PAC-Assist2

 

PAC-Assistは、被験者の認知構造を解明する面接手法であるPAC分析を支援するWindows用のソフトウェアです。PAC分析支援ツールとして2003年からの実績があります。自由連想項目の一対比較による非類似度の入力をパソコン上で確実に実施することができます。

得られた非類似度行列は、別途統計ソフトを用いたクラスター分析によって、デンドログラムを描きインタビューに用います。

2016年に重複グループ化法(クラスター分析を用いない方法)をそのまま一連の手続きとして実施できるようにいたしました。メジャーバージョンアップということで、名称はPAC-Assist2としています。もちろん従来のクラスター分析へも持ってゆくことができます。

ここでは、本ツールの概要と操作方法を説明します。本体にヘルプファイルなどはないので、このページを参照してください。

 

 

1.本ソフトウェアについて

1.1 PAC分析とは

1.2 重複グループ化法とは

1.3 開発の目的

1.4 特徴

1.5 著作権および入手法

1.6 必要な環境

1.7 履歴

 

2.PAC-AssistUの操作手順

2.1 ご利用の前に

2.2 自由連想語の入力

2.3 項目間の類似度比較

2.4 グループ化の基準値の設定

2.5 非類似度行列の表示

2.5.1 非類似度行列(raw)

2.5.2 非類似度行列(対称化)

2.5.3 非類似度行列(並び替え)

2.6 グループ化の実行

2.6´ 独立項目に対する処置

2.7 グループ形成理由の記述

2.8 グループ関連図

2.9 その他の機能

 

参考文献

 

 

1.本ソフトウェアについて

1.1 PAC分析とは

PACとはPersonal Attitude Constructという意味で、個人の認識の構造を指します。日本語でいうと「個人別態度構造」となります。内藤哲雄先生(信州大学)が個人の心理分析を模索する中で開発した方法です[1]

 

一般的に、認知の構造を特定個人について求める場合、論理的な認識が容易な対象については評価グリッド法のような方法が有効です。しかし、論理構造があいまいであったり、ふだん意識していない潜在的な部分を浮かび上がらせようとしたりすると、被験者自身の論理的思考では困難であることがあります[2]

 

このような場合に、非論理的な自由連想からはじめて、類似度を考えさせ、それを用いたクラスター分析を現象学的立場から被験者と実験者が共に問題を共有するというこの方法が有効な場合があります。現象学的立場から徐々に意識の階層構造を推定していくという手法は、実験的心理学の中ではあまり見られません。

 

1.2 重複グループ化法とは

一般的なPAC分析で用いられるクラスター分析には多次元的な概念が抽出できないという欠点があります。そこで我々はクラスター分析を用いないグループ化法である重複グループ化法という手法を考案しました[3]。ここで紹介するソフトでは、それをExcelのマクロ(VBA)によって実装しています。

 

この手法では、個々の連想項目に対して類似度の高い項目同士をグループとするため、同じ項目が複数回別の項目と同一のグループに属することが可能となり、多くの上位概念を抽出することができます。したがって、クラスター分析と同等以上の結果を得ることが期待できます。とにかく、様々な評価軸(物事の考え方や感じ方)を導き出したいという場合に適する手法といえます。

 

このソフトウェアでは重複グループ化法を用いてPAC分析を行うための一連の手続きとして完結しており、他の統計ソフトなどを用いる必要はありません。また、従来同様にクラスター分析を用いる方法に対しても適用可能なツールとなっています。クラスター分析を行う場合は、中間データの非類似度行列をテキストとして保存したうえで、別途統計処理を行ってください。この場合は、従来のPAC-Assistと変わりありません。

 

1.3 開発の目的

PAC分析ではカードを用いて連想語を記録・提示します。しかし、紙のカードを使用したPAC分析では、項目が多くなった場合にかなり作業量が多くなり、被験者が疲れてしまって妥当性の低い回答をしてしまうことが考えられます。また、提示順序も完全にランダムにすることは手作業では難しく、カードと照らし合わせながら記録していく中で、間違った入力をしてしまう可能性もあります。このような問題点をできるだけ少なくするような支援ツールを、パソコン上で実現いたしました。

 

また、重複グループ化法は途中で計算を必要とします。そのため、それをプログラム上で行うことで直観的な操作を阻害することなくスムーズに認知構造が導出できるものとして開発いたしました。

 

1.4 特徴

最低限の教示は画面に示されているので、ある程度手順を被験者にのみ込んでもらえれば被験者自身で入力することができます。そのため、手順がかなりスムーズになります。どうしてもパソコンになじめない被験者に対しては、画面を見せながら実験者が操作するという方法も可能です。

 

PAC分析では、被験者は関連の強さを数字に置き換えて表現するのですが、数字に置き換えるというのは実は論理的な思考も必要です。スクロールバーを使ってビジュアルに入力させることで、より直感的な関連性の強さを表すことが可能となります。

 

スクロールバーには10段階のスケールを目安のために付していますが、数値処理上は1000段階の分解能を持っています。このソフトは分解能が高く、同一の値を持つペアの存在確率を小さくすることができます。また、スクロールバーで被験者が直接操作するので、実験者の手続き上の勘違いなどによる入力のミスが少なくなります。結果として、精度のよい分析を短時間で実現できます。

 

自由連想した項目のカードの呈示順は、人間がランダムに提示しようとしてもどうしても偏りがでてしまいます。しかし、パソコンを使用することで完全にランダムに呈示することができます。

 

このソフトウェアではクラスター分析は用いず、重複グループ化法によって認知構造を確定します。ですが、類似度比較により得られた非類似度行列は『R』など他のクラスター分析が行えるソフトウェア上で利用することができます。

 

1.5 著作権および入手法

著作権は土田個人が保有します。このファイルに含まれるマクロ(VBA)は個人的な使用に限り、フリーウエアとして制限なく使ってかまいませんが、その結果の公表に当たっては使用者の責任にて行ってください。プログラムを改造しての利用についても自由ですが、制作結果に応じた著作権および出典の表示は行ってください。また、改造したものに関する責任も著作権者には一切ないものとします。一応パスワードをかけておりますので、ソースを見たい場合はご連絡ください。

 

どなたが使用されているか把握したいので、web上からダウンロードできるようにはいたしておりません。当方までメールをください。感想・要望などもいただければと思います。(必ずしも要望が反映されるとは限りませんが)

 

また、PAC-Assist2として重複グループ化法を実装するにあたっては、2015年度のゼミ生であった松井翔太郎氏、森田晃氏の努力なしには実現しませんでした[4]。両氏にはこの場を借りて深謝いたします。

 

1.6 必要な環境

WindowsMicrosoft EXCEL 2013にて動作確認をしております。セキュリティーセンターよりマクロの設定を「すべてのマクロを有効にする」にして動作させてください。

 

1.7 履歴

2016/03/30 PAC-Assist2(ver.20160330)の公開。

2016/02/18 自由連想項目を50個まで対応可能とし、重複グループ化の手順を導入。PAC-Assist2とした。

2003/08/01 初代PAC-Assistの公開。最終版はPAC-Assist ver.20080324

2003/07/25 個人的に使っていたマクロを一般的に使いやすいようにしたものを作成。(ver.20030725)

 

2PAC-AssistUの操作手順

2.1 ご利用の前に

本ソフトウェアを立ち上げると、最初に簡易的な操作説明が記されたワークシート(1)が表示されます。PAC分析を開始する前に【はじめにこちらをお読みください】ボタンを押して説明を表示させる必要があります。ここで本ソフトウェアの使用上の注意をお読みいただくことで、主要なワークシートとVBAは使えるようになります。(先にPAC分析開始ボタンをクリックした場合でも一度説明が表示されます。)

 

PAC分析開始】ボタンを押すことで「PAC分析メイン」シートが開かれ分析がはじめられます。最初に分析しようとする認知構造の全体をあらわす連想刺激文(テーマ)を決めて書き込んでおきます。それからあとは被験者自身にパソコンを操作してもらってもかまいません。

 

図1

1 操作説明シート

 

2.2 自由連想語の入力

手続きの最初はテーマに関する自由連想です。図2の赤枠で示すエリアに上から順に思いついた事柄を書き込んでください。この数が10個を越すと後の手続きである一対比較の回数が2乗に比例して増加するので、注意が必要です。また、最大で50の連想語を比較できます。

想起した順番の右のセルに「重要度の順位」を書き込みます。対象分野によっては5段階程度のランク付けで行うことも可能です。また、【重要度を昇順に並び替え】ボタンを押すことで連想語を重要度の高い順に並べ替えることができます。「イメージ」の欄は自由に使ってください。例えば、+,−,0などプラスイメージかマイナスイメージかということの記録に使うのもひとつの方法です。(※「重要度」「イメージ」の欄は後の統計的処理には影響しません。)

 

【比較開始】ボタンを押すと自由連想語どうしの一対比較を開始します。このとき【一対比較を2回行わない】のチェックを外すと語の並びを入れ替えて2回ずつ比較することができます。所要時間などの点から一対比較を2回行わないことをデフォルトとしました。

自由連想語の数が多いと比較のウインドウが開くまで若干時間が掛かります。項目数や環境にもよりますが、比較ウインドウが表示されるまでしばらくお待ちください。

 

図2

2 PAC分析メインシート

 

2.3 項目間の類似度比較

3のようなフォームが開きますので、左右の言葉を比較して類似度(関連性)を判断してください。類似度は2つの言葉の下にあるスクロールバーを左右に動かして評価します。右が類似度大、左が類似度小です。判断し終えたら、中央下の「次へ」を押してください。次の言葉の組み合わせが表示されます。また、右下には残りの比較数が表示されます。

「次へ」を間違えてダブルクリックしてしまった場合などは、左下の「戻る」で戻ることができます。戻るのは無制限にできますが、一度戻るとその評価は1回クリアされてしまいます。また、心理的な評価はなるべく直感的に評価したほうが良いので、むやみに戻ってやり直すことはさけます。

 

すべて判断し終えると、終了の確認のメッセージボックスが表示されます。「はい」を押して次の手順に進んでください。

 

30

3 類似度比較フォーム

 

2.4 基準値の設定

類似度比較を終えると、図4のようなフォームが開きます。ここでは重複グループ化法のグループ化のための基準値の設定を行います。類似度比較に際して評価者自身が「似ている」と感じはじめた位置を、類似度比較と同様にスクロールバーを左右に動かして示し、「OK」を押して非類似度行列の表示に移ります。

 

3

4 基準値設定フォーム

 

2.5 非類似度行列の表示

2.5.1 非類似度行列(raw)

基準値の設定を終えると、はじめに「非類似度行列(raw)」シート(5)が表示されます。非類似度の行列が表示されますが、一対比較を2回行った場合には対角要素が同じになっていません。これは、フォーム表示の左右の位置が異なる同じ組み合わせの一対比較が行われているため、その評価が多少異なることによります。これらを独立に評価したい場合はこの表を加工して分析にかかってかまいません。また、1回比較の場合には、どちらかの対角要素が空欄になっています。

また、2.2で「重要度」「イメージ」が入力された場合、各連想語に付随したカッコ内に(重要度,イメージ)として表示されます。

 

【対称化】ボタンを押してこの非類似度行列を対称化します。このとき、非類似度行列の利用に関するメッセージボックスが表示されます。

 

図6

5 非類似度行列(raw)シート

 

2.5.2 非類似度行列(対称化)

次に「非類似度行列(対称化)」シート(6)が表示されます。2回比較であれば対角要素を平均したものが、1回比較であれば対角要素に同じ値が入力された非類似度行列が表示されます。平均値を用いて分析したい場合、および1回比較で実施した場合にはこの表を分析に用います。なお、本ソフトウェアではステップとして必ず対称化を行います。

 

【重複グループ化法】ボタンを押して、重複グループ化法の実施へと移ります。

 

図7

6 非類似度行列(対称化)シート

 

 

2.5.3 非類似度行列(並び替え)

最後に「非類似度行列(並び替え)」シート(8)が表示されます。最終結果となる「グループ関連図」を形成する際に、グループに含まれる連想項目の少ない“特徴的なグループから抽出されやすいよう、対称化された非類似度行列が並び替えられます。

9のように行列の下部にある【基準値以下の値を色分け】ボタンを押すことで、項目間の類似関係が行列内で確認しやすいよう色分けされます。また、となりの【色分けを解除】ボタンにより色分けをなくすことができます。

 

■従来のクラスター分析によってPAC分析を行いたい場合

ここで得られた非類似度行列の列範囲を新規ブックにコピーし、それを拡張子:CVS(カンマ区切り)形式で保存することによって(7)、スクリプトを書くことで非類似度行列をクラスター分析にかけることができる『R』など他の統計ソフトに利用することができます。

各種の統計ソフトを利用したクラスター分析の方法については次のURLを参照してください。(http://wwwr.kanazawa-it.ac.jp/~tsuchida/lecture/pac-assist-supplement.htm

 

スクリーンショット 2016-02-18 13.35.47

7 非類似度行列のCSV形式保存

 

 

■重複グループ化法によってPAC分析を行いたい場合

以下の手順をそのまま実行して行きます。途中で保存したり、EXCELを途中で終了する必要はありませんが、ここまでのデータは個人ごとの貴重なデータですので一度「名前を付けて保存」しておいてください。

 

【グループ化の実行】ボタンを押すと、設定された基準値をもとに連想項目のグループ分けが開始されます。

 

図8

8 非類似度行列(並び替え)シート

 

図9

9 非類似度の色分け

 

2.6 グループ化の実行

グループ化の際、グループに属さない独立した連想項目(独立項目)が過剰に抽出されてしまうと妥当なグループ形成が行えなくなります。そこで、ここでは2.4で設定した基準値によって妥当なグループ形成が行えるか判断しています。そのため、判断結果によりこのあとの手順が異なります。(ここでは独立項目の抽出を抑制するために、設定された基準値が10段階のうち−1を限度として自動調整される場合があります。)

 

 

妥当なグループ形成が行えると判断された場合

グループ形成の理由記述フォームが表示されます。⇒ 2.7


妥当なグループ形成が行えないと判断された場合

基準値の再設定を促すフォームが表示されます。⇒ 2.6´

 

 

2.6´ 独立項目に対する処置

想起した連想項目のうち独立項目が2割以上抽出されてしまった場合、図10のようなメッセージボックスが表示されます。基準値を再設定したい場合は「はい」を押し、このまま次の手順へ進みたい場合は「いいえ」を押し、基準値の再設定を行わず2.7へ進みます。

 

独立割合

10 基準値再設定の確認

 

「はい」を押すと「最終結果」シート(11)上に図12のようなメッセージボックスが表示されます。「OK」を押してメッセージボックスを閉じ、基準値変更ボタンから基準値を仮設定してください。仮設定は【基準値確定】ボタンを押すまで何度でも行えます。また、基準値を仮設定する度に、シート上の仮グループ関連図が更新されるので、それを参考にしながら基準値を定めていきます。

 

基準値が定まったら、【基準値確定】ボタンにより次の手順へ進んでください。

 

図11

11 基準値の仮設定と仮グループ関連図

 

7

12 基準値再設定の説明

 

2.7 グループ形成理由の記述

13のようなフォームが開きますので、左側に表示された類似グル―プに対して、なぜそのようなグループとなったのかの理由、もしくはそれらから想起されるものを聞き取ります。それらは右側のボックスに記入します。記入し終えたら、中央下の「次へ」を押してください。次の言葉の類似グループが表示されます。また、右下には残りのグループの数が表示されます。

類似度比較と同様に「次へ」を間違えてダブルクリックしてしまった場合などは、左下の「戻る」で戻ることができます。なお、入力した理由は記録されますので、「戻る」や「次へ」を押しても理由がクリアにされることはありません。

 

すべてのグループ形成理由を記述し終えると、終了の確認のメッセージボックスが表示されます。「はい」を押して次の手順に進んでください。

 

24

13 グループ形成理由の記述フォーム

 

2.8 グループ関連図

グループ形成理由の記述を終えると「最終結果」シート(14)が表示されます。また、シート上にはグループ関係が線で結ばれた「グループ関連図」が表示されます。右側には各独立項目の独立理由を記述するためのテキストボックスが生成されるので理由を考え記入します。テキストボックスはドラッグして動かすことができるので、理解しやすい形に自由にレイアウトを変えていただいてもかまいません。また、新たにテキストボックスやコネクタ()を付加して、さらなる上位概念やグループ間の関連性を表現し認知構造を確定していきます。(図15

 

図14

14 最終結果シート

 

31

15 レイアウトの変更と上位概念

 

2.9 その他の機能

各シートには【保存】ボタンと【印刷】ボタンがあり、データの保存やデータの印刷が行えます。PAC分析は時間のかかる作業となります。場合によっては何回かに分けて行うこともありえます。トラブルに備え、こまめにデータに名前を付けて保存してください。また、行列データやグループ関連図などは印刷して、紙媒体としても保存することをおすすめします。

 

参考文献

[1]     内藤哲雄:PAC分析実施法入門[改訂版] 「個」を科学する新技法への招待,ナカニシヤ出版、200211月発行、四六判 160頁 1800円+税 ISBN4-88848-744-8.

[2]     土田義郎:認知構造の分析法の比較 評価グリッド法とPAC分析, 日本建築学会2002年度大会 (北陸) 学術講演梗概集, 2002(D-1), 845-846, 2002.

[3]     土田義郎:主観的類似度評定を用いた認知構造の同定手法の提案, 日本建築学会技術報告集,Vol.18, No.38, pp.225 - 228, 2012.

[4]     松井翔太郎、森田晃:PAC分析プログラムの構築 重複グループ化法におけるグループ構成方法の検証, 金沢工業大学 平成27年度PDVプロジェクトレポート, 2016.

 

Last modified: 2017/04/03

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