第1回国際シンポジウム

「国際的科学技術倫理綱領の必要性と可能性」


シンポジウムの目的:

 科学技術に関する意思決定の結果が国境を越えて様々な影響を社会や事前環境に及ぼす今日の高度技術社会において、科学者や技術者の行動規範を文化圏を越えて考察する必要がある。本プロジェクトにおいても、アジアの価値観を反映した国際的な科学技術倫理綱領のモデル構築を目的のひとつとして研究を推進している。

 今回のシンポジウムでは、すでに国や文化圏を越えた倫理規範の明確化に向けた活動を行っている方々を招聘して、国際的科学技術倫理綱領の必要性と可能性を探る。具体的には、本年10月に採択されたユネスコの「生命倫理と人権に関する世界宣言」、2004年11月に日中韓三カ国の工学アカデミーが採択した「技術倫理宣言」、1990年代中頃に策定された北米自由貿易協定(NAFTA)加盟国における技術倫理綱領、国際的な文脈の中で制定された中国の看護倫理綱領などの起草、策定で中核的な役割を果たされた方々を招聘して、そのご経験をご紹介いただくとともに、本プロジェクトの進捗状況を報告する。また、これらの報告を基に、早くから国際的倫理綱領の可能性を検討してきた哲学者や文化人類学者を交えてパネルディスカッションを行う。

 これらの議論を通して、国際的科学技術倫理綱領の必要性と可能性を再確認するとともに、アジアの価値観を反映し、かつ実効性をもった綱領モデル策定に必要な手順・手続きを具体的に検討することを本シンポジウムの目的とする。


  1. 主催:金沢工業大学科学技術応用倫理研究所
  2. 日時:平成17年12月14日(水)午前9時半〜午後4時50分
  3. 場所:東京国際フォーラム・G-502会議室  Gブロック(ガラス棟)5階
      東京都千代田区丸の内3-5-1
      URL http://www.t-i-forum.co.jp
  4. 参加費: 無料(定員50名・先着順)
  5. プログラム:講演者紹介および演題
    9:30〜10:00 開会挨拶・プロジェクト及び本シンポジウム趣旨説明・講師紹介
    10:00〜11:00 講演1.
    Michelle Stanton Jean/モントリオール大学(ユネスコ国際生命倫理委員会委員長)
    "Towards a Declaration on Universal Norms in Bioethics: Process, Drafting and Finalization"
    「生命倫理に関する普遍的規範の宣言に向けて−そのプロセス、起草、および策定−」
    Jean先生は、ユネスコの国際生命倫理委員会委員長として、本年10月の第33回ユネスコ総会で採択された「生命倫理と人権に関する世界宣言(Universal Declaration on Bioethics and Human Rights)」の起草から策定まで中心的な役割を果たしてこられました。今回のシンポジウムでは、そのプロセスをご紹介いただきます。
    11:00〜12:00 講演2.
    Jimmy Smith/テキサス工科大学教授(Director, National Institute for Engineering Ethics and the Murdough Center for Engineering Professionalism)
    "Developing Principles of Ethical Conduct in Engineering Practice under theNorth American Free Trade Agreement"
    「北米自由貿易協定加盟国における技術倫理行動規範原理の構築」
    Smith先生は、1995年に承認されたNAFTA三カ国における技術倫理綱領の策定を主導なさいました。ご専門は土木工学ですが、現在は、全米技術倫理研究所およびマードック技術専門職センター所長として、米国土木技術者協会(ASCE)を中心とした国際的技術倫理規範の制定に向けた活動に参画していらっしゃいます。
    12:00〜13:00 昼食
    13:00〜13:45 講演3.
    Jang Gyu Lee/ソウル大学教授(韓国工学アカデミー会員)
    "A Creation of Asian Engineers' Guideline of Ethics" 「アジア技術者の倫理に関する指針作り」
    日中韓の工学アカデミーは昨年11月に協同で「技術倫理宣言」に調印し同時に付属文書として12条からなる「アジア技術者の倫理に関する指針」を発表しました。この調印に至る一連の活動でリーダーシップを取られたのが、Lee先生です。先生は、電気工学がご専門ですが、科学技術と社会との関係にも強い関心を持たれており、技術者倫理についても造詣の深い方です。
    13:45〜14:30 講演4.
    Samantha Pang, 香港理工大学看護学科科長代行・教授
    "The Development of a Code for Chinese Nurses in the Context of International Nursing Ethics Using the Delphi Technique"「デルファイ法を用いて行った、国際的看護倫理を考慮した、中国看護倫理綱領の策定」
    Pang先生は、米国、日本、香港、台湾、韓国、中国本土などにおける看護倫理の比較研究を行ってこられました。最近は、デルファイ法を用いて専門家間での看護倫理に関する価値を抽出し、その結果を基にして、中国全体での看護倫理綱領を策定に向けた努力を続けていらっしゃいます。
    14:30〜15:15 講演5.
    金光 秀和(金沢工業大学講師)
    "Towards a Global Code of Ethics for Science and Engineering" 「国際的科学技術倫理綱領の策定に向けて」
    金光講師は倫理学の専門家ですが、現在本プロジェクトの一員として主に国際的科学技術倫理綱領に関する研究を推進しています。今回のシンポジウムでは、本プロジェクトの進捗状況をご報告いたします。
    15:15〜15:30 休憩
    15:30〜16:50 パネル討論
    パネリスト
    • Michelle Stanton Jean/モントリオール大学(ユネスコ国際生命倫理委員会委員長)
    • Jimmy Smith/テキサス工科大学教授
    • Jang Gyu Lee/ソウル大学教授(韓国工学アカデミー会員)
    • Samantha Pang, 香港理工大学看護学科科長代行・教授
    • 金光 秀和(金沢工業大学講師)
    コメンテーター:
    • Heinz Luegenbiehl/ローズ・ハルマン工科大学教授・金沢工業大学科学技術応用倫理研究所客員研究員
      Leugenbiehl氏は、技術倫理を専門とする哲学者です。これまで何度も、フルブライト研究員、本学招聘教授などの立場で。何度も日本に長期滞在し技術倫理に関する教育・研究に従事してまいりました。早くから国際的倫理綱領の必要性に関して論文などを発表しております。今回のシンポジウムではコメンテーターとして議論にご参加いただきます。
    • Scott Clark/ローズ・ハルマン工科大学教授・金沢工業大学科学技術応用倫理研究所客員研究員
      クラーク氏は、アジア、特に日本を専門とする文化人類学者です。日本語に堪能で、数十回にわたり日本に滞在・訪問されおり、フルブライト研究員として日本の大企業で働く技術者の価値観に関する聞き取り調査なども行っています。今回のシンポジウムでは同じくコメンテーターとしてご参加いただきます。
    進行役:札野順/金沢工業大学教授・科学技術応用倫理研究所所長・本プロジェクト研究代表
    ※ 講演は英語で行い、必要に応じて日本語の要約を加えます。
    17:30〜19:30 講師を囲んで懇談会 国際フォーラム内ロイヤル・キャフェテリアにて