コラム KAZU'S VIEW
2013年01月
南鳥島沖のレアアース調査は巳年の日本の吉兆となり得るか
巳年(ミドシ)早々に、日本の未来が明るくなるニュースが出てきた。そのニュースとは、文部科学省所管の独立行政法人海洋研究開発機構が小笠原諸島の南鳥島沖の海底にレアアース(希土類:キドルイ:rare earth)泥が多量に眠っていると言う仮説を検証するための調査に乗り出すことになった、というものであった。この仮説を提案したのは東京大学の加藤泰浩(カトウ ヤスヒロ)教授の研究チームであった。加藤教授は当初、経済産業省に調査・研究への支援を要請してきたが、今回の調査は文科省によって実現することになった。
南鳥島は日本の東の国境の島で、日本の島としては唯一、日本海溝の東側にあり、日本で唯一太平洋プレート上にある。この島は周囲7.6キロメートルの三角形をした島で、自衛隊員と気象庁の職員が常駐しているらしい。最近、膨張(ボウチョウ)主義を標榜(ヒョウボウ)する中国が手を出す余地はないであろう地域である。その島の周辺、水深5〜6000メートルにもおよぶ深海に眠る多量の希土類泥。その特徴は、陸上の鉱床(コウショウ)で採取される希土類泥に必ずついて回るトリウムやウランなどの放射性元素がないことだ。鉱床とは、資源として利用できる元素や石油・天然ガスなどが濃縮している場所で、採掘して採算が取れるものを指す。海底で鉱床ができるメカニズムは、海底熱水鉱床(カイテイネッスイコウショウ)と言われ、海底の中で海嶺(カイレイ)などマグマ活動のある場所に海水が染み込み、熱せられた海水によってマグマや地殻(チカク)に含まれていた有用な元素が抽出され、この熱水が海底に噴出して冷却される事によって沈殿(チンデン)して生成した鉱床である。陸上での鉱床開発は放射能による環境への負荷と人体への健康被害を伴うが、海中で生成された希土類にはその問題がないのが大きな利点であることが指摘されている。
これまでの調査で南鳥島沖の希土類泥が21世紀の産業製品、例えばハイブリッド車や電気自動車、スマートフォン、LED照明、センサーなどに欠かせない重希土類を中国鉱山より30%多く含んでいることが分かっている。重希土類とは原子番号57から71のランタンニュウムの内、原子番号64のガドリニュウム(元素記号Gd)より原子量の大きい元素である。また、その埋蔵量は、神々から日本への贈り物としか思えないほど膨大なもので、日本の年間消費量のなんと300年分以上が眠っている可能性があるという。これを海底から引き上げる方法は、技術的にそれほど困難ではないという指摘もある。これが実現すれば、レアアースは日本にとって貴重な戦略物資として活用することが出来る。
プレートテクトニクス(プレート理論)によると、地球はその表面が十数枚の固い岩盤(プレート)に覆われており、このプレートがマントルの対流に乗って移動する。このマントルは一定の場所で上昇、移動、沈降(チンコウ)を繰り返す。その結果、各プレートの境界では様々な地殻変動が発生する。その1つが地震であるとする考え方である。この考えに基づくと、日本という国は、太平洋プレート、北アメリカプレート(オホーツクプレート)、フィリピン海プレートおよびユーラシアプレートの4つのプレートの境界面の上に成り立っていることになる。2011年3月11日の東日本大地震は、太平洋プレートが東北地方を乗せた北米プレートの下に潜(モグ)り込むことによって起こる海溝型地震(カイコウガタジシン)とされている。この理論から日本近海には多量のレアアースが存在する可能性が指摘できる。地球上に発生するマグニチュード7以上の地震の1割強が日本周辺で起こっていることは2011年3月コラムで指摘した。このようなリスクのマイナス面とプラス面を前提として、日本人の文化や生活は成り立っている。物事には陰陽両面がある。レアアースのニュースは巳年の始めの、陽気の側面の現れとして捉えられないか、この気を元気、勇気へと繋げる動きが日本の振れ(トレンド)となることを願う。
以上
平成25年1月