記憶に残る風景を音で表してみましょう

このページは「まなびピア三重2000」(2000.11.4)での参加事業として企画された「音を楽しむワークショップ」での資料をもとに作成しております。

 

オノマトペってなに?

「オノマトペ[onomatopée]」とは擬音語・擬声語・擬態語のことを表す包括的な言葉(フランス語)。擬声語とは、音や人・動物の声などの様子を表す語で、「わんわん」のように同じ音の繰り返しによって表現するもの、「カーン」といったように繰り返さないものがある。

 擬態語は物事の状態や様子を、「ぴかり」「べたべた」といったように感覚的に音声化したもの。擬声語が、自然の音や人間・動物などの声を直接的に模倣するものであるのに対して、擬態語は、音には直接関係のないものの状態をイメージとして間接的に模倣し、象徴的に音として表現している点に違いがある。マンガなどで多く使用されているのは御存知の通り。

(大辞林第二版による解説を参考にしています。)

 

ねらい

 記憶の中の風景や今目前にある身近な風景を、擬音によって工夫して表現してみることで・・・

・表現を通して音に気づくことができる。

・表現された音から音の感じ方を共有することができる。

・音に対する感性、環境に対する観察眼、言葉に対する繊細な意識を育む。

 単に、文字として書いたオノマトペだけでは実はわかりにくい。それを推定し合う事でクイズ的に楽しみ、説明してもらう事で共感できる。

 

手順

(1)まずは表現してみる

 今回は記憶の中の風景を対象としますが、散歩に出たりしながらその場の風景を対象にする事もできるでしょう。

 思い出してください。楽しかったときの風景、感動した風景、懐かしい風景。そこにはきっと音が聞こえていたはずです。どんな音が聞こえていましたか?また、どんな音で表現できるでしょうか。思いつくものをすべてオノマトペで表してみましょう。

 

(2)すこし整理してみる

 場所や対象が同じもの同士をまとめたり、時間経過に沿ってならべたり、わかりやすいようにしてみましょう。そして、タイトルをつけてください。

 

(3)文字として発表!

 タイトルは書かずに、オノマトペだけを黒板(ホワイトボード、模造紙など)に書き出してみます。さて、どんな風景なのか、本人以外の皆さんは想像できますか?

 

(4)声に出して読み上げてみると・・・

 こんどは、書き出したオノマトペを声に出して読んでみましょう。声の表現力は単なる記号としての文字よりも大きいですね。イメージを広げて考えてください。

 

(5)種明かし

 最後に、タイトルと本当はどんな風景だったのかを、オノマトペではない他の普通の言葉を使って説明してください。

 さて、当たっていましたか?説明してもらって、情景が浮かんできたでしょうか?

 

まとめ

 自分以外の方の、表現の多様性を感じる事ができたでしょうか。また、自分自身の風景体験が、音を通して改めて再現されたでしょうか。オノマトペを使って音風景を取り出す事で、音の感じ方エピソードが浮かびあがってきます。

 エピソードの中からいろいろな学ぶべき事を引き出してみることも可能だと思います。

 

●参考文献

1)R.マリー・シェーファー:サウンド・エデュケーション、春秋社(1992)

2)R.マリー・シェーファー:音探しの本 リトル・サウンド・エデュケーション、春秋社(1996)

3)長谷川有機子:心の耳を育てる、音楽之友社(1998)

4)力石泰史、土田義郎:サウンド・エデュケーションの構築に関する研究-既往教育プログラムの分類・整理-、サウンドスケープ、Vol.2、pp.9-14(2000)

 

オノマトペのサンプルとして 

以下はホームページで公開している音日記の一部です。必ずオノマトペを入れるようにしています。

アドレスは、http://wwwr.kanazawa-it.ac.jp/~tsuchida/soundscape/dr2000/ です。

10/28(土)

クォンクォンクォン・・・・。

ブォー・・・・。

カタンカタン、カタンカタン、カタンカタン・・・・。

リリリリリ・・・・リリリ。

ガシャ、ジャラン。

チチチチチッ。

パタパタパタ・・・。

 

 出張で岡山県立大に行く。岡山県立大は岡山から吉備線というローカル線の服部駅の目の前だ。発表が終わって電車に乗ろうと駅に向かうと踏み切りがなり遮断機が下り始めた。どうやら、この電車には乗れそうもない。

 

 警報音は電子的に発生させているようで、カンカンカンという明瞭な響きではなく、少しこもり気味でビート(周波数の近接した2音が存在するときに生じる音の大きさの周期的なゆれ)が感じられる。遮断機が下まで降りると踏み切りの警報音は一回り小さくなった。

 

 吉備線は単線でディーゼル機関車。発車するとき、電車とは違うエンジンのうなりをたてながら発進するのが耳新しく感じてしまう。線路際の草むらから虫の声が聞こえる。もう晩秋なので虫の声も少なく弱々しい。

 

 切符の券売機が大学の食堂の食券販売機のようなもので、ボタンを押すとがしゃがしゃと何ともメカニカルな音を立てる。おつりは、一気にぽんとはじき出るように帰って来るので、音も勢いがよい。

 

 鳥が急に警戒の声を上げ、何十羽もの鳥(スズメ?)が飛び立った。一体何に驚いたのだろう。時折車が通るくらいで、とても静かでのどかなのに。あ、またスズメ達が騒いでいる。喧嘩でもしているのだろうか。

(吉備線服部駅ホームのベンチにて)