コラム KAZU'S VIEW

2016年11月

朝ドラにみる女性経営者からの気づき

 2016年1月のコラムで「あさが来た」を取り上げたが、現在は「べっぴんさん」を見ている。この2つのドラマの間に「とと姉ちゃん」があった。
「あさが来た」は広岡浅子(ヒロオカ アサコ)、「とと姉ちゃん」は暮らしの手帳の創刊者である大橋鎭子(鎮子:オオハシ シズコ)、べっぴんさんはファミリア(1950年に社名をモトヤからファミリアに改称)創業者の一人である坂野惇子(バンノ アツコ)の各女史が主人公である。それぞれのドラマは、大森 美香(オオモリ ミカ)、西田 征史(ニシダ マサフム)、渡辺 千穂(ワタナベ チホ)の各脚本家による色づけはあるにしても、そこに描かれている主人公達の行動には多くの気づきを得ることができる。
広岡浅子氏については、上記の1月のコラムに委ねるが、銀行や生命保険といった金融業に早くからビジネス視点を持っていたこと。大橋鎭子氏は「女性たちの生活に寄り添う仕事」という理念を掲げ、商品試験という今日の顧客満足視点に先立って、第三者的立場からの品質保証を終戦直後の物不足時代から実践していたこと。商品使用条件の設定や実験回数の設定など品質管理の問題として大きな課題が描かれていたことは非常に興味深いものがあった。坂野惇子氏は「自分の居場所を見つける。」という生きがい論を根底に、女性4人が子供服・子供向け用品・ベビー用品といった「物作り」をテーマにしながら、顧客ニーズの掘り起こし、商品展示やブランド化といったマーケテイング戦略、育児相談といったサービスと製品を組み合わせた価値創りの視点を戦後間もなく持ってビジネス実践している様子に驚かされる。また、物作りに当たり、使う人を思って物作りをするというとらえ方も共感姓が高い。ところで、このドラマのテーマ曲は、Mr. Childrenの「ヒカリノアトリエ」であるが、その詩の一説に、「・・百万回の内にたった1度ある奇跡、下を見てばかりでは見逃してしまう・・」というくだりがある。品質管理の管理手法に6(シックス)シグマというものがあるが、これは百万個作った製品の中に不良品が3個生ずるという管理レベルを目指す管理を意味している。その三分の一が奇跡となると言う意味だろうか。また、この奇跡とは「夢」を意味しているとも考えられる。私たちは夢を追い求めて生きて行く。晴れる日もあれば、雨の日、曇りの日もある。夢を探し続ける状態は、夢を雲や雨が隠している状態である。しかし、この雲や雨は、いつかは晴れる。その晴れ間を探し続けるためには前(未来)を向いて、今の自分より上の目標を掲げて突き進むことが必要である。「今日の我に、明日は勝つ」、「自らを変えて、周りを変える。」とういことではないか。キャリアデザインの考え方の中に、「必然としての偶然、Planned Happenstance」というものがある。この考えは、アメリカスタンフォード大のクラウンボルツ(John D. Krumboltz)らが提唱したものだ。すなわち、キャリア形成はその8割が偶然により決まるが、その偶然を積極的に活用し、さらにその偶然を自らが作り出すことで夢に近づくという考えである。そのためには常に「夢」、「自分のありたい姿」を求め続けること、そのための戦略や計画を準備し、行動することが雲の切れ間を見つける機会、虹を見つける機会に結びつく。この曲はそんなことを投げかけているような気がする。
アメリカ大統領に史上初の女性大統領が生まれる機会は先送りされたが、夢を追い続ける姿は、男女に関わらず、美しく、感動的である。3つの朝ドラに描かれた3人の女性の生き様は、そんなことを問いかけている。
以上
平成28年11月

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