コラム KAZU'S VIEW

2006年08月

亀田興毅は白井義男になれるか?

今日は久しぶりに日本人のボクシング世界チャンピオンの誕生のテレビを見て感動した。一見、世を拗ねたような若者が父親と抱き合い親子で世界チャンピオンベルトを締めあっている2人の目に涙があふれている光景だった。プロスポーツの中でも最もハングリーなスポーツと言われるボクシングのリングの上である。そこに亀田三兄弟の長男の興毅君がヒーローとしてスポットライトを浴びていた。そこに横綱の朝昇竜がいることに新しい時代を感じたような気がした。日本人の心を揺り動かしたボクサーとしては戦後間もない昭和27年に日本人初のボクシング世界チャンピオンである白井義男氏が思い浮かぶ。たまたま、同じ日のNHKの番組の「その時、歴史は動いた」で彼を取り上げていたことが偶然か、必然かともかくとして不思議な対応を持っているような気がする。白井氏は戦時中にプロデビューし、将来を嘱望されていた、戦争で腰を痛め、戦後リングにあがるものの成果を出せずにいたとき、GHQのスタッフであったアルビン.R.カーンに出会い二人三脚が始まる。

やがて二人は日本に防御技術を基礎とする新しいボクシングスタイルを構築し、成果を出していく。しかもカーン氏はボクシングに対してはずぶの素人だったらしい。二人のチームワークの賜物かもしれない。戦争に勝った国の出身者とその戦争に負けた国の人間がペアを組み、世界一になるという話は驚きと共に感動を呼び起こす。50年余りを隔てて日本の親子鷹が同じボクシングのリング上で日本人の感動を呼んだ。しかもそのヒーローはいわゆる「やんちゃ」を象徴するパフォーマンスの中に何か浪花節的雰囲気を漂わせている。

白井義男は戦後の日本人の心の価値を創造した。その後、日本はJapan as No.1.と世界に言わしめた。その後、失われた10年が流れ、時は21世紀に入った。多分、明治の「和魂洋裁(才)」は終わったのであろう。次の維新はこれからではないか。少子社会日本が叫ばれているが、今の日本の若者も捨てたものではない。世界に通じる日本人は目を見張るほど広い分野で活躍している。それは、スポーツ、エンターテイメント、芸術の分野である。亀田興毅君にその荷を負わせるには重荷すぎるだろうか。和魂和才を実現できるかこれからが勝負のしどころであろう。

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