コラム KAZU'S VIEW

2013年07月

2回目の南アメリカ訪問で訪れたブラジル旅行の思い出

7月28日から8月1日までブラジルのフォス・ド・イグアスに夫婦で出かけた。第22回ICPRおよびIFPR理事会への出席が目的であった。南アメリカでICPRが開催されるのは2007年のチリのValparaiso(バルパライソ)に次いで2回目であった(2007年8月コラム参照)。今回の理事会には会長として臨んだ。無事、2年間の会長任期を終えるため、家内を同伴した。丁度、1年前に7時間以上の手術をしていたので、片道40時間の旅程はリスクを感じていた。しかし、その危惧(キグ)もなんのその、家内は私以上に元気で初めての南アメリカを楽しんだようだ。
イグアスの滝に5日間滞在したが、最後の1日は午前中、ITAIPU(イタイプ)ダムと水力発電所の見学に出かけた。イタイプダムは、ブラジルとパラグアイの国境を流れるパラナ川に作られたダムである。中空重力式コンクリートダム、ロックフィルダム、アースダムなど複数種類のダムで構成されており、コンバインダムと呼ばれるタイプのダムである。堤頂(テイチョウ:ダムの一番上の部分)の合計は7.7Kmを越える。ブラジルとパラグアイの共同出資で作られ、管理も両国が共同で行っている。1984年から送電を開始し、発電出力は1,400万キロワットで、2009年に完成した2,250万kW発電可能な中国の三峡(サンキョウ)ダム(堤頂の合計は23Kmを超える)に次ぐ世界第二位の水力発電用ダムである。発電した電力はブラジルとパラグアイで均等に分けることになっているが、人口の少ないパラグアイにとってはその何割かで国内需要を全て満たせるので、残りはブラジルに売電しているという。この6月に行われた第9回FIFAコンフェデレーションズカップ2013の時は、ゲーム放送電力需要で電力不足が生じたため、今後FIFAワールドカップやオリンピックに向けて、電力供給システムの安定化のための管理システム構築に取り組んでいるとのこと。そのために現在、制約理論(セイヤクリロン:トヨタ生産方式を理論化した管理改善方法論)を導入するための準備をしていると、ガイド役のエンジニアが自信に満ちた口調で説明してくれたことが印象的であった。50年前の東京オリンピックの時の日本の状況を思い出させた。発電所内にはブラジルとパラグアイの境界線が引いてあり、制御室も2つの国の区分がされていた。発電所周辺にはダム工事によって水没した地域にいた人、動植物に対する保護移転を目的に、野生動物に触れあえる動物公園や漁業や農業技術開発のための施設、自然保護教育施設や南アメリカからの学生を教育する大学施設(現在建設中)や文化施設などが多くのボラテイアに支えられて運営されていた。また、これらを観光資源として活用し、ダムをライトアップしたりして世界中から旅行客を集めている。最近、日本で話題に度々上る、プロジェクションマッピング技術を使って、イタイプダムをスクリーンにした巨大な映像も一興かと思った。スケールの大きさと、1992年にリデオジャネイロで第1回地球サミットを開催した国らしい、環境開発と環境調和を配慮した国家プロジェクトに感心した。
その日の午後はフリーの時間が取れたので、家内と一緒にイグアスの滝を見に出かけた。イグアスの滝は、イグアス川の下流にあるアルゼンチンとブラジルの二国にまたがる世界最大の滝である。イグアス (Iguazu) とは先住民のグアラニ族の言葉で大いなる水 (Y Guazú)という意味らしい。この滝を含むブラジルのイグアス国立公園とアルゼンチンのイグアス国立公園は、ともにユネスコ世界遺産に登録されている。最大落差80メートル以上で、「悪魔の喉笛(アクマノ・マテキ/ノドブエ)」(Garganta del Diablo) が観光名所だそうだが、ブラジル側からの見学コースだったので、立ち上る水煙(ミズケムリ)しか見えなかった。友人の中にはヘリコプター観光やアルゼンチン側まで出向いて見て来た人もいたようであった。アメリカのセオドール・ルーズベルト大統領が夫妻で訪れた際、イグアスの滝を見た夫人が「かわいそうなナイアガラよ」と言ったとかという話を聞いたが、1983年に恩師夫妻と見たナイアガラの滝の経験をふと、思い出した。イグアスの滝をはじめて見た印象は、日本の滝というイメージとは異なり、水量と滝の広さに圧倒されるだけであった。華厳(ケゴン)の滝や白糸(シライト)の滝とは全く別世界の滝であった。今のブラジルの経済発展力と底抜けの明るさを滝を通じて体感したような気がした。
6年前のチリのICPRで4年後の会長指名を受け、今回その任期の2年を終える事が出来て、ほっとしている。ICPRに最初に参加したのは1981年、いまはなき、ユーゴスラビアのノビサドであった。それから30年以上が経過している。当時は、独身で、1ヶ月近くヨーロッパを初めて旅した。怖さを知らない年であったような気がする。今回、世界3大瀑布(セカイサンダイバクフ)の2つまでを見て、体感できた。残るのはアフリカ大陸のジンバブエとザンビアにまたがるヴィクトリアの滝を残すのみ。これを訪ねることを楽しみに、後20年近くをどのように生きたらいいのか、悩みはつきない思いに駆(カラ)られる。
平成25年7月

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