ミニ・ケース(3)

心理科学・経営情報

 あなたは心理学系の大学院を修了し,かねてから希望していた地元の経営コンサルタント会社A社に幸いにも就職できた入社二年目の社員である.あなたは,両親にとってただ一人の子どもであり,両親はあなたが地元に残り就職したことを本当に喜んでいる.あなた自身も満足している.一年目には上司である課長の下でプロジェクトの手伝いをすることばかりであったが,そこでのがんばりが認められ,このたび新しい仕事の責任者に選ばれることになった.
 その新しい仕事とは,ここ数年経営の思わしくない地元の製造業B社の業務改善のために社内アンケートを実施し,その分析と提言をおこなうというものであった.アンケート票には部署や年齢(世代)を記入する欄はあるものの,匿名回答であり個人を特定しないこと,さらに分析は完全に外部委託されてB社の関係者がデータ閲覧や分析などは行わないことが明記されていた.
 あなたがこのアンケートをB社の社員全員に対して実施して結果を分析したところ,会社の経営方針に対する強い不満が浮かび上がってきた.中でも,30代後半の数名は経営陣の交代を求めるような内容のことも記入していた.
 とりあえずB社の経営陣には,個人が特定できそうな内容は伏せて,会社の経営方針に強い不満が存在していることを報告した.すると,B社の社長が激怒し,とくに強い不満を抱いている社員をできる限り特定するとともに,データも自分に開示するようあなたに要求してきた.あなたは,アンケートの実施条件によりそれはできないと回答したが社長は納得せず,それができないのならばこれからは別の競合コンサルタント会社C社に依頼すると詰め寄ってきた.
 あなたは,とりあえずこの案件を会社に持ち帰り,上司である課長に相談した.すると,課長はあなたに,地元で生きていくためにはB社の望むようにデータ分析と開示をおこなうように求めてきた.あなたが抗議すると,課長が厳しい表情で今後の人事に響く可能性をほのめかすため,従うことにしようかと考え始めている.

 もしあなたがこの技術者の立場ならどうするか.

上に戻る


Applied Ethics Center for Engineering and Science, Kanazawa Institute of Technology
contact e-mail: aces@wwwr.kanazawa-it.ac.jp