コラム KAZU'S VIEW

2007年03月

能登沖地震は安心と安全を改めて問いかける機会にならないか?

平成19年3月25日(日)午前9時42分ごろ、能登半島を中心に広い範囲で強い地震があり、石川県の輪島市などで震度6強を 観測した。地震の規模を示すマグニチュード(M)は6.9だった。震度6規模の地震が石川県内で観測されたのは初めてで、最初 の地震で、震度5以上が観測された主な場所は震度6強が輪島市、七尾市、穴水町、震度6弱が志賀町、能登町、震度5強が珠洲市、 震度5弱が富山県氷見市、新潟県刈羽(かりわ)村だった。上越新幹線は越後湯沢-新潟間で運転を一時中止し、能登空港は閉鎖さ れた。直後のアンケート結果によると能登半島地震の体験者のうち、大きな地震がこの地域で起こるとは思っていなかった人が8割、 7割が家具の固定をしていなかったという。また、地震への備えが不十分だったと思う人は9割に達し、8割が今後防災の準備をする と答えた。この地震が教訓になったと答えた人は1割にとどまった。丁度この時、夫婦で東京のホテルにいてテレビニュースでこ の地震を知った。次第にその地震の大きさが知らされるに従い、自宅の様子が心配になった。小松空港便は平常運行であったが、 予定していた帰りの飛行機を早めにしようとしたがチケットが入手できなかった。結局25日の夜9時過ぎに恐る恐る自宅に入ったが、 全く影響は無かった。能登地域に比べ同じ石川県内でこれほど被害状況が違うことに驚いたが、多くの方々から心配のお電話を頂き、 改めて感謝の気持ちを噛みしめることができた。
地震をはじめとする自然災害を体験すると、自然の力の前には人間の力の程度がどの様なものかを知らされるが、合わせて 「安心、安全」について考える機会が与えられる。安心はアンシン、アンジンと発音する。アンシンとは心配、不安がなく 心がやすらぐこと。アンジンとは信仰により心を一所に止めて不動であること、弥陀の救いを信じて一心に極楽往生を願う心、 と精神的状況を意味している。北陸地域は一向宗を始め精神価値の文化土壌が豊かな政治経済文化面を持つ土地柄である。 一方、「安全」とは安らかで危険のないこと、物事が損傷したり、危害を受けたりするおそれのないこと、と定義されている。 つまり、危険、損傷、危害と言った物的な現象に対する「安らかさ」の状態を安全という「あるべき姿」として表現した言葉では ないか。つまり、「安心」と「安全」は前者が心の価値、後者が物の価値の視点から「安(ヤスカラ)」を捉えた言葉であり、この 「心」と「全」の2つの間を「安」を中心にスイング(心⇔物)する状況が「安心」、「安全」の意味するところではないか。安全 に寄りかかり過ぎると安心が「慢心」となり、「不動」つまり常に心を磨き、精進して極楽往生に近づく「努力」を止めることに陥る 。この状況にならないために自然災害という課題が与えられるのではないか。災害を通じ多くの方々の温かい心に触れ、改めて災害 の痛手や痛みを乗り越える勇気が湧くことがある。海と山の豊かな自然の中に自然の優しさと厳しさを生活の中に取り込み、これ を人間の心の価値に絶えず昇華していく力を北陸の人々は長い年月をかけて培って来たのでないか。一方、今回の地震の震度は石 川県では初めて経験する大きさらしいが、地震の専門家によると石川県はここ30年間に巨大地震が発生する確率が5%とかなり高く、 日本でもその確率の高さがトップ5に入る地域になっているという。能登沖地震は安心と安全の関係を改めて問い直し、災害に備える ための日々の努力の必要性を示唆しているのではないか。

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