コラム KAZU'S VIEW
2007年08月
チリワインはヨーロッパワインを越えられか?
7月28日から8月3日まで南米で初めてのICPR(国際経営工学会議)がチリで開催された。20時間以上の飛行時間に若干の不安を抱えながら何とかサンチャゴ空港に降り立った。空港到着40分前頃から飛行機の窓の外はアンデス山脈の白い山の端にかかる朝焼けの赤がとても印象的であった。真夏の日本から真冬の国を訪れるのは初めての経験であった。サンチャゴから西北西に120kmほど行ったバルパライソという港町が今回の会場である。この街は貿易港と海軍基地として重要な機能をチリでは有する美しい町であった。横浜や神戸と似た景色だった。南緯35度位なので日本と赤道を挟んでほぼ南北対称の位置関係にある。時差は日本と13時間ある。会議の歓迎会では民族音楽、衣装と舞踊の紹介があった。紹介された全ての踊りが男女によるものであり、中には女性が頭の上にワインの空瓶を乗せて踊るかなりバランス感覚を要するものもあった。アルゼンチン風、メキシコ風の中にポリネシア風のものもあった。非常に多様な文化を持つ国であるという印象を深くした。イースター島までは往復4日かかるとういうことで、日帰り可能な旅行としてパブロ・ネルーダ(Pablo Nerud)の別荘見学に出かけた。ネルーダはチリの国民的英雄であり、詩人、外交官、国会議員でもあった。1971年にノーベル文学賞を受賞している。家の中はまるで船の様な作りになっていて、彼が海をこよなく愛した人物であったことを物語っていた。彼は世界中から様々な民芸品や動植物を収集していて、そのコレクションの中には日本の能面などがあった。太平洋を挟んで向かい合う国の文化交流というスケールの大きさを日本海で見覚えのある冬の荒れた海を見ながら想像した。
チリは鉱物および農水産物が経済的基盤であるが、中でもチリワインは近年急速に国際競争力を強めてきている。20時間以上かけてチリまで来た理由の1つにチリワインの研究?がある。早速、工場見学のワイナリー見学に参加した。車で1時間ほど走って、見渡す限りの葡萄畑の中にあるワイン工場に着いた。門構えはメキシコの牧場風であった。工場では最終工程の瓶詰めされたワインのキャッピング、ラベリング等のボトリング工程から貯蔵工程を見学した。ボトリング装置はドイツ製であった。その後、テイステイングを兼ねたワインバーに招かれ、10種以上のワインリストから4品種までは無料のテイステイングが楽しめた。さらに、有料の3品種を楽しんだ。その時の会話で、葡萄づくりはイスラエルから、ワインづくりはフランスから技術輸入したことを知った。また、葡萄の木はヨーロッパから輸入したが、現在ヨーロッパの葡萄の木は病害対策で接ぎ木が行われ、純粋な葡萄の木は今は殆ど無く、世界で唯一チリにしかないと言うことであった。南アメリカというとトマトやジャガイモの原産地である。ワインの主原料である葡萄の木の移転は今後のワインの世界的リーダーシップが原材料のラテンアメリカかテクニックのヨーロッパか、その中で日本のワインはどのようなポジションを目指すのか、テイステイングのワインが心地よく脳を刺激する中で今後の展開を思いながらワインを語るチリの人たちと楽しい時間を持てたことに感謝した。