コラム KAZU'S VIEW
2006年01月
大学と人材育成
戌年が始まった。今年はどんな年になるだろうか。昨年の酉年を振り返ると、製造中核人材育成事業に暮れた年だった。この事業に対する私の思いは大きく3つの伏線があった。第一は1999年から2003年までの4年間ASEAN地域を中心とした自動車部品補完生産システムの現体調査を通じた東南アジアにおける自動車を中心としたものづくりの実態を通じたアジア周辺国のものづくり競争力の急激な向上を肌で感じたこと。また、その背景に大学における人材育成面が大きく影響していることを訪問した大学の学生との接触からその印象を強くしたこと。第二は1999年以降に従来の日本的経営の枠を越えた新しい価値づくりに視点を置いた「経営価値創造競争力研究会」おける議論とその研究会で2000年に行ったアンケート調査で、日本人のリーダーシップ力、経営資源化力の強化が重点課題であることを日本の100名のAcademic(研究者)、Business(実務家)、Consultants(経営コンサルタント)のいわゆるABCネットワークのパネラーから指摘して頂いたこと。実はこの研究会のスタートのきっかけの1つは毎年5月頃にスイスにあるInstitute of Management Developmentが発行するWorld Competitiveness Year Bookによる国別国際競争力ランキングで日本の順位が1992年まで1位だったものが2002年には30位まで低下したことの背景に日本の大学教育の競争力への貢献度は極めて低く、2005年度の評価では60ヶ国中56位という指摘があったこと。第三は2004年から石川県産業革新戦略会議のメンバーに加わり、石川県の10年後をどうするかをテーマに会議メンバーとの議論の中で石川県の良さ(石川ブランド)の議論があり、その中で多様な文化、技術・技能・芸能、自然がコンパクトにある地域の特徴を活かした人材育成という課題が出て、これをどう解決すべきかを考える機会があったことである。この7年ほどの体験と人的交流および機会が「人材育成」と「ABC-Gネットワーク(Academic・Business・Consultants-Governmental Officials)による連携体」を基本コンセプトにする今回の製造中核人材育成事業になっている。その根底にあるのは以下の自問の思いである。
*わくわくするような生活ができる、住みたい石川とはどんなものか?
*その生活を支える産業のありたい姿とはどのようなものか?
*その中に、石川の多様性をどのようにちりばめるか?
*ものづくりをした人が自分の人生をかけて次世代に伝えたい情(ココロ)とその技は何か?
*石川ものづくりブランドの創世を行いうる以下の条件を満たす製造中核人材育成プログラムの開発を目指すための具体策は?
・これまでに石川の地で時間と人が極めてきた石川に生き続ける現状の優れた工程管理ノウハウの現状をスケッチして「見える化」を行い、
・その技術伝承を製造業中核人材育成と共有し、
・ABC人財の連携により、
・市場の感動を呼ぶ多様な製品を、
・多様な文化、工芸・技術、自然の組み合わせの中で、
・大量生産、大量販売、大量廃棄の枠組みを越えて、多種少量生産、ニッチトップ企業を先端モデルとする共創的優位性を底支えできる人材育成。
*その結果として、石川ものづくりブランドを見出し、これを技術伝承すると共に全国、世界に発信し、千年前には日本海側が表日本であったようにするために石川手作りのABCとGovernmental Officials(行政)を連携した仕掛づくりをどうするか?
*特に北陸的C人財をどのように発掘し、育成するか?
*北陸の地で様々な匠の技を持ちつつ現場一線からしりぞかれる多くのB人財の方々に、北陸社会を舞台に、第2幕として個性豊かに演じてもらい、匠の技の伝承を行う「ことづくり」の脚本を作り上げ、これからの日本の新たな社会システム構築の先端事例の1つにできないか?
大学の人材育成価値向上の視点で今年度で終了する事業のけじめの付け方に思い悩みながら、以下のようなものであった。自らの足下を見極め、次に伝えるべきものを吟味し、精一杯伝える努力をしてみる。これを次世代がどう受け止めるかは別として、各地域が競ってこのことに汗をかくことが「地方の時代」の日本の生き様となろう。