1. 作品の背景

  2. 作品の目的

作品の背景

 近年サウンドスケープという言葉が使われるようになってきた。サウンドスケープとは簡単に訳せば「音の風景」である。「音」だけであればその意味はなにかの音というように、個々の音である。「音の風景」とはそれら個々の音が組み合わされた音環境全体のことである。音を風景としてとらえるということは、音に対しての意識が強くなければできない。

 

環境庁は、新しい音環境保全対策の一環として、環境負荷の少ない経済社会づくり、自然と人間との共生、あらゆる主体の参加等の目標を掲げた「環境基本計画」の趣旨を踏まえ、残したい“日本の音風景100選”事業を行った。これは、全国各地で人々が地域のシンボルとして大切にし、将来に残していきたいと願っている音の聞こえる環境(音風景)を広く公募し、音環境を保全する上で特に意義があると認められるもの100件程度を認定しようとするものであり、その主な狙いは「日常生活の中で耳を澄ませば聞えてくる様々な音についての再発見を促す」こと、「良好な音環境を保全するための地域に根ざした取組を支援する」こととなっている。


応募された全案件について、

(1)公募の基本的要件との整合性
(2)人との接点
(3)音の状況
(4)音環境を保全しようとする取組の状況、を評価するとともに、音環境に対する「人々のかかわり」、日本の音風景の「多様性」等の点を特に重視して“100選”の選定審査が行われる。

金沢市は観光地として全国的にも有名である。ところが過去のアンケートのよれば、住民は観光地というイメージより、田舎というイメージを持っている人が金沢の中心部にもいる。人口の増加などに伴う自動車、住宅地の増加から、騒音と言われる音が増えている。その反面、市民、観光客ともに音に対して人々の意識はあまりない。
金沢には、古都金沢らしさの感じられる音が多くある。例を挙げれば、金沢には川や用水といった水が豊富な都市である。しかし、普段の生活では水の音に耳を傾けるなどということはないであろう。
それに兼六園の雪吊りなども知ってはいるが、実際に見たことのない人もいるのが現状である。



作品の目的

人口の増加などに伴う自動車、住宅地の増加から、騒音と言われる音が増えている。騒音に対する意識はある。しかし市民、観光客ともに音の風景に対しての意識はあまりない。

平成9年の金沢市の公害の苦情件数を、 図1(参考資料 2)に表した。 騒音による苦情件数はその他を除いた6項目のうち、大気汚染の次に悪臭と並んで多い。
騒音についての苦情相談の内容としては、工場・事業場からのもの、屋外での建設作業によるもの、家庭や飲食店の音響装置、宣伝カーの拡声器によるものがある。
近年では家庭のボイラー・クーラーからの騒音が多くなっている。

1996年に行われた金沢市周辺の居住環境と音環境に対する意識調査より、自宅周辺で聞こえる音についてのアンケート結果を 図2 図3 図4 図5 図6 (参考資料 1)に表した。

自宅周辺でよく聞こえる音は、「車の音」が一番多い。その中でも中心部の住民が一番に車の音がよく聞こえると認識している。うるさく感じる音でも車の音が一番多い。
好感の持てる音では「鳥の鳴き声」が一番多い。実際に聞く機会の少ない中心部ほど多くなっている。しかし、金沢らしい音は「川のせせらぎ」、「水の音」が多く、川や用水の多い金沢らしい回答である。
金沢市は観光地として全国的にも有名である。しかし図4より、住民は観光地というイメージより、古都、城下町といった観光客が持っているようなイメージと同じように金沢を考えている。田舎というイメージを持っている人が金沢の中心部にいるが、これは実際に聞く機会の少ない中心部ほど多くなっている。これは実際に聞く機会の少ない人が金沢らしいというイメージを持ってみているためだと考えられる。

日本の音風景100選に選ばれている「本多の森の蝉しぐれ」、「寺町寺院群の鐘の音」を含め、金沢で聞くことのできる音を探し、車の音などの騒音を含めた音を、新旧市街地において撮影、録音する。また写真だけでなく、ビデオにとることによって風景でなく、音風景として、HTML形式で紹介できるCD−ROMを作成することを目的とする。




図1 公害の苦情件数(平成9年)


図2 よく聞こえる音



図3 うるさく感じる音



図4 好感の持てる音



図5 金沢についてのイメージ



図6 金沢らしさを感じる音


参考資料
1)土田義郎:金沢市周辺の居住環境と音環境に対する意識調査,日本音響学会 騒音・振動研究委員会資料 N-96-04 p.5−7(1996)

2) いいねっと金沢:http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/kanho/hakusho/index.html