コラム KAZU'S VIEW

2014年03月

日本のものづくり価値を世界に届ける2人の日本女性

いずれも「夢の扉」というテレビ番組が取り上げていた女性である。1人は会議通訳者の長井鞠子(ナガイ マリコ)氏で、タイトルは、「トップ通訳が挑む被災地「フクシマ」を世界へ」、もう一人は、テキスタイルデザイナー、東京造形大学教授、(株)nuno取締役などの肩書きを持つ須藤玲子(スドウ レイコ)氏で、「日本の伝統技術で世界が欲しがる布へ」であった。                               
長井氏は、70歳になっても現役通訳として国連軍縮会議や先進国首脳会議など数々の国際会議の同時通訳として世界のトップリーダー達の厚い信頼をうけているという。タイトルの会議は、国連事務副次長のマローンら世界の原子力発電事故の専門家達による福島でのシンポジウムであった。浪江町(ナミエチョウ)町長の馬場有(ババ タモツ)氏のスピーチの通訳を担当していた時に、「ふるさと」をどう訳すか?を悩んで、”Beautiful Namie as our town”という結論を出していた。その背景には、自分の出身地が宮城県仙台市であり、住民達の「汚染地を捨てるという選択肢」に対する思いをどう伝えるか?扱うテーマは政治経済を中心に文化やスポーツまで幅広く、いまも年間200件近い業務を請け負うトップ通訳として活躍中のスパーウーマンである。一方、須藤氏は、彼女のデザインした布がメトロポリタン美術館、ボストン美術館、ニューヨーク近代美術館、ヴィクトリア&アルバート美術館、東京国立近代美術館工芸館などに永久保存されているという。彼女がこの世に生み出した布は、羽オーガンジー(Feather flurries)、銅布(Copper cloth)ジェリーフィッシュ(Jellyfish)、芭蕉布アバノス(Bashofu avonos)・・などなど、およそ布とは程遠い名前の代物(シロモノ)である。しかも、これらの生産は、山梨県富士吉田市の機屋(ハタヤ)や滋賀の撚糸(ネンシ)工場など、全て日本国内で行われている(2007年度第8回物学研究会レポート)。彼女は言う、私たちがつくっている布は大量生産の量販的な布ではありません。手仕事のような伝統工芸の高価な布でもありません。ロットは小さいですが、工場の機械で織る工業製品を基本にしています。・・・日本にはまだまだ伝統的な技を伝承する素晴らしい職人がいて、彼らの卓越した技術に支えられて、私たちの布づくりは続けることができています。
ものづくり立国などと喧伝(ケンデン)され、その実、ものづくりが若者から嫌われている不思議な国、日本。その不思議な国で、日本のものづくりを世界価値として情報発信をしているのは、還暦を過ぎた大和撫子(ヤマトナデシコ)であることを、改めて思い知らされた感動を覚えた。
以上
平成26年3月

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