ミニ・ケース(6)個人情報の取り扱い

情報工学・メディア情報・経営情報

 「今日は早く帰らなくては!」今は12月30日の17時をまわったところだ。今日は古くからの友人たちと前から約束をしていた忘年会の日だった。そして私は、その忘年会の幹事を引き受けていた…。
 私は仕事で、エステ会社で用いる顧客管理データベースの保守点検を請け負っている。つい先ほど、本社のデータベースに各サロンの端末からアクセスするソフトウェアに不具合が生じ、顧客情報の一部が記録されないので修正して欲しいという電話が入った。この不具合は、顧客データに特定の文字列を入れると、データを記録するときにおこなう文字列操作で不具合が生じているようだった。そのため、デバッグの際には実際に顧客データを用いて確認する必要があった。なお、修正は年始最初の営業日である1月3日までにおこなって欲しいとのことである。
 今日は約束もあるのでもう帰りたい。しかし、明日からは家族で妻の実家に帰省することになっていた。1月2日には帰ってくる予定だが、2日の午後に帰ってくるとして、すぐに出社して作業を始めたところで3日までに間に合う保証はない。
 ただ、個人情報保護の観点から顧客情報はセキュリティ対策のされた社内のサーバー上に一括的に保存し、ネットワーク越しにその情報にアクセスしてデバッグに利用することになっていた。そしてもちろん、ローカルのPCにその個人情報をコピーすることは禁止されていた。しかし、社内で使っているノートPCにも環境はできているので、そのPCにここ数日分だけの顧客情報データをコピーして、妻の実家や帰省の行き帰りの電車の中で仕事をすればよいのではないかという誘惑に駆られ始めていた。

Q.1 この事例はどのような問題に発展する可能性があるだろうか。

Q.2 私はこの場合、どのように行動すべきだろうか。

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Applied Ethics Center for Engineering and Science, Kanazawa Institute of Technology
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