コラム KAZU'S VIEW
2019年05月
令和最初の月は10連休で始まった-その時,日本人はその未来をどれだけ考えられたか-
第126代天皇が即位された. 名は徳仁(ナルヒト)で1960(昭和35)年2月23日生まれである.生前退位された上皇より天皇を受け継いだこの期間に多くの日本人には天皇家の様々な情報がTVを初めとする様々なメデイアを通じて事細かく伝えられた.この出来事は皇室をより多くの日本人に対し,身近な存在として受け入れる機会を提供したのではないか.
第1代天皇は神武(ジンム)天皇とされる.彼は日向国(現在の宮崎)から大和国中州を目指し,東征(神武東征)を行い,当時の大和国の指導者であった方長髄彦(ナガスネヒコ)との戦いに勝利し,中洲(大和国),橿原(カシハラ)の地で紀元前660年2月11日に天皇として即位したとされる神話上の人物である.この日は日本の建国記念の日となっている.この戦いで熊野国から大和国への道案内役が日本サッカー協会のシンボルマークや日本代表のエンブレムとしてデザインされている八咫烏(ヤタガラス,3本足のカラス)である.神話の世界は想像豊かな世界である.ある意味で個性の世界であるので,これを現実的,客観的に見るのは興ざめである.神話の世界に登場する神々は大変人間味?が溢れている.日本神話では日本国を生み出したイザナキ(男神)とイザナミ(女神)がまず思い出される.ギリシア神話では,このカップルと似た神話(冥界訪問神話)としてオルペウス(竪琴の発明者とされる男神)とエウリュディケ(女神)がいる[1],[2].また,その子供で太陽神であった天照大神(アマテラスオオミカミ)が弟の速須佐之男命(スサノウノミコト)の乱暴に立腹し,天の岩屋(アメノイワヤ)に隠れたという話は,農業の女神であったデメテルが弟のポセイドンの乱暴に怒り,岩屋に閉じこもったという話と重なる.何か,この2つの国の神話には共通性が感じられる.それは神の人間性という点と海と山と怪物が登場する話である.日本神話では,八岐大蛇(ヤマタノオロチ; 速須佐之男命により退治され,尻尾の中から天皇家の三種の神器の1つである草薙の剣が出てくる)が代表的である.ギリシア神話では,ケルベロス(頭が3つある犬の怪獣でプルトンの番犬),キマイラ(ライオンの頭,山羊の胴体,毒蛇の尻尾を持つ怪獣,ヒッタイトでは聖獣でキメラとも言う[3]),グリフォン(鷲あるいは鷹の翼と上半身,ライオンの下半身をもつ怪獣)などキャラクターが豊かである.
ところで,Godではなく,八百万の神の中で女神である天照大神を最高位神とする国で,女系天皇の議論が出たり,引っ込んだりしている.126人の天皇の中で6人の女性天皇が8回在位している[4].男女雇用均等法(1985年成立)を30年以上前につくりながら,今更,女性管理職の比率が低いとか何とかという議論の話題が出ることに,我が国の後進性を確信させられる事象が目や耳に届く.日本人としての誇りをどのように受け止めているのか,考えさせられ,複雑な気持ちになる.
120代を超える途方もない継続性を持つ一族が国の象徴として位置づけられている世界でもまれな文化を持つ国が,今後どのような道をたどるのか,世界中が注目している.先日のニュースで百舌鳥(モズ)・古市古墳群が世界遺産登録に推薦されたということが伝えられた.この古墳群の中には大仙陵古墳(ダイセンリョウコフン)という最大級の前方後円墳があり,仁徳(ニントク)天皇陵とされて来たものが含まれている.3〜4世紀の古墳時代に日本が中央集権化し,国の形ができ上がろうとした時期に現在の天皇家の祖先が中心になったことを物語る遺跡遺産である.日本という国ができあがろうとしていたこの時代の歴史は空白とされ,その検証が十分なされていない.8世紀になって作成された古事記や日本書紀といった記録に残る様々な神話には,この時代の大規模な構造物の作成に関わるものもあろう.この途方もない伝統を引き継ぎつつ,新たな世界価値をどのように世界に発信するかが,令和と言う時代を引き継ぐ人々の使命なのかもしれない.今生き続ける日本人が一人一人考え,行動する事が必要であろう.
参考文献
[1] るいネットワーク事務局,日本人の起源(縄文・弥生・大和),日本神話とギリシャ神話との奇妙な類似 ,http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=262228,2019.5.15
[2] 吉田敦彦,日本人の心のふるさと;日本神話はなぜギリシア神話ににているのか,ポプラ社(1990)
[3] 2010年10月コラム,「iPS細胞は人類に何をもたらすか?不幸か,幸せか?」
[4] 2010年11月コラム,「平城京遷都から1300年の歴史に見る日本国のルーツ」
以上
令和1年5月