コラム KAZU'S VIEW
2020年06月
コロナとの共存文化は日本の明治以前の文化にそのヒントがあるか
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数が大分,減ってきたような気もするが,第2波に向けての対策の議論が多くなりつつある.With Coronaの行動規範は何か?Social distance,3密回避,対面食事や大声会話の回避等の禁止事項が喧伝されている.しかし,多すぎる禁止項目は,うっとうしい梅雨の時期に重なり,益々,心を重くする.折角,新しい文化,生活環境を考えらえる機会に,もう少し明るい,積極的な発想のアピールが出来ないか?
外出自粛を要請され,家庭内閉じこもり環境の中で,時間の使い方を改めて考える時間を提供してもらえた機会は貴重に思える.ここ数十年,時間に追われる生活をして来た身には,「この余った時間をどうするか?」という課題に直面する事はほとんど無かった.改めて,「自然のいい加減さ」[1]に深い思いを持つ.暇つぶしに家の周りの掃除をしつつ,ゴミの量がだんだん少なくなって行く寂しさの反面,パソコンでリモート授業やZoomによるリモート会議で12時間以上の時間を費やす日々に行き詰まりを感じることが多くなってきている.未だ花粉症が収まらない肉体を抱え,目覚めのすっきりしない日々をどう受け止めたらいいのか,あるいはそのような憂鬱な時間を楽しんだら良いのか?心が振れる日々が続いている.
NHKの朝ドラの「エール」を見ている.作曲家の古関裕而(コセキ ユウジ)とその妻,金子(キンコ)をモデルとしている.そのテーマは音楽が人を励ます最大の手段である,と言うことのような気がする.この夫婦の出会いが音楽であり,その友人関係も音楽で拡がりを見せる.私自身,音楽は最強のコミュニケーションツールであることを,身をもって実感している.このコラムを書き始めた2003年10月に「日本人のユーモアはカラオケ!?」というタイトルでコラムを書いた.その中で,国際会議の懇親会場でカラオケを使って歌った事があった.何度かそのような場を重ねる内に,その学会でカラオケキングといニックネームを頂いた.そして,2010年にBilbao(Spain)での会議で,フェロー表彰を受けた際に,副賞として私の国際版カラオケの定番がエルビス・プレスリーの楽曲であることから,エルビスの写真の入ったパネルを頂いたことが,思い出される.何となく音楽で国際的コミュニケーションが出来ていた事の検証でもある.
ここ数ヶ月の人類と新型コロナウイルスの戦いの中で,人類は学習しつつ,改めてその行く末を考える段階にさしかかっている.コロナ後の世界に向けての議論や話題があちこちで聞こえる[2],[3].我が国は昨年,平成から令和へと元号が変わった.新元号のお祝いが半年後に突然のCOVID-19旋風に振り回され,その祝賀ムードも一変した.新しい元号の英訳はBeautiful Harmony:美しい調和とされ,そこには「人々が美しく心を寄せ合う中で,文化が生まれ育つ」という願いが込められている.令和の出典は万葉集の「梅花の歌」にあるという.万葉集は現有する最古の和歌集で,全20卷で構成される.ネーミングの「万葉」は,「よろづの言の葉」,「多くの歌を葉に例えた」や「永久(=万葉)に歌集を残すため」など諸説ある[4].約4500首の和歌が納められ,そのほとんどが短歌になっている.歌集であることは,歌が身分の分け隔て無いコミュニケーションツールであることを当時の日本人が認識し,後世に文字として残した先見性であろう.人生の喜怒哀楽を歌に託して伝え,受け取った者がそのメッセージに共感を得ることで双方向のコミュニケーションを楽しむ心の豊かさに脱帽である.ちなみに,「梅花の歌」は万葉集第5巻に納められ,大伴旅人(オオトモ ノ タビト)作とされている.時は今,梅雨である.梅雨の由来は諸説あるが,梅の実が熟し,潰れる時期に当たるので潰ゆ(ツユ)となった,や,中国では黴(カビ)の生えやすい時期の雨という意味で黴雨(バイウ)とい言葉がもともとあって,黴(カビ)のイメージが悪いので同じ発音の「梅(バイ)」に入れ替えて梅雨となった,という説が有力のようだ.このところ,梅雨の季節にしては晴天の日が多く,夏日も多く感じるのは異常気象による季節感の変異点なのかもしれない.万葉の時代から千年以上をかけて培われた日本文化の流れが,明治維新をきっかけに大きく様変わりし,和魂洋才から洋魂洋才へと続いた近代日本を,改めて和漢和才へと舵取りする機会がこのコロナ禍ではないか.Social distanceの隔たりを,心を寄せ合うことで縮め,新たな文化を創造する事は,人対コロナという局面の前に,人対人の局面に存在する多数の障害を取り除き,相互信頼のためのネットワーク構築の課題から取りかかることが必要ではないかと思う.そのためには,和魂和才という日本モデルが選択肢の1つにならないか.
参考資料・文献
[1] きたやまおさむ,前田重治,良(イ)い加減に生きる-歌いながら考える深層心理-(講談社現代新書2522),講談社(2019)
[2] 日本学術会議,「未来からの問い」特設HP,
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/tenbou2020/mirai-top.html#contents,
<2020.06.20>
[3] ユヴァル・ノア・ハラリ著,柴田裕之訳,人類はコロナウイルスといかに闘うべきか―今こそグローバルな信頼と団結を,2020年3月15日「TIME」誌記事http://web.kawade.co.jp/bungei/3455/<2020.06.18>
[4] 四谷学院,新元号・令和の由来と意味とは?出典元の万葉集「梅花の歌」を解説https://yotsuyagakuin-kobetsu.com/blogs/reiwa-meaning/<2020.06.20>
[5] 言語由来辞典,梅雨,http://gogen-allguide.com/tu/tsuyu.html,<2020.06.20>
以上
令和2年6月