コラム KAZU'S VIEW
2008年01月
脱化石燃料社会の選択問題は地球経営への科学的管理法適用問題か?
いよいよ新たな12年の始まり、子年が始まった。ネズミを意味する「子(ネ)」は方角では北を意味し、時刻は午前零時、つまり、1日の始まりを意味する。これからの12年はどのような流れになるだろう。政治、経済、文化の面で日本は大きな曲がり角に来ているような気がする。これから日本はどこに向かうのだろう。アメリカの大統領戦ではアメリカ史上初の女性大統領、アフリカ系黒人大統領の選出可能性が話題を呼んでいる。色々な意味でこれまでにない大きな変革がありそうな予感がして、心なしか興奮する。
年始のテレビ番組が低炭素社会への展望をテーマにしたものが極端に多いことに驚きつつ、大きな時代の年初めの三が日の時間を楽しんだ。昨年3回海外に出かけた。6月にポーランド、7、8月にチリ、12月に台湾だった。その飛行機の移動距離は炭素排出量(カーボン・フット・プリント)に換算すれば膨大な量になろう。その排出炭素をゼロにするための(カーボン・オフセット)に要する経済的代価を計算すると空恐ろしい気持ちになる。このカーボンオフセットの具体的方法として、化石燃料社会で成功を収めた先進国がその成功の代償として先進国社会が排出した炭素量をゼロにするためのコストを支払い、これを後進国に提供して先進国が歩んだ道とは違う、低炭素社会形成の可能性を提示する方法が現在行われているようだ。脱化石燃料による低炭素社会という未来社会は持続的社会形成の1つの魅力的選択肢である。この問題を英国の経済学者が経済計算を基準とし、現時点で脱化石燃料社会への先行投資をした場合とその投資をせずに費用削減をして化石燃料社会の結末で予想される経済的損出計算をする場合の2者択一問題を解いた結果のレポートが話題を呼んでいる。
20世紀当初、同じような問題が人類に提示された。それは産業革命による社会変革の結果、資本家(ブルジョアジー)と労働者(プロレタリアート)という階級が形成され、その階級闘争が社会的問題を提示した。その解決方法として2つの問題設定がなされた。1つは2つの階級が存続する条件のもとで解決法を求めようとする問題設定。もう1つは対立する2つの存在をどちらが1つにした上で解決法を求めようとする問題設定である。前者は資本主義(自由主義)であり、後者は共産主義(平等主義)になろう。その解決法は奇妙なことにF.W.テーラーの科学的管理法を基盤としている。つまり、成行管理ではなく計画を基礎とする必然的結末を実現するための管理、つまり科学的管理である。この科学的管理を企業経営に応用したビジネスマンがヘンリー・.フォードであり、国家経営に応用したのがウラジーミル・イリイチ・レーニンであろう。レーニンは科学的管理法を熱心に研究したとされる。計画経済の発想は正に科学的管理法による国家経営ではなかったか。
20世紀初頭に生まれた科学的管理法はその世紀中に産業および国家経営に適用されその結果を残した。その結果、人類は地球が有限であり人類がなすがままに受け容れる地球がすでに無いことを実感し始めた。地球をどうすべきか、という問題に対する解答を21世紀の人類は求められている。地球環境の「ありたい姿」を人類は明らかにし、その実現のために当面の目標である「なりたい姿」を描き、「実践する姿」を考え、実行する科学的管理法を個人、企業、国家、社会が実験する場が脱炭素燃料社会選択問題になるのではないか。