1月の日記


1/2(日)

がらがら。ザザーン。カチカチ。

妻と2人の子ども(小3と年長)とルナ(家で買っている柴犬。生後5ヶ月)といっしょに車で近くの海岸まで遊びに行った。

そこは砂利混じりの砂浜で、日本海の波が打ち寄せるので、沖合い数十メートルのところにテトラポットが設置されている。今日は結構波が強くテトラポットには打ちつける波しぶきが散る。浜の砂利は5から10センチくらいのサイズの石が多い。みんなで順番に石を積んで崩れた人が負けという遊びをしてみた。北陸には珍しい快晴で暖かい。

1/3(月)

パラパラ。ザクザク。ショリショリ。(子どもたちの歓声)。シューン。(BGM)。

ルナをつれて今度は雪山へ。瀬女(せな)高原の駐車場(!)とソリゲレンデ脇の土手で遊んだ。暖かいので雪ではなく霰まじりの雨という天候。雪もだいぶ柔かい。ルナは雪を食べている。子どもたちはそりや雪合戦。ゲレンデに人は少ない。BGMが寂しげに響く。

1/4(火)

ピーピー、ピーピー。カサッ、パタパタパタ。経を読む声。カーン。ゴー、ブオーン。ピーポーピーポー。「はいそこの○○、××しなさい」。

子どもは子ども同士で遊んでいるので、今日は夫婦2人で卯辰山を散策しようと出かけた。

菖蒲園脇の駐車場に車を止め、宝泉寺へと向かった。東山から子来坂を登ると表に出るが、こちら側からだと寺の裏手から入ることになる。入ったところは少し広場になっている。梢に何の鳥かわからないがしきりに囀っていた。足を止めて見上げたとたん、鳥たちは鳴くのをやめ、飛び去る鳥も何羽かいた。鳥も関心を持たれているかいないかの気配を、敏感に察しているようだ。

寺の脇まで来ると中でお勤めをしているらしき音がした。正月も、いや正月だからこそしなくてはならないことがきっとあるのだろう。

寺の入り口側に出ると、浅野川が眼下に流れ、市街を一望できる。いろんなところからの音が聞こえる。特に目立ったのは、浅野川大橋をわたる車の流れ。パトカーのサイレンと警察官の拡声音。

山の上は風が強いものだが、今日は暖かく穏やかだった。名刹となっている五本松(雪によって折れたのか根元から5つに枝別れしている松)は揺れもせず。

1/5(水)

ピンポーン。「やあっ!」。

去年の夏、川崎に引っ越してしまった近所の子(Kくんとしておきます)が今日遊びにくるというので、朝から子供はなんだかそわそわしている。玄関のチャイムが鳴った。あわてて玄関に行くとドアをあけた。K君が「やあっ!」といって入ってきた。半年会っていなかったのがうそのように。

夏休みの終わりごろ、K君は引っ越すのがいやで、最後までうちで遊んでいた。もう出発するというのでお母さんが迎えに来ると、玄関先の地べたに座りこんで泣いた。サンダルを投げ出して地団駄を踏んだ。その様子を見てとても切なくなったのを思い出した。

1/8(土)

シュー。バシュ。ザァーン。ゴーゥ。グォングォングォン……。

この冬はまだ牡蠣を食べていなかった。焼き牡蠣は金沢に来てからの大好物となったので、いつ行こうかと考えていた。思い立ったが吉日、朝、穴水のKという店に電話して昼の牡蠣づくしコースを予約して家族4人で出掛けた。

テーブルについて炭火の上に殻つきの牡蠣を並べる。しばらくすると、殻が開いて中の水が火の上に落ちると、シューと音がして灰が舞い上がる。殻が焼けてくると中にははぜるからもある。子どもたちにその熱湯がかかってしまい、長男は首筋、次男は頬に小さなやけどを負ってしまった。

帰りは、巌門というところに寄った。冬の日本海は波が荒い。今日は風が強く、海は荒れ模様であった。崖下まで階段を降りて行くと、波が大きく砕けるのが間近に見られる。海が泡立って海岸が白くなっている。振り返ると「波の華」が舞っていた。テレビで見たことはあったが、実際に見るのははじめてだった。風と波の砕ける音の交じり合った音が耳元でゴウゴウと鳴っていた。

そのあと、「アリス館志賀」という志賀原発に付属する広報のための施設に寄った。ここは子どもたちが楽しく遊べ、原子力についての勉強をできるようになっている。もう閉館時刻を過ぎていたので、中には入れなかったが風船と文房具のプレゼントをいただいた。(あとでこの日は今年になって新装オープンの日だった事を知った。)

すぐ側には、風力発電のプロペラが回っている。少し無気味な音だ。が、東海村の臨界事故をはじめ、事故の続く原発より、実態は全く恐ろしいものではないだろう。

1/9(日)

ウー・・・ウー・・・。ザクッ。ガサッ。ワウッワウッ。ヮゥ、ヮゥヮゥ・・・

午後、家族全員とルナと散歩に出かけた。外では消防車のサイレンが鳴っている。私たちが住んでいるのは山と平地の境目なので、少し山の方へ歩くとずいぶんと見晴らしがよくなる。

山に隣接した空き地があり、そこで何人かの若者がスコップを持って何かをしている。近づくとMTBのモトクロスコースを作っていることがわかった。走っている自転車も何台かいる。

東京に住んでいたころ、荒川の河川敷でオートバイのモトクロスの練習をしているのを見かけたことがある。オートバイと違って自転車は音がほとんどしないのでその走っている躍動感とのバランスがとても不思議な感じがする。

犬を連れて散歩していると、よその犬が吠えてきたりする。その鳴き声を聞きつけると、それがほかの遠くの犬にも連鎖して、まわり中犬の声に囲まれてしまった。

まだ、サイレンが鳴っていた。いったいどこが火事だったのだろう。

1/10(月・成人の日)

キュ、キュ、キュ・・・。

夜、大学で仕事をすることになって、9時ごろ研究室についた。どこかの研究室の学生はちらほら見かけたが、教員はまったく居らず建物の廊下は静かだった。自分のラバー底の靴音だけが響く。

1/12(水)

カーカー。ヵーヵー。

今朝は少々冷え込んだ。雪は降っていない。朝6:30ごろからカラスがずいぶんにぎやかだ。近所の公園の植え込みに巣を作っているカラスがいるが、そのカラスたちだろうか。今日はいったいどうしたんだ。

1/13(木)

ザー。ジャワジャワ。「・・・早く来ないと言っちゃうよ・・・」

子どもたちを寝かせに(といってももういっしょに寝たりはしないが)子供部屋へ行き、一息ついて風呂に入った。湯は新しく、気分のよい湯だ。

遠くからやきいも屋さんの声が聞こえてきた。そのほかに聞こえる音もなく、冬の夜を感じさせてくれる。きっとテープの音をスピーカから流しているだけだが、ずーっと同じ呼び声ではなく、余りしつこさを感じさせないような工夫がされている。昔はもっと単純だったカナ。同じような調子なんだが、音程やせりふが所々予想と外れてくるところがある。こういうのも1/f揺らぎかもしれない!?

1/14(金)

ヒュ−。

朝、風の音を耳にした。それほど強い風がずっと吹いているわけではないが、時折巻き起こる風だ。東の空を見ると、まだ朝焼けの色が残った雲がずんずんと流れていた。

1/15(土)

ズー、コロン。ウーウヮン。コンコン。

夜の11時をまわっているのに、犬のルナはまだ起きている気配がする。庭のコンクリートのテラスでプラスチックでできた餌の皿を引きずっている音がして、2、3回小さく吠えた。独りで遊んでいるのか、家族を呼んでいるのか、それとも誰かが近くを通ったのか。

夜の天気予報によると、明日の朝は2℃くらいと少し冷え込みそうだ。今までルナが使っていた毛布が今日の昼の雨でぬれてしまったのを思い出し、予備の毛布を入れてやった。小屋に入れたと思ったらすぐに引き出して振り回したりにおいをかいだりしている。「小屋に入れておきな」という意味で小屋をたたいて声をかけたが、そんなことがわかるはずもない。

1/16(日)

カツカツカツ。シャーァ、シャーァ。大人や子供の歓声。BGM(キンキキッズ、郷ひろみ、椎名林檎ほか)。パチパチ。ボンッ。パッ。

富山県の福岡町に屋外スケートリンクがある。今年は暖冬なのでやっているか心配だったが、朝電話をしてみると大丈夫だというので朝からでかけた。上の子は何度か来ているので(といっても年に一度くらいなのだが)だいぶ上手になっている。小さなリンクだがそれほど込み合うわけでもなく、ほどよい賑わいだ。

帰り道、うちの近くまで来ると小学校の方向で煙が上がっている。今日は「左義長」の日だった。書き初めや、正月のしめ飾りを持ちよって燃やす。もちを焼いて食べたりするのだが、そこは簡略化して学校のピロティーでぜんざいを作ってふるまう。我が家も家に帰ってすぐ学校の校庭に書き初めを持っていった。

校庭の真ん中では、竹をピラミッドのような形の櫓に組み、その真ん中でもうどんどん燃やしている。最近はダイオキシンが発生しないよう、しめ飾りのプラスティックは消防団の人や町会の係りの人達が外している。火を見ていると、時折竹の節のはぜる大きな音がしてびっくりさせられる。火の粉や灰が空に舞う。

1/17(月)

キイーン、ゴウウウウ・・・・。

今日は、東京出張のため、マイカーで小松空港へ行く。空港の駐車場に入ると、ちょうど自衛隊のジェット機が離陸したところだった。その轟音で車のカセットテープの音がマスキングされて聞こえなくなった。思考が一瞬止まったように感じる。

小松空港は民間と自衛隊が滑走路を共用している。近くに住んでいる人たちは結構うるさいはずだ。地元では以前からもめているのだが、現状はまったく変わっていないようだ。旅客機はかなり静かになった。また、潜水艦はソナーで探知されないよう、静かなスクリューが開発されたりしているが、戦闘機の場合はやはり静けさより飛行性能を優先してつくられているんだろう。

1/18(火)

ガタッ、・・・ガタガタガタ・・・・。

地震だった。最初にぐらっときて、少し間を置いて小さくどどどっと揺れる。昨日が阪神大震災から5年目だったことを思い出し、大きな地震だったらどうしようと一瞬不安になる。すぐにおさまって一安心。

おとといの夜あたりから、テレビは震災についての特集が多い。肉親をなくしたり、財産をすべて失ったり、そういった傷跡は5年程度では癒されるのもではないのだという。建築的な視点からすると、親しんだ風景を失ったことは非常に喪失感が大きいそうだ。また、コミュニティーをいかに再生するか、などかかえる問題は広くて深い。

1/19(水)

パラパラ・・・、バラバラバラッ。

今朝は少し冷え込んだ。車のウインドウに朝、霜がこびりついていた。道路側の窓だけなのは放射冷却のせいだろう。

朝は晴れていたが、午後になると雲が出てきた。ふと気がつくと、窓をばらばらと打つ音がしている。霰が降ってきたのだろう。雨とは明らかに違う硬質な音だ。

1/20(木)

ヒュウーゥー。ガラガラッ、ドドーン。パラパラパラ。カリカリ。ブーン。

天気が荒れてきた。窓に吹きつける風が大きな不気味な音をたてる。

講義でサウンドエデュケーションの話をした。イヤークリーニングの演習のため3分間静かに音を聞いていることにしたとたん、雷鳴がとどろいた。確実に聞こえた中で一番大きな音になっただろう。

一方、一番小さな音は何だったかを聞いてみると人にとって結構ばらばらである。「霰が窓をたたく音」「鉛筆で書き込む音」「蛍光灯のブーンといううなり」などいろいろな答えが返ってくる。

1/21(金)

パリッ。

思いもよらない音が出た。車の中に置いてあったガムは寒さで硬くなり、噛むとはじけるように割れた。降る雪も、金沢では珍しくさらさらなのは、温度が低いということだろう。

1/22(土)

バリッ、バリッ。

雪が凍って固い。

1/23(日)

キリーン、キリーン。ココココ、ココッコリン。

今日は富山で遊んだ。まず、朝から先週に引き続きスケートをしに行く。実は先週子供が上着を忘れていてしまったので、それを取りに行くだけのつもりだったのだが。

そして、小杉にある太閤山の子供未来館で工作をした。コリントボックス、ウインドベルを子どもたちが作った。ウインドベルは長さの異なるアルミ板を6枚筒の周上に並べ、真ん中に大きなワッシャーを吊るしたもの。本物のウインドベルのような澄んだ響きは得られないが、なかなかおもしろい。コリントボックスは細長い板に釘を等間隔に打ちつけ、ビーダマを上から転がすもの。釘にはじかれる玉の動きと軽い響きがおもしろい。

材質を工夫すれば同じような仕掛けでレインスティック(竹筒に棒を多数差し、中に小石をたくさん入れ、雨垂れの音がする音具)も作れそうな気がする。

1/24(月)

カチッ、シュー、バゥッ。ポッ、ポッ、ポッ。

雪ならば、服についた雪を払い落とせばよいので、傘をささなくともいい。でも今日は雨になってしまった。研究室のある建物を出て傘を開いた。スプリングの入ったジャンプ傘は、バゥッと小気味よい音を立てて勢いよく開く。雨はそれほど強くはない。雫が静かに傘を打つ。

1/26(水)

ンー、パリ、ウイーン。

雪と寒さで車の窓が凍ってしまったようだ。パワーウインドウを下げるとき苦しそうにあいた。決してヨーロッパの都市の名前を言っているわけではない。

1/27(木)

ピー、ピー。ピ、ピ、ピ、ピ。ゴボッ、ゴホー。

出張で建築会館へ行く。早めに着いたので談話室で他の先生と話していたところ、給茶機からピーピーと音がする。しばらくするとテンポが少し早くなってきた。けれどいったい何の合図かわからない。そのうちごぼごぼと音がして給茶口から少し湯(茶?)が漏れ出た。

推察するに、きっと保温されていた湯がなくなって水が補給されたのだと思う。近くに行ってランプかなんかのサインを確認すればわかったのかもしれないが、自動的に終わる作業に対してサイン音は必要なかったんじゃないかと思う。

1/29(土)

ザワザワ、ガヤガヤ。カシャッ。バリッ、バリッ。(人の楽しそうな話し声)

白峰村で今週は雪だるまウイークというイベントを行っている。今年は雪だるまがよく見えるようにライトアップをしたいとのことで関係者の方から少し相談を受けたこともあって、とても気になった。今日は最終日だが夕方から家族で見にいった。

村内は細く微妙に曲がった道が続いている。道の奥に広がる光はほのかにあたたかく、派手すぎることもなくよかったと思う。

さて、イベント自体だが、結構な人出でいつもはきっと静かな街並みがどこからとなく響く人の声で満ちていた。一眼レフを携えて写真を撮る人が多く、シャッタの音がしていた。(自分もカメラを持って来ていたが。)今年は雪が少ないといっても日が暮れると凍えるようにさむく、道はカリカリに凍って固まった雪を踏む音がする。

出店も地元の人達で出していて、そのにおい(焼き鳥とか甘酒)がかじかんだ感覚を和らげてくれる。道行く人は皆楽しそうだ。通りすがりに「楽しかったぁ」という声を聞いた。村民1人につき1個の雪だるまをそれぞれのうちの前に作って置く。それだけのことだが、素朴で個性的な雪だるまを見るのはとても楽しい。けっこう遠くからも見に来る人が増えてきたようだ。全国ネットのテレビに紹介されたりもしている。(島崎和歌子さんを見かけた。)

1/30(日)

チャーーーー。ザザザッ。

川北温泉に行く。洗い場のシャワーのうちの一つが調子悪く、出っぱなしになっていた。押すと一定時間だけ湯が出る水栓は、こういう場合にどうしてよいのかわからない。

買い物をしてから、ルナを車に乗せて山で散歩。私は、眠さが先に立ち車の中にいた。木の枝葉にたまっていた雨が、風で落ちてきて車の屋根を打つ。ルナと遊ぶ家族の声がする。


最終更新日 : 2000/10/05.