3月の日記


 

3/2(木)

チ、チ、チ。ピイー、ヨロヨロ・・・。グワァ。

朝、庭先で鳥の声がした。あまり鳥には詳しくないので何の鳥かわからないが、今まで冬の間聞いたことのない声だ。まだ雪は多く残っているが、春を感じさせる鳴き声だった。

大学の建物の上でとんびがしきりに鳴いている。見上げると、2匹のとんびがたくさんのカラスに囲まれている。とんびが飛び上がって威嚇すると、一度は逃げるが、その間に別のカラスが近づいてくる。カラスはほとんど声を上げず、小さく低く鳴く。不気味な包囲網だ。

もしかしたら、あの2匹のとんびはつがいで、コンクリートの校舎の庇にでも巣を作っていたのかもしれない。カラスは、その卵か雛を狙っているんじゃないか?

なんて、考えて立ち止まって見ていたが、学生たちは気づきもしない。まあ、今日は工学設計3(卒業研究に相当)の学外公開日で浮き足立っているからな。

3/5(日)

BGM(ディズニーのハッピーバースデー、寺の鐘)。

地元の新聞に、次男が生まれた産院の院長が書いているコーナーがある(北國新聞生活欄「杉浦幸一の診察室の窓」)。今日その欄を見ていたら次男が生まれたころを思い出した。その病院では赤ちゃんが生まれると、ディズニーのハッピーバースデーの曲を院内に流す。その産院にくるひとはみなそれを知っていて、特殊な時間と気持ちの共有化がされている。

その記事によると、一度間違えて隣のチャンネルに入っていた寺の鐘が流れてしまったことがあるという。何か良くないことを連想してしまったのだろうか。そのときは大騒ぎになってしまったそうだ。

音はTPOを間違えると大変だ。

3/7(火)

カラン、,コロン(記憶の音)。

高校のころ、反抗期というのもあったのだろうが、人とずいぶん違うことをしていた。たとえば、風呂敷で学校に通っていた。アナクロなことをあえてしてみたかった。それから、下駄が好きだった。さすがに学校にははいて行かなかったが、下駄をはいて歩く感じが心地よかった。

大学の恩師が学生時代のこと、下駄で大学に行ったら「この建築と下駄がマッチするか」と建築学科の先生に怒られたという話をしていた。東京大学の建築学科の建物は当時の最先端の技術と様式の建築だったろう。近代建築の先進的素材である鉄筋コンクリートの西洋建築。固い床と壁と天井。高い天井、長い廊下。そこを下駄で歩いたならば、確かに音は響き渡ってうるさいことだろう。

しかし、もう少し巨視的に見れば、日本という風土にその建築がマッチしていたのかという問題が沸きあがってくる。下駄が伝統的日本の文化とすればそれに合わせた建築が望まれるのではないか?洋服、革靴の文化が高級で、和服、下駄履きの文化が低級という思潮が明治以降主流であり、それには抗い得なかったのだろう。彼の先生はそのことについては何にも感じなかったのであろうか。今でも古いものはだめで、主流で無いものはだめという寄らば大樹の考え方が強いだろう。

今は、ユニバーサルデザインというような考え方もあるが、一方で地域の特性を生かしていったり、環境への配慮が必要であったり、そろそろ転換点に来ている。

金沢では下駄の歯の間に詰まった雪を落とすための石が街角にある。(名前があったが思い出せない。)高さ10cmくらい。最近はほとんど見ない。雪の量が減ったこともあるし、路面融雪装置や除雪車が普及したこともある。

3/8(水)

ブーン・・・・。・・・・・。

今日は東京に出張できている。ホテルの中で基調音として聞こえた音は冷蔵庫の音だけだった。時折他の宿泊客の廊下を歩く音や、給排水音も聞こえてきたが、迷惑なレベルではない。

ホテルというと大概高層になっていて5階以上の階にとまることが多いのだが、今日泊まったホテルは地下にも客室がある。その地下3階に泊まった。地下といっても中庭になったドライエリアがもうけてあり、そこに窓が面するように客室が並んでいる。陽射しは強くないが不快ではない。地下と言う事でかえって冷暖房負荷は小さいかもしれない。実際、エアコンは作動させずにいても室温は20度を越えていた。

すぐそばに首都高速道路があるのだが全く聞こえてこない。敷地外に向かって開口を採らず、かつ開口部の窓も遮音性に優れた気密サッシュを使用しているようだ。中庭側に向けて開口部を採っていることは、ごみごみしたところでは眺望の点からも良い。ただ、向かい合う客室相互のプライバシーと言う点で少し問題がある。カーテンを開けっ放しにはできない。

3/10(金)

がさがさ。パチン。

今日は今年度の4年生との最後のゼミ。ゼミ室を掃除して、提出物を確認して、菓子と飲み物で簡単な打ち上げとした。途中で何人かの学生が部屋から出ていった時は、たばこでも吸いにいったのかと思ったが、戻ってきたとき花束を抱えていた。

びっくりした。今までの学生でそういうことをしてくれたことはなかったので、とても嬉しかった。いろいろな花がぎっしり束になったそれは、がさがさと腕の中で揺れ、ふうわりとした花の匂いがあたりに満ちた。

自宅に戻って、長持ちするように水切りをして、花瓶に生けた。

3/12(日)

ピチャピチャ・・・。

それは春の音だと思った。

北陸鉄道の終着駅の「加賀一ノ宮」に列車が滑り込み、あまり多くはない乗客が降りる。駅舎の屋根には雪がまだ積もっているが、それは少しづつ解け出してホームの端に滴り落ちている。その雫の音を聞いていると、春がもうそこまで来ていることをまざまざと感じたのだ。

神社の参道へ向かう。参道の脇には水路がある。その水路にも雪解けの水が勢いよく流れている。にぎやかなせせらぎに、神社の山の静けさが際立つ。春の予感に満ちていた。

3/15(水)

(駅のアナウンス)

今日は音響学会の春季研究発表会で、日本大学船橋校舎へ出張。都営浅草線に乗った。駅につくと車内アナウンスで駅名が告げられ、ドアが開くとホームでも駅によるアナウンス。駅にいる人にとってもうそこはどこか分かっているはずだから、駅の構内では駅名のアナウンスは不要なのでは???

3/16(木)

(ガムランの音)

音響学会の懇親会に参加。ガムランの演奏が今年の目玉。日本ではまだあまり聞けない地方のガムランだという。金属製のゴングではなく竹の木琴のようなものと、青銅製の物を使ったものとを演奏していた。

国立博物館でかつて中国の編鐘の演奏を聞いたことがあるが、アンサンブルや間のとり方が似ているような気がする。ガムランの起源は、インド音楽と中国音楽にあるのでどこかでつながっているのかもしれない。

3/18(土)

(シンセサイザーのプリセット音)

子どもたちが居間にあるシンセサイザーを弾いて遊んでいる。見ていてふと思い出した。私の小学生のころ、教室には必ず足踏み式のオルガンがあった。休み時間などに自由に弾いてよかったが、たいていは女の子達が占領して、どうしても気後れがしてしまって弾きたいなと思ってもなかなか弾くことができなかった。

また、ピアノなどを習っている上手な子がいると「すごいなあ」と思って見ていた。自分も少しだけピアノを習ったが、遊びの方が大事だったので1年で止めてしまった。これは今でも後悔している。

3/19(日)

カラン。ギッ。

もうあまり雪は降らない時期になったので、車のタイヤをスタッドレスからノーマルに替えた。休日の朝に響く音は、レンチをコンクリート面に置く音。それと、きつく締まったナットを緩める最初の音。明日は春分の日。

3/20(月)

ザー・・・、ザー・・・。

今日は家族で能登のほうへ行って遊んだ。志賀町にある電力会社の広報施設のアリス館というところで、アニメを見たり、変わった自転車に乗ったりした。

帰り際に、ユーフォリア羽咋というクアハウス的な温泉に入った。そこには露天風呂もある。能登有料道路のそばなので、車が走る音が聞こえる。その向こうは日本海だが波音は聞こえない。

3/22(水)

ウイーン、ジュリジュリ・・・・。

床屋へ行った。もう春だし思いきって刈り上げた。バリカンは見る見るうちに髪をすっきりさせてくれる。頭の中まですっきりすると良いんだがな。

3/23(木)

フウーン・・・。

今日の音日記も自宅に持ち帰ったノートパソコンで書いている。家の中は静かなのでパソコンのファンの音が大きく聞こえる。とても小さいファンで音も小さい方だとは思うが、周りが静かだと意外と耳につく。

普段使うパソコンは、職場で使う人なら普通は据え置き型のものが多いだろう。でも最近はノート型の売れ行きも多いときく。これは家庭で使う上で据え置き型だと大きすぎるからだろう。私も昨年からノート型を主に使っている。これだとやりかけの仕事をパソコンごと持ち運べるので、フロッピーに収まりきらないデータを扱わなくてはならないこともある現状ではとても楽だ。

3/25(土)

シム・・・、シム・・・。

子どものサッカーの試合のため、小松市の粟津公園に行った。グラウンドの周りは松林のようになっている。町の名前もずばり松生町。

ここは、木場潟と柴山潟の間の平地なのだが、かつては一つながりの川の流域だったのではないだろうか。近くに津波倉という地名もある。川沿いだったことを髣髴とさせる。その松林の土は枯れた松葉が積もり、歩くと足の裏に踏みしだく音がする。ふわっとからだが沈み込む。

3/28(火)

シュー。カキン、・・・カキン。

大学の中の暖房は基本的には今もスチームを使っている。ファンコイルユニットからは絶え間無くシューと音がしているが、エアコンで暖めた空気を吹き出すよりかは静かだと思う。ただ、暖房の開始時にスチームハンマーのカキンカキンという衝撃音がかなり気になるし、温度分布も不均一で微妙な温度調節ができないという点が不満。

3/30(木)

ザザザ・・・。

大学のすぐ脇を高橋川という小さな川が流れている。私の部屋からもすぐ見える位置にある。だいぶ暖かな気候になって、水量も心なしか増えてきたようだ。部屋から見て少し上流側に堰が設けられているのだが、その堰を流れ落ちる水音が若干大きく聞こえる。

コンクリート3面張りの川だが、最近は中州を作って自然の草が生えるようにしたり、水鳥が休めるようにしたり、川の整備の仕方がかつてと少しづつ変わってきたようだ。


最終更新日 : 2000/10/05.