう表現があった。最近余り聴かない日本語であった。
2人の女性歌手と長崎の結びつきを考えてみた。長崎のイメージは出島、原爆、浦上天主堂・・・・。岩崎宏美さんのヒット曲の1つ、「聖母(マドンナ)たちのララバイ」は彼女の持ち歌「センチメンタル」と共に春のセンバツ高校野球大会の入場行進曲に選ばれているが、彼女の妹である岩崎良美さんの「青春」も選ばれている。姉妹でその歌唱曲が選ばれたケースはこれまでに無い。「聖母たちのララバイ」は山川啓介氏の作詞になるが、そのテーマは高度経済成長期の企業戦士の癒しの場をマドンナ(母)の胸としている所にあるのではないか。聖母はキリスト教、これが出島、浦上天主堂に繋がり、長崎との糸が見えて来る。ところで宏美さんは歌手以外にテレビドラマやミュージカルに出演したり、日本外務省主催の日本文化交流「ジャパン・ウイーク」で親善大使としてピラミッドとスフィンクスの前でビートルズ、フランク・シナトラ、フリオ・イグレシアスに次いで世界でも四番目にコンサートを開いたり、チェコ共和国の初代親善大使に任命されたりしてグローバルな活動をしている。一方、平原綾香さんは宏美さんの約30年後に「Jupiter(木星)」でデビューしているが、彼女と長崎の関係を調べてみると2006年に出した「虹色のアーチ」という曲は 平成13年から長崎県が推進している「ココロねっこ運動」の公式テーマソングである。この曲は綾香さんが作詞し、父親のひろし氏が作曲したものである。また、彼女の出した「今、風の中で」は2004年10月に起きた中越地震の被災者に対する応援歌であり、「星つむぎの歌」は土井隆雄宇宙飛行士が宇宙から地球に向かって流した曲として知られている。番組で聞いた「朱音(あかね)」という曲は谷村新司氏が作詞作曲したものらしい。デビュー曲のJupitorは原曲がイギリスの作曲家グスターヴ・ホルスト(Gustav Holst)の大管弦楽のための組曲『惑星』作品32の中の1つ「木星」である。この曲に吉元由美さんが作詞している。ちなみに、組曲『惑星』には地球が含まれていないが、その背景に占星術があるとされる。占星術は天動説を前提としており、地球が中心の世界観であり、星を人間的な存在として認識している面があり、彼女の曲の多くが星や宇宙をテーマにしながら人間への応援歌になっている点は、占星術と星の関係(運星)に通ずる一面を見る事ができる。
長崎県が展開する「ココロねっこ運動」とは、「子どもの心の根っこを育てるために、大人のあり方を見直す県民運動」という説明が長崎県のHPに掲載されていた。キャッチフレーズの「食事の時は家族の会話を楽しみます。家族のココロをつなぐわが家のきまりです。」に共感が持てる。40年程前の日本には食卓を囲む家庭の団欒(ダンラン)という言葉があった。おいしいものを家族みんなで分け合う場に、物を少なくともココロ(心、情)の豊かさはあったように思う。それから40年余りが過ぎ、確かに物は余りすぎる程あり、その捨てように頭を悩ます時代にはなったが、1998年から日本人の自殺者数は昨年まで連続して3万人を下らない。この現実をどう受け止めたら良いのであろうか。ソ連崩壊、アメリカの金融危機を10年以上前に予測したエマニエル・ドットというフランスの人口統計学者は幼児出生率(家庭状況を示す指標の1つ)に着目し、予測したという。正に世界の動向の先行指標が家庭にあることを示している。2人のグローバルな女性歌手は正にそのことを日本人にアピールしているのではないか。今の日本人は家庭を改めて見直す事から始めるべきではないか。あこがれの家庭と現実の家庭が1つになるように。