コラム KAZU'S VIEW

2007年05月

ユーミンと中島みゆきが創造した日本価値の次に来る価値づくりの準備は?

ユーミンとは松任谷由美(デビュー当時は荒井由美)さん、中島みゆきさんとともに今の日本を代表する女性シンガー、いや、エンタテイナーである。お二人とも十代でデビューしたのが1970年代。それが21世紀の日本のリーダーになられている。共に50代である。昨年TOKIOに提供された「宙船(そらふね)」は中島みゆきさんの曲。彼女は1972年「私の窓から」でデビューし(シングルデビューは1975年のアザミ嬢のララバイ)、その後、70年代、80年代、90年代および2000年代と各10年間で必ずオリコンチャートのトップをとり続けている唯一のシンガーである。1989年にスタートした「夜会」は自らが「言葉の実験劇場」と称する、コンサートとも芝居ともミュージカルとも違うステージ活動である。一方、ユーミンは1999年から「シャングリラ(http://www.shangrila3.com/)」というステージを開拓し、今年はロシア最大のサーカス団、水泳メダリストとの競演となるシンクロナイズドスイミングで地上・空中・水中を舞台としたスペクタクルショーに挑戦している。このネーミングはshangrila(理想郷)から来ているという。そのステージでは肉体的躍動感を彼女独特のビジュアルな世界にまとめあげている。この2人の日本人女性の姿は正に今の日本を象徴している。すなわち、70年代に日本の音楽界は60年-70年代のアメリカ音楽の影響を受け、ジャパンポップスなる音楽ジャンルを開拓し、新たな日本的価値創造を行った。その後も常に新しい価値の追求を継続し、挑み続ける姿は90年代に失速した日本経済とは対照的に進化し続けている。20世紀から21世紀への変化は大量生産・大量消費の物量を基軸とする物的価値から個別化、個性化に基軸をおく心的価値への価値変化とも考えられる。この大きな変化を先取りした価値創造の姿を彼女らは我々に見せてくれているように映る。エンターテイメントの世界は正に心の価値の創造の場であり、日本の輸出産業として近年アニメやゲームといった分野が世界価値として認知されている現実を見るとそのトレンドを確認できる。2002年3月にパリからベルギーの近くのバレンシエンヌという町に移動する列車の中で出会ったフランス人とお話をした時、出身地の話題になり、私が石川県から来たことを話すと、五右衛門に縁のある所か?と聞かれた。なぜ、フランス人が石川五右衛門を知っているのか不思議に思って聞いてみると、彼は日本のアニメのルパン3世が大好きでよく見ているということであった。そのアニメのキャラクターに石川五エ門が出ているのでよく知っているということであった。アニメが文化交流に寄与していることを実感した経験がある。
ユーミンのシャングリラはシャングリラIIIとして進化した形で近じか公開されるらしい。そのステージは陸・海・空の3つのステージをデジタル技術でつなぐところに魅力を感じる。この世界はデジタル(技術)と同時にアナログ(技能)の世界の融合でもある。その仕掛け人はユーミンの旦那の松任谷正隆氏。ご夫婦による心的価値創りは「陽」の世界を、中島みゆきさんの創り出す心の奥底からのエネギーから生まれるエンターテイメントは一面「陰」の世界を基盤にしているように思える。この陰陽の2つの価値の振り子が形成する日本価値創造の場は、この世界が男と女の2つから構成される世界として認識した時、2人の女性の影の世界を彷徨うという配役を男が演じることが今は時の流れのような気がしてならない。それは次のステージが男性による日本価値創造の場となるための振り返りの時と受けとめるべきではないか。

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