コラム KAZU'S VIEW
2017年05月
韓流ドラマ千秋太合(チョン チュテフ)のメッセージは?
韓流ドラマ「千秋太后」は、高麗(918年から1392年)に実在したといわれる献哀王后 皇甫氏(ケンアイオウコウ コウホシ/ファンボ・ス964年から1029年)を主人公とした歴史ドラマである。彼女は高麗第5代王である景宗(ケイソウ975年から981年在位)の第3王妃で、第7代穆宗(ボクソウ997年 - 1009年在位)の王母であり、別名を千秋太后といった。このドラマにはもう1人の契丹(遼とも呼ばれ916年から1125年の間に契丹と遼という名を変えていたらしい)の蕭太后(953年から1009年,睿智蕭皇后(エイチショウ コウゴウ)が登場する。彼女は第5代契丹皇帝景宗(ケイソウ)の皇后で、景宗が崩御すると皇太后となり、摂政となった。契丹の全盛期を作った第6代皇帝聖宗(セイソウ)の母にあたる。この2人は良きライバルとして描かれている。契丹は高麗に、993年、1010年、1018年の3回侵攻している。一方、ドラマでは千秋太后を巡って、2人の男が対峙する。1人は新羅王族の後裔で、新羅(7世紀中ごろに朝鮮半島をほぼ統一したが、9世紀末に後高句麗、後百済の後三国時代を経て高麗に滅ぼされる)の再興のために高麗を滅ぼそうと企む金致陽(キム・チヤン)、もう1人は契丹に滅ぼされた渤海(698年から926年)の末裔として高麗に流れ着き彼女に助けられ、やがて高麗の大将軍となる康兆(カン ジョ)である。千秋太后は金致陽との間に子をなすが、その子が1125年に契丹を滅ぼし、建国した金または金朝(1115年 から1234年)を起こした完顔氏(カンガン シ)の祖先という筋書きは何ともドラマチックである。この金もやがて元(モンゴル帝国)により滅ぶ運命をたどるが、この一族は清朝の官僚である崇実(チュンシ)に繋がっているという。
10世紀から13世紀の北朝鮮および満州地域の歴史は、いわゆる蛮族と言われる北方民族が次々と国を作っていた時代である。この動きは1206年にチンギス・ハーンが建国した人類史上最大の世界帝国(最大領土面積約3300万km²、地球上の陸地の約25%、人口は1億人で三大洋に面した国)となる。この当時の日本は、平安時代から鎌倉時代に当たり、貴族社会から武士社会への変革期に当たる。この時代は源平の戦が象徴的である。この時代を代表する日本女性としては北条政子(1157年から1225年)が思い起こされる。日本海を挟んで100年のタイムラグがあるにせよ、女性が時代を動かした歴史は興味深い。
現在、韓国をKOREAと呼ぶのはこの高麗からきているとも言われている。朝鮮半島を見ると、韓国では第19代大統領文在寅(ムン ジェイン)氏が5月10日に就任したばかりである。北朝鮮は連日、日本海に向けてミサイル発射を行っており、これに呼応し、日本海にロナルド・レーガンとカール・ビンソンのアメリカ空母2隻が現れている。千秋太后は高麗を大帝国にする夢を追い、国内外の戦いに明け暮れ、息子や恋人など愛するものを全て失う結果となる。戦の場面の多い中で、最後に第8代高麗王顕宗(ケンソウ)と田んぼで倒れた稲を2人で直す場面で終わる。この平和を象徴した場面は、マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレン主演の第二次世界大戦を題材とした「ひまわり」の場面を連想させた。このドラマのメッセージのような気がした。
以上
平成29年5月