コラム KAZU'S VIEW
2014年01月
STAP細胞発見で午年は日本が活気づくか
30日付の英科学誌ネイチャーに新たな万能細胞「STAP細胞(スタップ サイボウ)」開発についての論文が掲載された。この論文の第一著者は、小保方晴子(オボカタ ハルコ)というアラサー(30代)の日本女性である。2年前の辰年の1月のコラムでも、新年早々の日本を元気にする女性として澤穂希(サワ ホマレ)さんのバロンドール受賞と、高梨沙羅(タカナシ サラ)さんのノルデイックスキージャンプ種目ワールドカップ二位について取り上げ、スポーツウーマン達の勢いに心強さを感じたが、今回は学術の世界での快挙である。日本女性は世界的レベルで文武両道ということを世界に示した。
このSTAP細胞は、ES細胞(米ウィスコンシン大が1998年に世界で初めて培養に成功した胚性幹細胞:Embryonic Stem Cell)やiPS細胞(2012年山中伸弥教授のノーベル生理学・医学賞受賞対象となった人工多能性幹細胞:Induced pluripotent stem cells)に続く「第3の万能細胞」と言われている。万能細胞とは、細胞分裂によってさまざまな臓器や骨、皮膚などに分化する能力を持つ細胞で、ほんの少し前までの生物細胞学の「常識」を覆すものであった。今回のSTAP細胞の正式名称は、小保方さんが命名したもので、刺激惹起性多能性獲得細胞(シゲキジャッキセイ タノウセイカクトク サイボウ): Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cells)と呼ばれ、動物細胞に外部刺激を施して分化万能性を持たせた細胞である。この「外部刺激を施して」という方法が、これまた、生物細胞学の常識を覆す方法で、今回その論文が掲載された、ネイチャー:Nature誌に掲載されるまでの期間が長く掛かった理由とのこと。正に、ふとした偶然をきっかけにひらめきを得、幸運をつかみ取る能力であるセレンデイプテイー(serendipity)そのものである。失敗してもそこから見落とさずに学び取ることができれば、成功に結びつくという、今の日本人にとって忘れかけているものを彼女は我々に身をもって教えてくれた。なぜ、「外部から刺激を与える」という方法を思いついたのか?と言う質問に対して彼女は、「体の細胞から小さい細胞を取り出す操作をすると、幹細胞(stem cellと呼ばれ、複数系統の細胞に分化できる多分化能と、細胞分裂を経ても多分化能を維持できる自己複製能)を併せ持つ細胞)が現れるのに、操作しないと見られない。幹細胞を『取り出している』のではなく、操作という外部からの刺激によって、『できている』という考えに至った。」と回答している。
iPS細胞は胎盤の細胞を作ることはできないが、STAP細胞は胎盤も含むすべての細胞に変化できる。生後1週間のマウスの血液細胞で、STAP細胞の収率は7-9%であるのに対しiPS細胞は1%未満であり、作製に要する期間もSTAP細胞は2-7日、iPS細胞は14〜21日かかると言われている。STAP細胞の製造法は短時間で効率的な方法であり、日本人的である。今後は、ヒトの細胞からSTAP細胞が作れるかどうかが課題だと言う。
小保方さんの専門は学部は応用化学であったそうだが、大学院は生命医科学に変更した。そのきっかけは、研究テーマ決定に悩んでいた時に、指導教授からの「君は本当は何をやりたいのか?」であったという。その問いに対して、自分の夢であった「再生医療で社会貢献」を思い出したという。夢の力が常識を変え、社会を変えることを、今回、後輩から改めて教えてもらった。夢を見続ける力こそが、生きる力ではないか。そのようなロマンを見ている。
以上
平成26年1月