コラム KAZU'S VIEW

2004年06月

北欧の女性はかか楽か?

6月21日〜23日までノルウェーのオスロでThe Radisson SAS Park Hotelを会場として第16回International Society for Professional Innovation Management(ISPIM)が開催された。初めてのノルウェーであったが1978年より新製品開発管理の研究を指導して頂いたKnut Holtノルウェー工科大名誉教授に会うことを楽しみに日本を出発した。日本を出る時は30度近い気温であったが、到着したオスロは10度以下の雨模様が会議期間中続いた。2001年のほぼ同時期に隣のフィンランドのラッペンランタで第13回ISPIMが開催されたが、その時は夏至祭をラッペンランタ工科大学のファカルテイメンバー用サウナで真夜中の日没を感動的に楽しんだ。今回はオスロ市内にある数百年前の家々が展示されている公園で民族衣装を着た子供たちの行列とダンスをフィンランドの友人と見ながら、麦粉の煮込みを食べさせてもらった。家は日本の茅葺き屋根に似た作りで、土間の中央にいろりがあり、その上に麦粉の鍋が掛けられており、これをボランテイアの民族衣装を着た娘さんが来訪者に竹へらに乗せて振る舞っていた。日本の農家の風景と麦粉鍋の懐かしい味と相まって日本との距離を縮めて くれた。フィンランド以上に日本との近さを感じた。

ノルウェーとフィンランドはスウェーデンを挟んで隣接しているが、2002年から始まったユーロ通貨はフィンランドのみで流通し、ノルウェーとスウェーデンではユーロを使用していない。その背景にはスカンジナビア諸国が大陸主導の統合に対して共通の危惧感を持つことによるようだ。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が毎年発表する国別経済競争力調査によれば、2001年から04年までのランキングはフィンランドが3位→2位→3位→8位、ノルウェーは20位→17位→15位→17位、スウェーデンは8位→11位→12位→11位となっている。フィンランドはスオミ(湖沼)の国、サンタクロースとムーミンの国、ノルウェーはフィヨルドとバイキングの国というイメージが強い。自動車産業を持つのはスウェーデンだけである。自然と心の価値と物の価値の違いだろうか。

会議では10数年ぶりにHolt先生に会ったが、88歳を迎えても矍鑠として、現在も執筆活動を続けており、日本でも是非著書"Market Oriented Product Innovation-A Key to Survival in the Third Millennium-"を紹介して欲しい旨、依頼された。改めて、Holt先生からパワーを頂いた。会議期間中5つの招待講演があったが、特にノルウェー女子大のKirsti Kierulf学長の「イノベーションと多様化」とAbeliaという組織のPaul Chaffey支配人の「労働組合のイノベーション」が印象的であった。Kierulf女史によれば性の違いそのものがイノベーションであるとの認識から、男性が男性らしく、女性が女性らしく行動するところにイノベーションが生まれる、というメッセージであった。能登の「とと楽」、加賀の「かか楽」に通じるような気がした。また、Chaffey氏の属するAbeliaという組織名は数学者のNiels Henrik Abel(アーベル)の名前から由来するとのことであったが、数学者の労働組合というもの自体の存在が大変驚きであった。数学者はイノベータの代表的存在であることを改めて認識させられたが、未来の創造に数学者がその使命を見いだす話は大変感動的であった。その後、Chaffey氏と個人的に話をしたが、隣国スウェーデンのノーベルが数学者嫌いであったこと、そのためにノーベル賞には数学分野がないこと、その原因の1つに女性が関係するらしいことを知り、Kierulf女史とChaffey氏の話のつながりと説得性を改めて確認した。

期間中、2回のピクニックと称するイベントがあった。夜の8時頃から出かけて午前0時頃に戻るものであった。その中で肉野菜、飲み物とバーベキュー用コンロを持参し、船で30分ほど離れた島に出かけるというものがあった。このバーベキュー用コンロは豆炭6個、網とアルミホイールという簡易なものだが、これだけでビーフステーキ4人前と野菜が十分焼けるという優れものであった。使用後の処理も簡単でアルミ箔、網はリサイクル、豆炭は自然に戻すという仕掛けになっていた。フィンランドの女性の友人が「これはイノベーションだ!」と感心していた。このアイデアは女性から出たのか、男性から出たのか関心を持った。日本のIT革命はiモードから始まったが、これは日本女性のアイデアであった。フィンランドの友人にノルウェーの女性は元気がいいかと聞いたら、"Of course."と答えた。

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