コラム KAZU'S VIEW

2019年01月

己亥(キガイ)の年はじめで富士を見たことの意味は!

己亥(キガイ)の新年を迎えた.この干支は物事のバランスが必要とされる時期とされている. 亥年は,十二支を子→丑→の順で並べると12番目の最後になる.また,平成の元号も5月に変わることが決まっている.様々な意味で切換の時のように思われる.
17日未明に3人目の孫が生を受けた.その関係で昨年末の晦日から長男宅に手伝いがてら滞在した.何十年ぶりかで自宅以外で新年を迎えた.4日に自宅に戻る途中で千葉から金沢への外側環状線から富士山を眺めることが出来た.空気が澄んでいたせいか,かなりすっきりした映像であった.北陸道に入ると立山と白山の姿も目にすることが出来た.新年早々に日本名山3山を見ることが出来たのはこれまでの人生に記憶がなかった.金沢に戻って驚いたのはほとんど雪がなかったことであった.正月三が日の千葉は晴天であったが金沢でも昨年の晦日に降った雪が残っている程度に思えた.昨年の大雪を思い出すと何やら気が抜けた感があった.
年始めの日本を大いに盛り上げてくれたのは大坂なおみ選手の全豪オープン(1月)女子シングルスでの優勝であろう.これで彼女は昨年の全米オープン(8-9月)に続き,いわゆるグランドスラムで2回連続のチャンピオンに輝くことになり,1月28日付けWomen’s Tennis Association(ATA)ランキンで世界No.1となった.これは,アジア地区の選手で初めての快挙である.残る全仏オープン(5-6月)とウインブルドン選手権(6-7月)への期待も高まっている.彼女の魅力はプレーの素晴らしさと共にそのキャラクターのかわいさもある.日米の多重国籍を持っているが選手登録は日本だと聞いている.今ひとつ盛り上がりに欠ける国に勢いを付けてくれることを心から願う気持ちになる.
ところで,年の初めの1月のコラムでこれまで女性をテーマに取り上げたことが何回かあったことを思い出した.ちなみにここ10年間におけるコラムのテーマを上げると以下のようになる.
2016年1月:あさが来たにみる明治女性のリーダシップ:九転十起生の意味する所は?
2014年1月:STAP細胞発見で午年は日本が活気づくか
2012年1月:辰年のはじめみに世界ランクの日本女性が日本を昇り龍にするか?
2010年1月:日本と朝鮮半島の2000年史に見る女帝による日本改革の歴史
上記のテーマを見る限り,日本女性の政治,経済,文化(学術・スポーツ)など多様な面での活躍に自身が感心を持っていることが自覚できる.女性の活躍を社会へ広げるための方策として男女共同参画社会の構築が政府を中心に進められている.そのための法制度整備として1999(平成11)年に男女共同参画社会基本法[1]が公布,施行された.この法律の中で目指す社会として「男女が,社会の対等な構成員として,自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され,もって男女が均等に政治的,経済的,社会的及び文化的利益を享受することができ,かつ,共に責任を担うべき社会」を規定している(第2条).その上で,基本理念として,男女の人権の尊重,国際的協調,社会における制度または慣行の配慮,家庭生活における活動と他の活動の両立,政策等の立案及び決定への参画の5つを提言している.また,この推進に当たっては国,地方公共団体と国民をステークホルダーとして責任分担を提示している.その目標は職場の活性化,家庭生活の充実化そして地域力向上化を上げている.これによってもたらされる豊かな社会とは,1人1人が上記3つの目標に対し夢や希望を描き実現できる社会としている.一方,その現状と課題は基本法施行後13年経過した平成24年7月登録のサイト[2]によると抽象的な内容でその進捗状況は順調とはいえない.ロードマップづくりを含むアクションプランの検討が必要に思う.特に,国や地方公共団体として上がっているステークホルダーは国民から構成される.したがって,日本人1人1人の意識改革を含めた人財育成は中核的課題になろう.その意識改革の内容は仕事の夢(職なの活性化),家庭の夢(家庭生活の充実化)そして地域活動での夢(地域力向上化)を描く力とその実現力の育成から始まるであろう.国の夢(未来予想図)が描けない現状で日本国民は今ひとつ盛り上がりに欠ける.2020年の東京オリンピックも1964年の時に熱を感じられない.高度経済成長期の勢いを世界に示すことを国民の夢として共有できた時に比べ,経済的成功を一時的にも納めた後の心躍る共通の夢は,価値観の多様化した社会では持てないと言うことであろうか. 物が豊かになりすぎ,経済的に豊かになった中でその格差が広がってしまった状況で国民1人1人の描く夢も多様化しているのではないか.かつて,電化製品の三種の神器と言われた物的価値を象徴する(白黒TV,洗濯機,冷蔵庫),3C(Car,Cooler,Color TV)そして新3C(電子レンジ:Cooker,別荘:Cottage,セントラルヒーティング:Central heating)などいう言葉の存在意義もなくなってきた.一方,経済学の分野でもアダム・スミス[4]やジョン・メイナード・ケインズなどの対象とした成長率などの経済(貨幣)的価値に対し,心の価値に言及する動きも見られる[3].価値観の多様化とは価値の種類が増えることを意味する.そこで,価値を計る尺度で分類すると物的価値,経済的価値そして心的価値に分けることができよう.どのような価値の尺度で,誰(ステークホルダー)の価値かにより様々な価値観が形成され,これらは個性と呼ばれるものの1つになろう.個々人の多様な価値が相互に認められ,その共感性が地方自治体,そして国の価値への共創されていくロードマップづくりとこれを担う人財育成が求められる.
鈴木大拙の言葉にある「人は人生の芸術家である」.自らの生活を芸術し仕上げていくことが,夢の創世,すなわち個性形成となり,これが,福沢諭吉の「一身独立して一国独立す.」に繋がる.生まれたばかりの孫娘が成人するまでにこのロードマップが何処まで進んでいるか,見てみたい願望が湧いてきた.新年の3山はそんな思いを与えてくれた.

参考資料
[1]内閣府男女共同参画局, 「男女共同参画社会」って何だろう?http://www.gender.go.jp/about_danjo/society/index.html,2019.1.20
[2]文部科学省,日本の男女共同参画の現状と課題について(検討メモ)http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/026/shiryo/attach/1323291.htm
[3]安原和雄,足るを知る経済―仏教思想で創る二十一世紀と日本, 毎日新聞社(2000)
[4]堂目卓生,アダム・スミス:『道徳感情論』と『国富論』の世界, 中央公論新社(2008)
以上
平成31年1月

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